- (更新:2024年10月11日)
- 離婚・男女問題
夫・妻が不貞行為! 証拠集めの仕方と慰謝料請求ができるケース
配偶者に不倫をされた方が離婚を検討するとき、慰謝料を請求したいとお考えになることは当然のことでしょう。しかし、不貞行為の証拠がなければ、請求をしても認められない可能性があります。
今回は夫または妻が不貞行為をした場合の慰謝料請求について説明します。
1. 不倫と浮気の違いは?
(1)「不倫」「浮気」はどちらも法律上の用語ではない
一般的には、結婚している人が配偶者以外の異性と恋愛関係になることを「不倫」と呼びます。
これに対して「浮気」は、結婚しているかどうかにかかわらず、特定の異性と交際関係にある人が、別の異性と恋愛関係になることを指すと考えられます。
特に結婚している人が配偶者以外の異性と恋愛関係なった場合、「不倫」「浮気」のどちらにも当てはまり得るので、両者の区別が気になる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、民法その他の法律において、「不倫」「浮気」という用語は全く用いられていません。つまり、配偶者の行為が「不倫」に当たるか、それとも「浮気」に当たるかという議論は、法的には無意味なのです。
(2)不貞行為の定義
法的には、配偶者の行為が「不貞行為」に該当するかどうかがもっとも重要です。
不貞行為とは、夫婦関係にある男女のどちらかが、配偶者以外の異性と肉体関係をもつことを指します。
民法第770条第1項に規定された法定離婚事由の1つであり、これがあると認められた場合には、裁判で離婚の可否が争われたときに離婚が認められます。
親密な関係にはあるが肉体関係はないという場合、あなた自身は夫または妻に不倫されたと思うことでしょう。しかしながら、たとえ異性と親しい関係にあったとしても、肉体関係がない場合は不貞関係とは認められません。そのため、腕を組んで歩いたり、キスをしたりする行為自体は不貞行為ではありません。
なお、一度限りの肉体関係の場合も不貞行為にあたります。ただし、継続的に肉体関係を持っていたケースのほうが慰謝料額は高額になる傾向にあります。
また、風俗店を利用したことが不貞行為であるかが争われるケースもあります。風俗店といっても、性交渉を行っていなければ不貞行為ではありません。性交渉を行った場合には、風俗店でのことであっても不貞行為となります。
不貞行為について慰謝料請求をすると、請求された側から「既に夫婦関係が破綻していたため慰謝料は認められない」旨の主張がなされることがあります。夫婦関係が完全に破綻している場合には、その後になされた配偶者以外との不貞行為によって慰謝料が発生しないと考えられています。
たとえば、離婚を前提とした別居をしており、離婚の話合いが進められているという場合には、既に夫婦関係が破綻していると認められる可能性があり、この場合には慰謝料請求は認められない可能性が高くなります。夫婦が離れて暮らしていたとしても、それが単身赴任であるなど離婚を前提としていない場合には夫婦関係が破綻しているとは認められません。
このような夫婦関係破綻の主張がなされたとしても、完全に破綻していたと認められることはあまりなく、程度問題として慰謝料の金額を調整する要素として考えられることが多いと言えます。
2. 不貞行為を証明するには?
