名義人が実刑になった! 残された家族に住宅ローンの返済義務はある?
人生で一番大きな買い物といえば、やはりマイホームでしょう。三井住友信託銀行が実施した「2021年 住まいと資産形成に関する意識と実態調査」によると、住宅取得者の約8割が住宅ローンの利用経験ありとの結果になりました。
住宅ローンを利用してマイホームを購入すると、向こう20~30年以上の長期にわたってローン返済を続けることになりますが、もし返済途中で刑事事件を起こして刑務所に収監されてしまうと、その後の返済はどうなるのか、気になるところです。
やはり、その家に住み続ける限り、家族が代わりに返済しなくてはならないのでしょうか?
1. 残された家族には住宅ローン返済を肩代わりする義務がある?
刑事事件を起こして検察官に起訴され、刑事裁判で実刑判決を受けると、刑務所に収監されてしまいます。数か月、数年単位で社会から隔離されてしまうので、残された家族はとくに生活の面でさまざまな不便や苦労を感じることになるでしょう。
とくに、住まいの問題は深刻です。マイホームの所有者として住宅ローンの名義人になっている人が刑事事件を起こして実刑判決を受けた場合は、やはりそこに住む家族がローン返済を肩代わりしなくてはならないのでしょうか?
(1)返済義務を負うのはローン名義の本人だけ
基本的に、住宅ローンの返済義務を負うのはローン契約の名義人となっている本人だけです。家族だから、同居しているからといった理由で、ローン契約を結んでいない人が返済義務を負うことはありません。
これは、住宅ローンだけでなく、ほかの借金も同じです。
(2)義務はないが任意で返済するのは可能
本人以外が返済義務を負うことはありませんが、刑務所に収監されているからといって本人の返済義務が免除されるわけでもありません。
あくまでも、トラブルにかかわらず約束どおりの返済を続けるのが基本なので、本人が刑務所に収監されており支払いができていない間も未払い・遅延として扱われます。
もし経済的に問題なく返済できる状況なら、約束どおりの支払いを任意で続けることはもちろん可能です。銀行側とのトラブルを避けてそのままマイホームに住み続けたいなら、支払いを継続したほうがよいでしょう。
仮に支払えない場合、期限の利益を喪失し、一括弁済を求められる可能性があります。
2. 交渉次第では猶予・減額も可能
住宅ローンの契約名義人になっている人の多くは、一家の主な収入源となる人でしょう。大黒柱が刑務所に収監されたとなると、それまでどおりに住宅ローンの返済を続けるのは難しい状況に陥るケースが多いはずです。
銀行によっては、交渉次第で返済を猶予してくれたり、残された家族の収入額に応じて月々の返済額を減額してくれたりする可能性があります。
もちろん、交渉に応じるかどうかは銀行側の方針によるので、猶予や減額には一切応じてもらえないかもしれません。しかし、銀行側も「なんとかして返済を尽くしてほしい」という立場です。返済に向けた具体的な計画案や従来どおりの返済に戻せる時期の見込みなどを示しながら交渉を尽くせば、猶予・減額に応じてもらえる可能性もあるでしょう。
なお、猶予や減額に応じてもらえたとしても、残額と金利に応じて利子がかかるので、返済期間が長引くことは心得ておきましょう。
3. 要注意! 家族が返済義務を負うケースもある
基本的に住宅ローンの返済義務を負うのはローン名義人となっている本人だけですが、本人が返済できなくなったとき、家族が返済義務を負うことになるケースもあるので覚えておきましょう。
(1)残された家族が連帯保証人になっている場合
本人の収入だけではローン審査に通過しなかった場合、家族が連帯保証人となってローン契約を結ぶケースがあります。現在、多くの銀行では、保証会社との契約を別途結ぶことで連帯保証人を不要としていますが、本人の収入額が少なかったり、信用情報がよくなかったりすると、連帯保証人も必要とするケースがあるようです。
連帯保証人は、本人と同じ立場でローン返済の義務を負います。銀行から支払いを求められたときでも「まずは本人に請求してほしい」「本人の財産を差し押さえてからこちらに請求してほしい」「ほかの連帯保証人に請求してほしい」と求める権利さえありません。
夫をローン契約者として妻や親が連帯保証人になり契約を結ぶケースは少なくないので、契約内容をいま一度しっかり確認してみましょう。
(2)名義人が亡くなって相続が発生した場合
ローン契約の名義人である本人が亡くなってしまった場合は「相続」が発生することに注意しなければなりません。これは、刑務所で服役していても、執行猶予を受けて社会生活を送っていても同じです。
相続といえば、マイホームや預貯金といったプラスの財産を引き継ぐ手続きだと考えている方が多いかもしれませんが、ローン・借金などマイナスの財産も対象となります。つまり、住宅ローンの返済義務も、残された家族が引き継ぐかたちになるのです。
通常、住宅ローンを契約する際は、本人が死亡したり、高度な障害を負ったりした場合に返済を免除する「団体信用生命保険」への加入を求められるので、相続によって家族が返済義務を負うケースはまれでしょう。
しかし、団体信用生命保険に加入していなかった、本人の死亡前にすでに支払いを遅延していた、本人の死亡後すぐに保険金を請求しなかった、夫婦型や二世帯などのペアローンで契約していたといったケースでは、団体信用生命保険の補償を受けられないおそれがあります。
相続が発生してしまい、どうしても住宅ローンの返済が難しい場合は、すべての相続を放棄するか、あるいはプラスの財産からマイナスの財産を相殺して返済にあてるといった対応を考えることになるでしょう。
いずれにしても難しい問題になるので、個人がひとりで考えているだけでは明るい解決策を見いだすのは難しいかもしれません。弁護士に相談して、どうすれば日々の暮らしへの影響を抑えながらこれまでどおりの生活を送ることができるのかのアドバイスを受けるのが賢明です。
- こちらに掲載されている情報は、2023年04月03日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
犯罪・刑事事件に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?
犯罪・刑事事件に強い弁護士
-
電話番号を表示する 050-2018-0940
-
電話番号を表示する 050-2018-0940
-
電話番号を表示する 050-2018-0940
-
電話番号を表示する 050-2018-0940
-
電話番号を表示する 050-2018-0940