児童ポルノ禁止法とは?わいせつ画像の「自撮り要求」「所持」等の行為類型と問われる罪

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弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

児童ポルノ禁止法とは?わいせつ画像の「自撮り要求」「所持」等の行為類型と問われる罪

児童にわいせつ動画を「自撮り」させ、SNSで送信させた大人が、児童ポルノ禁止法違反で検挙される事件が相次ぎ、話題になりました。しかし、この行為は同法で処罰される行為の一部にすぎず、同法は幅広い行為を対象としています。

「性器が写っていなければ良いのではないか」「自分で鑑賞するだけならばいいのではないか」ということで所持しているケースも多いと想定されます。児童ポルノとは何か。また、禁止されている行為はどのようなものか。解説します。

1.児童ポルノ禁止法とは

「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」、いわゆる児童ポルノ禁止法は、以下の通り、幅広い行為を禁じています。

・単純所持(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)
・第三者への提供(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)
・製造(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)
・不特定または多数の者への提供、公然陳列(5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金(併科もあり))
・運搬・輸出入(5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金(併科もあり))

もっとも厳しく処罰されるのは「不特定多数への提供・陳列」を目的とした行為で、製造・所持・運搬・輸出入には5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれらの両方が科せられます。

また「提供」を目的としていた製造・所持・輸出入、盗撮による製造も、3年以下の懲役または300万円以下の罰金という厳しい罰則が設けられています。

2. 「児童」の定義

児童ポルノにおける児童とは、18歳未満の未成年者のことであり、18歳以上であれば別の法律で処罰されます。

18歳未満であることを知らなかった場合でも、そのことに過失があれば、児童ポルノ禁止法違反に問われます。つまり「軽過失」でも罰せられるので、大変厳しいものといえます。

たとえば、一見して幼く見えるケースや、高校や中学校の制服を着ていたり、ランドセルを背負っていたりする場合には、「過失あり」とされると考えられます。

児童ポルノ禁止法違反で処罰されるのを防ぐためには、少なくとも、対象者が18歳未満でないことの確認を慎重に行う必要があると考えるべきでしょう。

3. 「児童ポルノ」の定義

児童ポルノとは、児童の体を目で認識できる画像、動画、デジタルデータなどのことを指します。

すなわち、児童を相手とした性交や性交類似行為、または児童同士が同様の行為をしている様子、児童に性器を触らせる様子、児童の裸体などを描写し、記録したものが「児童ポルノ」です。写真、DVD、画像や動画などの形態が考えられます。

これに対し、マンガ・アニメなどの二次元創作物は規制対象に含まれていません。ただし、規制を求める意見や動きもあるので動向に注意しておくべきでしょう。

また、子どもの成長記録などとして、着替えや入浴、プールなどの様子を撮影したものは、性欲を興奮・刺激するものではないので児童ポルノには含まれません。

4. 処罰の対象となる行為の例

以下では、イメージしにくい具体例を2つ紹介します。

(1)児童に自撮り画像を撮影させると「製造罪」

児童にわいせつな自撮り画像を要求して、児童がその要求に従って自撮り画像を送付した場合、児童ポルノ製造罪に問われます(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)。

また、青少年保護育成条例等で児童へのわいせつな画像を要求する行為を禁じている自治体もありますので、条例違反で処罰される可能性もあります。

(2)ダウンロードも「所持」

第三者に提供する目的ではなく、個人的な趣味として児童ポルノを「所持」していた場合も違法です。これをほかの目的による所持と区別して「単純所持」と呼びます。

ここでいう「所持」とは、単に「写真やプリントアウトした画像を手に持っている」という状態だけを指すわけではありません。スマホにデータとして保存しカバンに入れている、自宅のパソコンに保存しているといった状態も、現実的に支配下にあるので「所持」にあたります。

令和4年(2022年)7月には、SNSで知り合った18歳未満の女性のわいせつな画像を自身のスマホに保存していた容疑で、アルバイト従業員の男が単純所持の容疑をかけられて現行犯逮捕された事例があります。

この事例では、被害を受けた女性の関係者が警察に相談したことで発覚したという経緯がありますが、児童ポルノ画像や動画の配信・販売サイトからダウンロードした場合も、登録情報から芋づる式で発覚するかもしれません。

警察が秘密裏に内偵捜査を進めて、職務質問をかけられたり、自宅などの家宅捜索を受けたりすれば、児童ポルノ所持の容疑で逮捕される危険が強いでしょう。

5. 児童ポルノ事件で逮捕されないためには?