(1)不貞行為が認められる証拠
夫または妻の浮気を離婚の原因として話を進めていくためには、その配偶者が不貞行為をしていたことを立証する必要があります。
それでは、不貞行為を証明できる証拠にはどのようなものがあるのでしょうか。
①写真やビデオ映像
効果的な証拠としては、まず、不貞行為そのものを撮影した写真やビデオ映像、または不貞行為があることを推測させる行動や物の写真やビデオ映像が挙げられます。たとえば、ラブホテルに出入りしている場面を写真に収めることができると、「性行為を確認または推認できる証拠」として利用可能です。
写真や動画の内容は、親密な関係にあるということを推測させるだけでは十分ではなく、性行為があったことを確認または推測できるものである必要があります。
②メールやLINE、SNSなど
ただの業務などを超えて親密なやり取りをしているというだけでは肉体関係は確認できませんので不十分です。不貞行為の証拠としては、具体的に不貞行為をしたことが第三者でも確認できる内容である必要があります。
なお、本人の許可を得ずログインして取得した場合、あなたが罪に問われてしまう可能性が出てきますので証拠収集をする際には注意しましょう。
③録音データ
配偶者の不貞事実を認める発言を録音しておくと、念書などを書いてもらわなくとも、裁判で有利に進められる証拠になりえます。
④探偵や調査会社の調査報告書
探偵や調査会社による調査報告書はラブホテルに出入りする写真などが内容に含まれていることも多く、効果的な証拠になることもあります。
⑤その他
ラブホテルへ出入りしていたことがわかるポイントカードやクレジットカードの使用履歴なども不貞行為の証拠になりえます。また、不貞行為を記したメモや日記、書き込みなども証拠になりえます。
(2)不貞行為の証拠収集方法
証拠集めは、相手に気づかれる前に行う必要があります。気づかれると、隠される可能性が高くなってしまうためです。では、これらの証拠をどのように集めていけば良いのでしょうか。
方法は大きく分けて2種類あります。
①自分で集める
時間に余裕がある場合や相手の行動にスキがある場合は自分で証拠を集めることも可能でしょう。コストも抑えることができるので、まずは自分で証拠を探すとよいでしょう。
おもな方法としては、ポケットや財布の中身、クレジットカードの明細、メールや通話履歴、ネットの検索履歴などをチェックすることです。
なお、無断で相手のIDを利用してログインすると、不正ログインによりあなたが罪に問われてしまう可能性が出てきますので注意する必要があります。
②探偵事務所や調査会社へ依頼する
実際問題、多くの家庭では男性は平日に会社にいることが多いでしょう。夫が働いている間に不貞行為をするケースは少なからずあり、その場合には証拠を集めるのは難しくなります。
ご自身で探すのが難しい場合には、探偵事務所や調査会社に依頼することでホテルに出入りする写真など重要な証拠を取得できる場合もあります。ただし、高額の費用がかかりますので、依頼前に料金の詳細を十分に確認しましょう。
なお、探偵事務所などへ依頼する前に、まず弁護士へ相談をされるとよいでしょう。状況に適した証拠の集め方やどのような写真が証拠となりうるかなどについてアドバイスを得られることがあります。
3. 有責配偶者にも浮気相手にも慰謝料を請求することは可能?
(1)慰謝料を請求するための条件
もしも、夫または妻が浮気をしていた場合、以下の4つの条件を満たしていれば慰謝料の請求が可能です。
①不貞行為の事実
不貞行為は法律上、配偶者以外の者と肉体関係を伴う交際を行うことを指します。手をつないでいた、2人で飲みに行っていたなどだけであれば、不貞行為とは言えません。
②請求される側に故意または過失があること
不貞慰謝料が認められるには、請求される側に不貞行為であることについて故意または過失があることが必要です。つまり、不貞行為であること、すなわち既婚者であることを知っていたか、または知らなかったことに過失があることが必要ということを意味します。
夫または妻は自身が既婚者であって、不貞行為であることについて認識がないはずがないので、これは問題なく認められます。不貞相手については後述します。
③夫婦関係が破綻していないこと
慰謝料請求をすると、請求された側が「既に夫婦関係が破綻していたから慰謝料を支払う必要はない」と反論してくることがあります。
慰謝料請求が認められるためには、請求する側の権利が侵害されたという必要がありますが、夫婦関係が破綻している場合には権利侵害があったことが認められず、請求が認められない可能性があります。
実際に、過去の裁判例から、長年別居が続いていると婚姻関係が破綻していると認められてしまい、慰謝料請求が認められない可能性が高くなります。また、すでに離婚を前提に別居している間に夫または妻が不貞行為をした場合、夫婦関係がすでに破綻していたと認められて慰謝料請求が認められない可能性が高いと言えます。
④時効が成立していないこと
