教育虐待はどこから? 子どもの教育に悩んだとき親はどうすべき?

教育虐待はどこから? 子どもの教育に悩んだとき親はどうすべき?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

子どもの教育は大切ですが、その熱意が度を越えてしまうと「教育虐待」になってしまうことがあります。どこからが虐待の境界線なのでしょうか。

本記事では、教育虐待とは何かを説明し、子どもの健全な成長のために親として知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。

1. 教育虐待とは

教育虐待とは、保護者が子どもに対して、教育を理由に虐待することです。たとえば以下のような行為が教育虐待に該当すると考えられます。

  • 過度な学習の要求
    子どもに余暇や休息をほとんど与えず、毎日過度に勉強させる。
  • 感情的な圧迫
    テストで悪い点を取った子どもに対して、罵声を浴びせたり無視をしたりして苦痛やプレッシャーを与える。
  • 体罰
    「成績が悪い」「勉強しない」などの理由で、子どもに暴力を振るったり、食事を与えなかったりと肉体的苦痛を与える。

これらはほんの一例ですが、どの行為も子どもの健全な成長を阻害する可能性があります。このような、教育を名目にした子どもへの身体的・心理的虐待行為が教育虐待です。

(1)教育熱心な行動との違い

教育虐待の厄介なところは、親目線では自分を「虐待している親」ではなく、単に「教育熱心な親」と認識しているケースが多いことです。たしかに親であれば、子どもが嫌がったり面倒臭がったりしても厳しく教育しないといけない状況に直面することもあります。

では、教育熱心な行動と教育虐待の違いはどこにあるのでしょうか。

ここで一つのポイントとなるのが、子どもを一人の独立した人格として尊重しているかどうかです。親子といえども、能力や才能、性格、価値観が異なることは多々あります。にもかかわらず、親としての強い立場や力を利用して子どもに対して一方的に何かを強制しようとすると、教育虐待にあたる行為に出てしまうリスクが高まります。

子どもを一人の人間として尊重したうえで、より良い将来へ導こうとしているのなら、暴力や暴言、ネグレクトなどの虐待的手段を用いて子どもを無理やり従わせる発想にはならないはずです。

(2)教育虐待を行う親の特徴

教育虐待を行う親には、以下のような共通の特徴がしばしば見られます。

①自身の学歴にコンプレックスがある

教育虐待を行う親の中には、自分が学歴コンプレックスを持っていたり、学歴で苦労したりした反動として、子どもに高い学歴を求めてしまう人がいます。こうした親は、子どもの成績や進路を自分自身の成功(失敗)と同一視してしまい、子どもの意思や感情を無視しがちです。

②自分が社会的成功を収めている

上記とは逆の例ですが、自分が高学歴であったり、仕事で成功したりしている人の中にも教育虐待に走ってしまう親はいます。こうした親は、自分の能力や成功体験をよりどころに、子どもも自分と同じような道をたどるべきだと思い込みがちです。

③世間体を気にする

世間体や周囲の人々からの評価を必要以上に気にすることも特徴として挙げられます。こうした人は、子どもの能力や資質などを無視して良い結果を求めがちです。その親自身、配偶者やその両親など周囲の人から教育に関して強いプレッシャーを受けている場合もあります。

教育虐待をしてしまう親は、子どもへ過度に自己投影したり、子どもより世間体のほうを気にしていたりと、子ども自身をきちんと見られていない傾向にあります。

2. 教育虐待が子どもに与える影響

たとえ親本人は良かれと思って行っていても、教育虐待は子どもの心身の健康や成長に重大な悪影響を与えます。

(1)精神への悪影響

たとえば、「お前は出来損ないだ」などの否定的な言葉を浴びて育った子どもは、自然と自己肯定感が低くなり、他者と人間関係を築いたり、何かに挑戦したりすることに困難を覚えがちです。

「失敗したらまた怒られるのではないか」という恐怖心を恒常的に持つことで、かえって知的な発達や好奇心が阻害されてしまうことも考えられます。場合によっては、うつ病などの心の病気にかかってしまうリスクもあります。

(2)肉体への悪影響

教育虐待で体罰などが行われている場合は、肉体的にも悪影響が出ます。たとえば、「成績が悪いと食事を抜く」「睡眠時間を削ってでも勉強させる」などの仕打ちを普段からしていたら、子どもの健全な発育は望めません。直接的な暴力行為に訴えていた場合は、大けがをさせてしまう危険もあります。

(3)親子関係の悪化

虐待行為の中で形成された親子関係は劣悪なものになります。教育虐待が呼んだ最悪のケースとして、親が子を、あるいは子が親を殺してしまった事件もあります。子どもの健全な成長や、愛情と信頼で成り立つ親子関係を願うなら、適切な教育方法やコミュニケーションとは何かを見直すことが必要です。

3. 教育虐待に悩んだ際の相談先、対処法

自分の配偶者が教育虐待に及んでいた場合、あるいは自分の教育が虐待にあたるのではないかと不安になった場合、どのように対処すべきなのでしょうか。

(1)教育虐待の相談先

先述の通り、教育虐待を犯している親は、自分自身を教育熱心であると認識しているケースが少なくありません。そうした認識を改めるためには、第三者に相談して、その意見へ冷静に耳を傾けることが重要です。

身近な相談先としては、自分の家族、友人、子どもの通う学校などが挙げられます。もしも匿名で相談したい場合は、児童虐待防止全国ネットワークの相談ダイヤル「189」に電話をするのも手です。

配偶者の教育虐待を法的措置に訴えてでも止めたい場合などは、弁護士への相談もおすすめします。子どもの虐待防止センターでも、弁護士が無料で法律相談を受け付けています。

(2)教育虐待を防ぐための対策

教育虐待を今後しないために、子どもや教育に対する考え方を改めることも大切です。まずは、子どもが自分の分身でも付属物でもない、一人の独立した人間であることを認めましょう。そのうえで、子ども自身の性格や能力、適性、価値観、成長具合などを冷静に見極めてください。そうすれば、その子に適した教育方法やコミュニケーションなども考えやすくなります。

また、結果だけでなく過程に目を向けることも重要なポイントです。試験の点数などの結果だけでなく、その過程でどれだけ頑張ったかも評価してあげてください。特に小さな子どもの場合、肉体面でも知的な面でも発達のスピードは個人差が大きいものです。すぐに結果が出なくても焦らず、気長に温かく見守ってあげましょう。

教育虐待は、多くの場合、親の熱意が行き過ぎて起こってしまいます。早めにその危険性に気づき、子どもへの接し方を改めることが、子どもの健全な成長や親子関係の改善につながります。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年10月17日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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