個人的な興味から児童ポルノをダウンロードしてしまった、販売サイトからDVDなどを購入してしまったという場合は、逮捕を避けるための対策を講じなければなりません。

まず優先すべきは違法状態の解消です。とくに単純所持に関しては、平成26年の法改正直後には国が自主廃棄を勧めたという経緯もあるので、違法な所持は「まず廃棄」が大切だと考えられます。

ただし、自主廃棄といっても、やみくもに端末から削除しただけでは安心できません。「データを削除・廃棄した」と証明するのは難しいので、どうやって児童ポルノを所持しないまま廃棄したことを証明するのかという課題が残ります。

加えて、被害者となった児童・保護者との示談交渉、警察への自首といった対策が必要なので、弁護士による法律面からのサポートが欠かせません。

単純所持を含めて、児童ポルノに関する事件で逮捕や厳しい刑罰を避けたいと考えるなら、まずは弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。

6. 逮捕後の流れはどうなる?

ここでは児童ポルノ禁止法違反で逮捕された後の流れを、手続きに沿って解説します。

(1)警察での取り調べ

まず、警察で逮捕から48時間以内の取り調べを受け、検察に移送するかどうかが判断されます。児童ポルノ禁止法違反の場合、微罪処分として釈放される可能性は低く、しかも逮捕まで必要と判断された事案では、厳しい取り調べが行われることもあるでしょう。

警察で取り調べを受けている間は家族と会うことができず、接見できるのは弁護士だけというルールになっています。

(2)検察庁へ移送~勾留

検察庁へ移送されると、検察官から取り調べを受けます。そして、検察官は24時間以内に被疑者を勾留して取り調べを継続する必要があるかどうかを判断します。勾留が必要と判断されると、裁判所に勾留請求がなされ、裁判所で勾留が決定されると、最長20日間も勾留されるのです。

なお、勾留されている間は、接見禁止がついていなければ家族でも面会することができますが、面会時間は平日の日中の15分程度に限られてしまいます。

(3)起訴~刑事裁判

検察官が起訴を決定すると被疑者から被告人になります、起訴された後は刑事裁判の手続きが進められ、裁判官により判決が下されます。不起訴処分になれば、刑事裁判は開かれる前科がついたり罪に問われたりすることはありません。

7. 逮捕後に家族はどんなことができる?

わいせつな自撮り画像を要求して身内が逮捕された後、家族にできることについて解説します。すでに本人が逮捕されている場合、留置場に身柄を拘束されていますので、家族や友人等がサポートをしなければなりません。

(1)状況を把握する

逮捕の連絡があったら、どこの警察署で被疑者が身柄を拘束されているのかを把握しておきましょう。

(2)面会や差し入れを持って行く

逮捕されてから3日間は家族が被疑者と会うことはできませんが、勾留期間は面会を許可されることがあります。着替えなど差し入れを準備して持って行くとよいでしょう。

(3)被害者との示談を成立させる

身内の早期釈放を実現するためには、被害者との示談を成立させるのも有益です。示談が成立すると、起訴を回避できる可能性を高めることができます。

ただし、児童ポルノ法違反の場合、示談を成立させるのは簡単なことではありません。示談交渉の相手は児童の保護者ですが、原則として自ら接触し交渉するのは難しく、会う手段すらないことが通常です。

(4)弁護士に依頼をする

逮捕されてしまった本人は身動きが取れません。したがって、ご家族が刑事事件を専門とする弁護士を手配するケースが一般的です。

少しでも早いタイミングで弁護士に依頼をすることで、勾留回避のための弁護活動が可能となります。また弁護士は先述した示談交渉も可能です。

特に児童ポルノ禁止法においては、保護者の方々のお怒りの気持ちは強く、お話をする上でも一定の信頼関係を築いていくことが必要になるでしょう。

まずは弁護士に依頼することをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

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