子どもの退学処分に納得いかない! 不服申し立ての進め方
自分の子どもが退学処分を告げられたら、親としては激しく動揺するものです。たとえ、子どもが何か悪いことをしていたとしても、退学処分は行き過ぎではないかと思うこともあるでしょう。
さて、学校側の処分にどうしても納得がいかない場合、保護者としてはどんな対応ができるのでしょうか。
1. 退学処分は取り消せる?
(1)退学処分とは
退学処分とは、学校側が、一方的に生徒に学校を辞めさせて、生徒としての地位を奪ってしまう行為です。退学処分を受けると、退学処分が取り消されない限り、生徒としてその学校に通うことはできなくなります。
(2)退学処分は裁判で取り消せるのか
そして、学校が行った退学処分に納得がいかない場合は、裁判で争うことができます。退学処分は、生徒としての地位をはく奪するものであり、重大な処分行為にあたります。
そのため、退学処分の対象となった生徒側は、その処分を取り消してもらうように裁判所に訴えることができます。
(3)退学処分に関する裁判所の考え方
裁判所で退学処分を争う場合、どんな基準で判断されるのでしょうか。
学校は、生徒に対して懲戒処分を行う権限を持っており、退学処分は、懲戒処分の1つです。退学処分を行う権限は校長(大学では学長の委任を受けた学部長を含みます)が有しています。
判例では、「その行為が懲戒に値するものであるかどうか、また、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかを決するについては、当該行為の軽重のほか、本人の性格及び平素の行状、右行為の他の学生に与える影響、懲戒処分の本人及び他の学生に及ぼす懲戒的効果、右行為を不問に付した場合の一般的影響等諸般の要素を考慮する必要があり、これらの点の判断は、学内の事情に通暁し直接教育の衝にあたるものの合理的な裁量に任すのでなければ、適切な結果を期しがたい」(最高裁第三小法廷昭和49年7月19日判決)とされ、校長が生徒・学生に対する懲戒処分をするに際して裁量権を有していると判断され、原則として校長の判断が尊重されるとの見解が示されています。
そして、裁判所が校長の退学処分を違法であると判断できる場合は限定的に考えられています。
具体的には、「校長の裁量権の行使としての処分が、全く事実の基礎を欠くか又は社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り、違法であると判断すべきものである。」(最高裁第二小法廷平成8年3月8日判決)とされています。
このように、原則として、裁判所は学校側の判断を尊重していることに注意が必要です。ただし、学校側の処分にもいろいろな程度があります。もっとも軽いのは謹慎処分、次に停学処分(一時的な停学と無期停学処分を含む)、そして、もっとも重いのが退学処分です。
退学についても、学校側の広い裁量を認めてしまうと、気にいらない生徒を簡単にやめさせることも可能になってしまいかねません。それでは、教育機関としての学校の意味が失われてしまいます。
そこで、裁判所も、退学処分についてはやや厳しい基準を設けて、学校側の裁量を制限しています。具体的には、
「当該学生を学外に排除することが教育上やむを得ないと認められる場合に限って退学処分を選択すべきであり、その要件の認定につき他の処分の選択に比較して特に慎重な配慮を要するものである。」(最高裁第二小法廷平成8年3月8日判決)と述べています。つまり、退学処分については、他の処分よりも取り消される可能性が高いといえます。
(4)退学処分が取り消される具体的な事情
退学処分にあたり、次のような事情があれば、取り消される可能性があります。
- 実際には処分を受けるような行動をしていない、学校が認定した事実が誤っている場合
- 退学が相当とは言えないような軽い行為に対して退学処分が行われた場合
- 退学処分以外の方法をとる余地があったのに、一方的に退学を言い渡された場合
2. 退学処分に対する不服申し立ての進め方
学校側の退学処分に納得がいかない場合は、次のような流れで不服申し立てを進めることになります。
(1)学校に退学処分は不当だと申し出る
学校から退学処分を示唆された場合は、ひとまず、退学処分に納得できないことを学校側にすぐに伝えましょう。学校としては、早く処分を終えたいという思いがありますので、保護者側が素直に応じてしまうと、早急に処分が進んでしまう可能性があります。
事実関係に納得がいかない場合は、保護者としての言い分をきちんと学校に知らせ、仮に退学処分が出されたら、徹底的に争うことも伝えましょう。そうすることによって、学校側もより慎重に判断する可能性があります。
また、退学の理由がいじめなどの学内の問題である場合は、調査委員会が設置されている可能性があります。その場合は、調査委員会の調査結果の開示を求めて、事実を確認することも重要です。
なお、自主退学を勧告された場合は、必ず断るようにしましょう。
(2)退学処分の取消訴訟を提起する
退学処分が出されてしまった場合は、裁判所に対して、退学処分の違法性を主張して裁判を提起します。裁判所で、処分の違法性が認められれば、退学処分は取り消されます。
(3)学校に慰謝料請求を行う
不当な退学処分を受けた場合、本人の精神的な打撃は大きいでしょう。そこで、退学処分の違法を主張する際には、精神的な損害を被ったことを理由として、学校側に慰謝料を請求することも考えられます。
退学は、子どもの人生に大きな影響を与えます。学校の説明や処分に納得がいかない場合は、裁判も見据えて、弁護士などに早めに相談するとよいでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2022年05月08日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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