現行犯逮捕されたらどうなる? 逮捕の要件と対処法を解説
もし自分が身に覚えのない容疑で現行犯逮捕された場合、あるいは、身近な人が現行犯逮捕された場合、どうすればよいでしょうか。
本コラムでは、現行犯逮捕された場合のその後の流れと、早期釈放を受けるための対応について、現行犯逮捕の要件やその後の手続きにも触れながら、詳しく解説します。
1. 現行犯逮捕とは?
そもそも「逮捕」とは、逃亡や証拠隠滅の恐れがある被疑者の身柄を強制的に拘束する行為です。以下では、いくつかある逮捕の種類のうち「現行犯逮捕」の定義と要件を解説します。
(1)現行犯逮捕とは
現行犯逮捕とは、犯罪行為中の人や罪を犯した直後の人を逮捕することです。刑事訴訟法212条1項によると、次のように定義されています。
刑事訴訟法212条1項
現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
引用:e-Gov法令検索「刑事訴訟法」
加えて、一定の要件をみたす者を現行犯人とみなす、「準現行犯逮捕」があります。準現行犯逮捕は、罪を犯した直後であることが明白な状況において、以下の要件に該当する場合に認められます(刑事訴訟法212条2項)。
刑事訴訟法212条2項
左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物(ぞうぶつ)又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。
引用:e-Gov法令検索「刑事訴訟法」
(2)現行犯逮捕の要件
現行犯逮捕の要件は以下の2つです。
逮捕される人による犯罪であることが明白
現在、罪を犯している最中、もしくは犯した直後であることが明白
たとえば、スーパーの店員が、来店客が万引しているところを目撃した場合には、その人の犯罪であることが明白です。また、万引していることも明白です。したがって、上記2つの要件をいずれも満たします。
(3)現行犯逮捕は逮捕状が不要
くわしくは後述しますが、逮捕するには、原則として裁判官が発付する逮捕状が必要です。
なぜなら、逮捕は、本人の意思に反して身体を拘束する行為であり、人権侵害の程度が重大だからです。これを令状主義といいます。しかし、現行逮捕の場合は令状主義の例外として、刑事訴訟法第213条に基づき、逮捕状が不要とされます。
出典:e-Gov法令検索「刑事訴訟法」(4)現行犯逮捕できないのはどんなとき?
30万円(*)以下の罰金・拘留・科料にあたる犯罪は、犯人と犯罪の明白性が認められても、以下2つの要件を満たさないと現行犯逮捕できません。
(*刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律以外の罪については、当分の間、2万円)
- 罪を犯した人の住居または氏名が分からない
- 罪を犯した人が逃亡するおそれがある
つまり、軽微な犯罪については、罪を犯した人の身元が分かっている上に、逃亡のおそれがないような場合は、現行犯逮捕できません。
(5)一般人も現行犯逮捕できる(私人逮捕)
現行犯逮捕は、警察官・検察官だけでなく、犯罪の目撃者や被害者といった私人でもできます。私人逮捕と呼ばれることがあります。
私人による現行犯逮捕が比較的行われやすいのは、以下の犯罪です。
- 痴漢
- 盗撮
- 暴行
- 傷害
- 器物損壊
なぜなら、これらについては、法律の素人である一般人からみても即時に犯罪行為と判断できることが多いからです。その反面、誤認逮捕が起きやすいとも言えます。
この場合、逮捕者は、直ちに被疑者を検察官や司法警察職員へ引き渡す義務を負います。引き渡しが遅くなると、逮捕者が罪に問われるケースもあります。
2. その他の逮捕との違い
逮捕には、現行犯逮捕・準現行犯逮捕の他に「通常逮捕」と「緊急逮捕」があります。いずれも、権限があるのは検察官、検察事務官、司法警察職員のみです。いわゆる私人逮捕は認められません。
通常逮捕とは、逮捕状に基づいて行われる逮捕です(刑事訴訟法199条1項)。被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合に、逮捕状の発付を裁判官に請求します。発付された逮捕状を持って、罪を犯した人のもとへ行き、逮捕状を示して身柄を拘束します。
緊急逮捕とは、一定の重大な犯罪について、被疑者が犯罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があり、かつ、逮捕状の発付を待つ時間がないほど急を要する状況で認められるものです(刑事訴訟法210条1項)。逮捕時に令状は不要ですが、逮捕後直ちに裁判官に逮捕状の発付を請求しなければなりません。もし逮捕状が発付されなければ、直ちに被疑者を釈放しなければなりません。
このように、通常逮捕と緊急逮捕は、いずれも捜査機関にのみ認められ、かつ、令状主義の縛りがある厳格な手続きです。
3. 現行犯逮捕された後の手続きの流れと対処法
現行犯逮捕に冤罪がないとは言い切れません。自分自身や家族が現行犯逮捕された場合には焦らず、手続きの流れを理解した上で、早急な対処を取ることが必要です。ここでは、逮捕後の手続きの流れと取り調べを受ける際の注意点を確認しておきましょう。
(1)現行犯逮捕後の手続きの流れ
現行犯逮捕された人は、警察署に連行されて、取り調べを受けることになります。そして、逮捕から48時間以内に検察官に送致するか、釈放しなければならないことになっています。
検察官は、送致から24時間以内に本人の話を聞き、勾留(被疑者の身柄を刑事施設で拘束すること)するか釈放するかを判断します。なお、ここまでの身柄拘束時間の合計が72時間を超えてはなりません。
勾留された場合は原則として10日間、最長20日間にわたって身柄を拘束されます。検察官はその間に、起訴するか、不起訴とするかを判断しなければなりません。
(2)うそはつかない
罪を犯していないのに、捜査官の「自白すれば自由の身になれる」などの言葉につられて犯罪事実を自白してしまうと、裁判で有罪の証拠として扱われ、無実の罪で刑罰を科されてしまうリスクが増大します。そのため、冤罪の場合は、きちんと罪を否定するか、黙秘権を行使するなどした方が良いでしょう。
逆に、罪を犯してしまった場合にうそをつくと、本当のことが分かったときに「反省がない」と認識され、刑罰の重さに影響するケースがあります。
(3)早急に弁護士を呼ぶ
逮捕された場合は、早急に弁護士に依頼することをおすすめします。逮捕された場合は、起訴・不起訴の判断までに時間的な余裕はなく、スピード勝負となるため、身柄開放や不起訴に向けて早急に動くことが重要になります。
知り合いの弁護士がいない場合でも、「当番弁護士」を依頼することができるので、早急に担当の警察官などに「当番弁護士を呼んでください。」と頼むことをおすすめします。
当番弁護士とは、逮捕された場合に弁護士が1回のみ無料で相談に応じてくれる制度です。費用は弁護士会が負担する仕組みになっています。当番弁護士に自分がおかれた状況をありのままに伝えてください。そうすれば、その後の手続きの流れや、何をすべきかについて、的確なアドバイスを受けることができます。また、その当番弁護士が「信頼できる」と感じた場合は、面会した際に費用などを取り決めて、私選弁護人として継続的なサポートを受けることも可能です。
当番弁護士は、逮捕された本人だけでなくその家族も弁護士会に連絡して依頼することができます。
逮捕後72時間は、たとえ家族であっても、本人と面会することはほぼ不可能です。そのため、もしも状況が分からなくて心配であれば、早急に当番弁護士を依頼することがおすすめです。
弁護士は、現行犯逮捕された人の心の支えになるとともに、さまざまなサポートを担当する心強い存在です。早期釈放や不起訴の可能性を高めるためにも、当番弁護士の制度の利用も含め、できる限り早急に弁護士に依頼することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年07月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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