不貞行為に対する慰謝料請求には時効が存在します。不貞行為の事実及び不倫相手を知ってから3年、または、不貞行為から20年が経過すると、慰謝料の請求権が時効により消滅してしまいます。
時効期間が経過しても、相手がその経過を主張しなければ請求は認められますが、上記の期間を経過すると、相手がその主張を行えば請求は認められません。慰謝料請求を行いたいのであれば、時効が成立する前に請求してしまいましょう。
(2)不貞行為の相手にも慰謝料を請求できる
慰謝料を請求する対象は配偶者だけではありません。不貞行為の相手に対しても慰謝料を請求できます。
不貞行為の相手への請求については、上記の「故意・過失」の部分が問題になることもあります。
不貞行為の相手の過失が否定されるのは、夫または妻が不貞相手に対して、自身は独身であると殊更主張していて不貞相手が疑う余地がなかったような場合です。
「既婚者だという認識はあったが、夫婦関係が既に破綻していると認識していた」という主張がなされることがありますが、この主張により過失が否定されることはあまりありません。
なお、慰謝料は有責配偶者と不貞相手の双方に請求することができますが、2倍の額を支払ってもらえるということではありません。
すなわち、不貞行為により受けた精神的損害の慰謝料額が150万円だとすると、有責配偶者と不貞相手の双方から150万円ずつ支払ってもらえるわけではなく、二者の合計額が150万円であり、どちらかから150万円支払ってもらった後は、もう一方からさらに支払ってもらうことはできません。
(3)不倫・浮気相手に対して慰謝料を請求する手段
慰謝料請求の手段には、主に「交渉」と「訴訟」の2つがあります。
①交渉
不倫・浮気相手と直接協議し、慰謝料額について合意する方法です。
②訴訟
裁判所に訴訟を提起し、不法行為(不貞行為)を証拠によって立証して、慰謝料請求を認めてもらう方法です。
4. 慰謝料請求を検討する際の注意点
不倫・浮気相手に対して慰謝料を請求する際には、以下の各点に注意して請求を進めることが大切です。弁護士に依頼すれば、以下の点を含めてポイントを押さえた対応が可能ですので、早い段階で弁護士に相談してみることをお勧めいたします。
(1)不貞行為の証拠を十分に収集する
示談交渉・訴訟のうちどちらの手続きを選択する場合でも、前述の通り不貞行為の動かぬ証拠を収集しておくことは非常に重要です。
確たる証拠があれば、不倫・浮気相手も観念して慰謝料支払いに応じる可能性が高いですし、裁判所からも不貞行為の事実が認定されやすくなります。
不貞行為の証拠としては、現場写真等の直接的なものに加えて、配偶者と不倫・浮気相手の間のメッセージなども利用できますので、詳細は弁護士にご相談ください。
(2)離婚か夫婦関係の修復かをよく考える
不貞行為があるとわかったとき真っ先に離婚を考える人も多いですが、今一度落ち着いて、そもそも離婚するのか、離婚はせずに夫婦関係を修復していくのかを考えましょう。
夫婦関係を修復するとしても、夫婦での話し合いにおいて不貞行為の証拠は重要となります。また、離婚をしない場合は、配偶者には慰謝料請求せずに、有責配偶者(不貞行為をした配偶者)の不貞相手にだけ慰謝料請求するケースが多いです。
この場合、不貞相手ともめるケースもありますので、可能であれば有責配偶者から証拠を提供してもらうなどして慰謝料請求に向け準備をしましょう。
(3)配偶者と離婚しない場合は「求償」に注意
被害者は、不倫・浮気相手に対して、被った精神的損害の全額を慰謝料として請求できます。
しかし、配偶者と離婚をしないケースでは、後に責任割合に応じて、配偶者が不倫・浮気相手から「求償」を受ける可能性があります。配偶者が求償を受けた場合、結果的に家計からお金が流出してしまうので注意が必要です。
交渉の際にも、求償分を考慮して慰謝料の金額が決められるケースが多いので、適正妥当な金額で合意を成立させたい場合には、弁護士への相談をお勧めいたします。
(4)時効の完成に注意
不倫相手に慰謝料を請求できる権利は、不貞行為があったことおよび不倫相手が誰であるかを知ったときから3年を経過すれば、時効によって消滅します。
そのため、慰謝料請求を検討している場合には、請求するタイミングに注意する必要があります。また、慰謝料請求は、内容証明郵便などの書面で請求することで6か月間時効の完成が猶予され、その猶予期間中に裁判を起こせば時効が完成せず、判決確定後に時効が更新されるという効果があります。
時効の更新とは、一定の事情が生じたときには進行していた時効期間がクリアされ、またその時点から新たな時効期間が進行するというものです。
したがって、配偶者の不倫が発覚してしまった場合には、なるべく早く不貞行為の証拠を収集する必要があります。
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月11日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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