別居中、配偶者の家に入るのは不法侵入にあたる?

別居中、配偶者の家に入るのは不法侵入にあたる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

別居中で、配偶者と住んでいた家に忘れ物をしてしまった際、なるべくなら配偶者と連絡を取ったり顔を合わせたりせずに荷物を取りに行きたいと思う人は少なくないはずです。しかし、別居後の家に無断で立ち入ることは法律的に問題ないのでしょうか。

この記事では、別居中に配偶者の家に入ることが不法侵入に当たるのかについて解説します。

1. 別居後の家への無断立ち入りは違法?

さまざまな事情から、夫婦で暮らしていた家を出て生活することになった際、別居まで十分な時間がなく、別居中に必要な荷物を置いてきてしまうこともあるでしょう。特に印鑑や通帳など、生活に欠かせない物は、すぐにでも取りに行きたいと考えるかもしれません。

しかし、自宅であった場合でも別居中の配偶者宅に無断で侵入した場合、罪に問われたり、配偶者とトラブルに発展したりするリスクがあります。以下では、法律的に該当する可能性のある4種類の罪について解説します。

(1)無断で家に立ち入ると住居侵入罪になるか

別居中の配偶者が住んでいる家に無断で立ち入った場合、もともと自分が生活の拠点としていた家だった・その家が自分名義だったとしても、場合によっては刑法130条の住居侵入罪に問われる可能性があります。

特に、配偶者が別居後に自宅玄関の鍵を交換しているなど、「勝手に自宅に入ってほしくない」という相手の意志が明確である場合などです。無理やり立ち入らず、他の方法を考えましょう。

(2)無断で物を持ち出したら窃盗罪になるか

通常、他人の物を盗み取ることは刑法235条の窃盗罪に該当します。たとえ自分の物であったとしても、他人が占有している状態では、他人の財物とみなされるため、無断で持ち出した場合には刑罰の対象となることがあります。

しかし、親族間の犯罪に関しては刑法244条にて親族相盗例という特例が設けられており、親族間での窃盗は刑が免除されます。

これは、「別居中の夫婦であっても離婚が成立するまでは親族関係にあるため、別居後の配偶者の家から勝手に物を持ち出したとしても窃盗の罪で刑に服することはない」ということです。だからといって家族の物を勝手に持ち出してはならないことは言うまでもありません。

(3)故意的に物を壊す・処分したら器物損壊罪になるか

離婚が成立していない状態であれば窃盗罪に問われることはないものの、玄関の鍵や窓を壊すなどして無理やり家に侵入したり、配偶者への嫌がらせ目的で故意に物を壊したりすると、器物損壊罪に該当する恐れがあります。

また、物を壊す以外に、写真など夫婦の思い出の物を勝手に処分することも器物損壊に当たり、このようなケースでは罪に問われるだけでなく、財産的な損害を被ったことを理由に損害賠償を請求される可能性もあります。

(4)何度も訪ねるとストーカー規制法による規制対象になるか

たとえ相手が自宅に荷物を取りにくることを許可してくれたとしても、必要以上に何度も訪ねることには注意が必要です。特に、夫婦のどちらかが離婚に向けて別居している状況では、しつこく自宅を訪れてくることに対して配偶者が不安や恐怖を感じた場合、ストーカー規制法に基づいて警告や接近禁止といった法的手続きをとられる恐れがあります。

そのような事態を避けるためにも、別居後の荷物の引き取りは日時を指定し、必要最低限の回数かつ時間内で済ませましょう。

2. 別居中のトラブルを避けるために

無断で配偶者の家に立ち入ると、住居侵入罪などに該当する恐れがあるだけでなく、感情的に対立してしまい、関係が悪化して配偶者とその後の話し合いが困難になるかもしれません。

離婚を前提に別居していた場合、離婚協議に応じてもらえなくなる事態は避けたいと考えるでしょう。配偶者とトラブルにならずに、荷物を引き取るためにはどうすればよいのでしょうか。

(1)弁護士を代理人とした話し合いや立ち会い

別居後に配偶者とトラブルになることなく、置いてきた荷物を引き取るには、弁護士を代理人として荷物の扱いについて話し合うか、もしくは弁護士の立ち会いのもとで荷物を取りに行くなどの対処をおすすめします。

家に残った側の配偶者としては、「自分の留守中に物を壊されたり、嫌がらせをされたりするのではないか」という不安から自宅への立ち入りを拒否する場合もあるかもしれません。

また、別居するほど夫婦関係が悪化している状態であれば、何もしていないにもかかわらず「自分の物がなくなった」などと配偶者から根拠のない言いがかりをつけられる可能性もゼロではありません。

そのようなケースでも、弁護士が間に入って配偶者と交渉することで、残してきた荷物を郵送してもらう、弁護士を通じて荷物を引き渡してもらうなど、相手の自宅に直接立ち入る以外の手段でスムーズに私物の引き上げを済ませることが可能です。

3. まとめ

別居中、相手の許可なく勝手に自宅に立ち入ることには、不法侵入になり得るなど、さまざまなリスクが伴います。配偶者との接触を避けて自宅に荷物を取りに行きたい場合や、荷物の引き上げについて相手の同意を得られない場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年06月30日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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