「懲役」と「禁錮」の違いは? 「拘禁刑」創設でどうなる?
裁判所が公開している司法統計によると、令和2年中に全国の地方裁判所で審理された通常第一審において4万1310人に有期の「懲役」が、2734人に有期の「禁錮」が科せられました。
懲役・禁錮が「刑務所に収監される」という刑だということは知っている方も多いはずですが、実際のところ、懲役と禁錮にどのような違いがあるのかを理解している方は少ないでしょう。
懲役と禁錮の違いや、新たに創設されることが決まっている「拘禁刑」について解説します。
1. 「懲役」と「禁錮」にはどんな違いがある?
懲役・禁錮は、いずれも日本の法律において定められている刑罰です。どちらも身体の自由を制限されて刑務所に収監されるものですが、同じような刑罰なのにわざわざ懲役と禁錮で区別しているのには理由があります。
(1)刑罰の重さは懲役のほうが上
日本の法律における刑罰は、刑法第9条に定められている死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料の6つです。これらは「主刑」と呼ばれ、独立して科せられる刑罰として規定されています。
主刑に対して、独立して科すことができず、主刑に付加することでのみ科せられるものを「付加刑」といいますが、日本の法律における付加刑は没収だけです。
刑事裁判において裁判官が「どのような刑罰を科すべきか?」を判断する際には、刑の軽重を考えなければならないシーンがあります。刑法第10条によると、主刑にあたる6つの軽重の序列は、死刑>懲役>禁錮>罰金>拘留>科料の順です。つまり、懲役は禁錮よりも重い刑罰として存在しています。
なお、懲役・禁錮には、期限の定めがない「無期」と、期限が定められている「有期」がありますが、有期の懲役と無期の禁錮を比較するときや、有期の禁錮の上限が有期の懲役の上下の2倍を超えるときは、禁錮のほうが重くなります。
(2)両者の大きな違いは「刑務作業」の有無
懲役と禁錮は「刑務所に収監される」という点で共通しています。ただし、懲役に服する場合は、刑務所内で「刑務作業」という強制労働につかなければなりません。一方、禁錮には刑務作業に従事する義務がなく、受刑者は一日中監視されながら房内で過ごすことになります。
刑務作業に従事する義務があるという点だけをみれば懲役のほうが重いといえますが、実際の受刑者の感想を聞くと、房内から出ることもできない禁錮のほうが精神的に厳しいという声も少なくありません。
ただし、禁錮受刑者でも本人が希望すれば刑務作業への従事が認められるので、実際には刑務作業を希望する禁錮受刑者が多いようです。
2. 「拘禁刑」とは? 懲役と禁錮は廃止される?
令和4年6月に改正刑法が成立し、新たに「拘禁刑」が創設されました。拘禁刑とはどのような刑罰なのでしょうか?
(1)拘禁刑の内容や目的
拘禁刑は、懲役と禁錮を一本化した新たな刑罰です。すでに改正刑法が成立していますが、実際の施行は令和7(2025)年頃の予定になっています。
従来の懲役・禁錮は、いずれも「罰」として科せられるものです。罰を受けることで反省し、今後罪を犯さないように生活するという社会構造を予定しています。
ところが、実際には懲役・禁錮に服役して社会復帰した元受刑者の再犯率は非常に高く、刑務所に収監しても更生への効果は不十分だと言わざるを得ないのが実情でした。また、多くの禁錮受刑者が懲役と同様に刑務作業を請願しており、懲役と禁錮を区別する意味がほとんど失われているという現実があります。
そこで、受刑者の改善更生を図る目的で、必要な作業をおこなわせるとともに必要な指導も柔軟におこなうことができる刑罰として、拘禁刑が創設されました。再犯率が高い薬物犯罪や性犯罪の受刑者に対する改善プログラムを実施する、若年受刑者の学力や技術の向上に向けた支援をおこなうといった、柔軟な運用が予定されています。
(2)拘禁刑導入後に起きた事件では懲役・禁錮は科せられない
拘禁刑の導入によって、100年以上も続いてきた歴史をもつ懲役と禁錮は廃止されます。拘禁刑が本格導入されると、懲役と禁錮が予定されていた犯罪の法定刑はすべて拘禁刑に変更されますが、拘禁刑を科せられるのは、拘禁刑導入後に起きた事件だけです。
拘禁刑が本格導入される前に起訴された、拘禁刑の導入後に以前の犯罪が発覚したといったケースでは、従来どおり懲役・禁錮が科せられます。
3. 刑務所への収監を避けるためには弁護士のサポートが必須!
懲役や禁錮を受けると、一般社会から隔離される日々が続きます。刑期を終えて出所しても、以前のような生活を送るのは難しく、社会復帰の難しさや厳しい現実に打ちのめされて再び罪を犯してしまう人も少なくないのが現実です。
罰金・禁錮が予定されているのは、窃盗や詐欺、暴行、傷害といった刑法に規定されている犯罪だけではありません。痴漢や盗撮を罰する迷惑防止条例の違反や飲酒運転などの道路交通法違反でも、懲役や禁錮が科せられることもあります。
厳しい刑罰を避けたいと望むなら、弁護士のサポートは必須です。被害者との示談交渉、警察の取り調べを受ける際のアドバイス、検察官・裁判官へのはたらきかけといった弁護活動があれば、加害者として罪を問われている方にとって有利な結果となる可能性が高まります。
検察官の起訴を回避すれば刑事裁判が開かれないので懲役・禁錮といった刑罰を受けることはありません。また、刑事裁判で有罪判決は避けられない状況でも、加害者にとって有利な証拠を示せば「執行猶予」つきの判決が期待できます。
執行猶予が付されると刑の執行が猶予され、社会生活を送りながら更生を目指すことが許されるので、期間中に別の事件を起こさなければ刑務所には収監されません。
弁護士への相談・依頼は早ければ早いほど高い効果が期待できます。懲役・禁錮に不安を感じているなら、弁護士への相談を急ぎましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年04月06日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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