覚醒剤取締法違反の再犯で逮捕|2回目で実刑になる?

覚醒剤取締法違反の再犯で逮捕|2回目で実刑になる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

覚醒剤は一度手を出すとやめるのが困難であり、所持などの覚醒剤取締法違反で逮捕を繰り返すケースは後を絶ちません。

本コラムでは、覚醒剤取締法違反が2回目以上の再犯者に対して、どのような刑罰が科せられるのかを解説し、弁護士に依頼することによって受けられる弁護活動について紹介します。

1. 覚醒剤事件の現状と再犯率

現状と再犯率とを厚生労働省が公表している令和4年のデータで概観します。

(1)覚醒剤事件の現状

大麻やコカインなど、処罰対象の薬物はさまざまですが、検挙される人数が最も多いのは覚醒剤です。令和4年の全薬物事犯検挙人員12621人のうち、覚醒剤で検挙されたのは6289人でした。同年の覚醒剤押収量は475.3kgです。

(2)覚醒剤事件の再犯率

令和4年に覚醒剤事件で検挙された6289人のうち、再犯で検挙されたのは4258人に上っています。再犯率は67.7%と高く、覚醒剤取締法違反で服役した人が2年以内に再び刑務所に入る比率は、平成23年以来、15%台から20%台の間で推移しています。

出典:厚生労働省「3. 指標(R5取りまとめ分)

2. 覚醒剤取締法違反の再犯は実刑になる?

覚醒剤取締法違反で逮捕された場合、初犯時には実刑を免れても、再犯では実刑判決が下るという話を耳にしたことがあるかもしれません。実状を以下で解説します。

(1)「再犯」の定義

法律上、「再犯」という言葉は、一般的に使われる「罪を犯した経験を持つ人が再度罪を犯す」という広い意味での再犯よりも意味が狭く、限定されています。刑法第56条で「再犯」とは、刑務所に服役した人が刑期を終えた日か刑の執行を免除された日から数えて5年以内に新たに罪を犯し、新たな罪で有期懲役刑が科せられることと定義されています。

したがって、以前犯した罪で罰金刑に処せられたり、執行猶予がついて服役を免れたりしており、新たに刑務所に服役しても再犯には該当しません。さらに、刑務所を出てから5年を超えて、再び実刑となっても再犯とはみなされず、出所後5年以内に罰金刑を受けた場合も再犯にはあたりません。

(2)再犯者に対する刑の加重

再犯者に対しては、刑法第57条で懲役刑の上限を「長期の2倍以下」に引き上げる、刑の加重が認められています。たとえば覚醒剤を非営利目的で所持して捕まった場合、再犯にあたらない人の懲役は上限の10年以内ですが、再犯者の上限は最長20年にまで引き上げられます。

(3)再犯時期によって刑期は異なる

再犯の時期も刑の重さを左右します。特に懲役刑の執行を終えてから5年以内に再犯を犯した場合には、刑期が長くなる可能性が高まります。再犯時期が執行猶予中か猶予後かでも、刑の重さは以下のように異なります。

①執行猶予中の覚醒剤再犯

ここでは、以前に犯した何らかの罪で執行猶予がつき、執行猶予中に覚醒剤事件の再犯で逮捕された場合で考えます。

執行猶予がつくのは、1年以下の懲役か禁錮という判決が下り、情状酌量すべきことがあり、かつ前科でついた保護観察の期間内に新たな罪を犯していないという、厳しい要件を満たした場合に限られます。

この要件を満たせない場合、実刑は免れません。判決では、以前に犯した罪で執行が猶予されている刑期に、新たな覚醒剤事件の刑期がプラスされた懲役刑を言い渡される可能性が極めて高いと考えられます。たとえば、覚醒剤事件で捕まったのが2回目ならば、2年程度の実刑判決が下ることが一般的です。

②執行猶予後の再犯

執行猶予期間の満了後、5年以内の再犯は実刑となる可能性が高く、特に覚醒剤事件を繰り返した場合には、繰り返した回数分、刑期が長くなることを覚悟しなければなりません。

しかしながら、執行猶予期間の満了から5年以内の再犯であっても、どのような行為をしたかで執行猶予がつく可能性はあります。執行猶予期間の満了から7年以上が経過していれば、執行猶予判決が出るケースが増えてきます。

(4)覚醒剤取締法違反の再犯では執行猶予がつく可能性は低い

覚醒剤事件を起こした再犯者に対して執行猶予が言い渡される可能性があるのは、前科が覚醒剤以外の場合です。したがって、覚醒剤取締法違反を繰り返す再犯では、刑が重くなることはあっても、執行猶予はつかず、捕まれば長期間服役することになると覚悟しなければなりません。

3. 覚醒剤取締法違反で逮捕された場合の弁護活動

覚醒剤事件を起こして逮捕され、弁護士に依頼をした場合には、主に以下の3つの弁護活動が行われます。

(1)早期段階での接見

逮捕後72時間以内の早期段階で面会を許されるのは弁護士だけです。できるだけ早く警察に弁護士を呼んでもらい、弁護士との接見を実現することが重要です。この時点で面会することにより、警察の取り調べが進む前に、自分が不利にならないために必要なアドバイスを受けられます。

(2)取り調べに対するアドバイス

弁護士に依頼すれば、警察や検察での取り調べでどのように対応するのがよいのかを教えてもらえます。弁護士からのアドバイスを守ることで、自分が不利になる供述調書の作成を防止し、検察官や裁判官に良い心証を与えられる可能性が高まります。

(3)減刑を目指す

弁護士に依頼すれば、以前に提出した更生プランや薬物依存症の治療プランを強化した、減刑に不可欠な再犯防止策を具体的に立ててもらえます。特に再犯で逮捕されると、過去に犯した罪への反省が足りていないイメージが強まります。このような不利なイメージを改善して減刑を勝ち取るためには、弁護士の力が欠かせません。

覚醒剤取締法違反の再犯で少しでも軽い刑を望む場合には、弁護士のサポートがなければ困難です。再犯で捕まりそうな場合には、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年02月09日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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