【犯罪・刑事事件】侮辱罪にあたる行為とは? 厳罰化で「懲役・禁錮」の可能性も

【犯罪・刑事事件】侮辱罪にあたる行為とは? 厳罰化で「懲役・禁錮」の可能性も

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

SNS(ソーシャルネットワークサービス)の利用者は増加を続けています。総務省が公表している「令和2年 通信利用動向調査」によると、インターネット利用者に占めるSNSの利用率は73.8%で、前回調査から4.8ポイントの上昇でした。

SNSは知人とのコミュニケーションや情報収集に役立つツールですが、自由な意見の発信が他人への攻撃にあたってしまい、トラブルや命にかかわる事件を引き起こすケースが後を絶ちません。自分では正直な気持ちやストレートな意見を発信したつもりが「侮辱罪」にあたる危険もあります。

どのような行為が侮辱罪にあたるのでしょうか? 侮辱罪の厳罰化とあわせて解説していきます。

1. 侮辱罪は厳罰化でどう変わった?

インターネット上における誹謗(ひぼう)中傷は大きな社会問題になっています。その抑止策のひとつとして実施されたのが、令和4年7月7日施行の「侮辱罪の厳罰化」です。

侮辱罪は厳罰化によってどのように変わったのでしょうか?

(1)法律が定める刑罰が強化された

従来、侮辱罪に定められていた刑罰は「拘留または科料」でした。拘留とは30日未満の刑事施設への収容、科料とは1万円未満の金銭徴収であり、わが国における刑罰のなかでは最も軽いものです。

これでは「厳しい刑罰を科せられるかもしれない」という抑止力にならないという観点から、刑罰が「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」に引き上げられました。

この厳罰化によって、侮辱罪は決して軽い罪とはいえなくなったのです。

(2)時効の期間が延びた

刑罰の上限が引き上げられたことで「時効」の期間も延長されました。ここでいう時効とは、正しくは「公訴時効」といい、検察官が刑事裁判を起こすことができるタイムリミットとして刑事訴訟法第250条に定められています。

公訴時効は法律が定める刑罰に応じて期間が異なり、厳罰化される前の侮辱罪では侮辱行為が終了した日から1年とされていました。今回の厳罰化によって法律が定める刑罰が引き上げられたため、時効も3年に延長されています。

2. 要注意! こんな内容は侮辱罪にあたる!

侮辱罪とは、刑法第231条に定められている犯罪です。事実の適示がなくても公然と人を侮辱した場合に成立します。SNSなど不特定・多数の人が目にして広くその情報が伝播する可能性がある場において、人を蔑視するような表現を示す行為が処罰の対象です。

似ている犯罪に「名誉毀損(きそん)罪」がありますが、こちらは具体的な事実を摘示して人の名誉を毀損したときに成立します。

侮辱罪にあたる内容を例示してみましょう。

  • あいつはバカで無能だ
  • ブサイクだから結婚もできない
  • デブで臭い

これらは、具体的な事実ではなく人を蔑視した内容なので侮辱罪に問われます。

一方で「彼は会社の同僚と不倫している」「アイツは前科があるし刑務所にも入っていたことがある」といった内容は、たとえ事実だったとしても名誉毀損罪です。

万が一、相手方から被害届を出された場合や訴えられたなどは、罪に問われる可能性がありますので、弁護士に相談してください。

3. 侮辱罪の厳罰化でこれから起きること

侮辱罪の厳罰化は、インターネット上における誹謗中傷の抑止効果が期待されている一方で、さまざまな弊害も懸念されています。

(1)逮捕・勾留される事件が増えるおそれがある

厳罰化される前の侮辱罪は、刑事訴訟法が定める「軽微犯罪」にあたるものでした。軽微犯罪は、定まった住居を有しない、または正当な理由なく出頭の要請に応じないといった状況がなければ逮捕できません。また、逮捕後の勾留も、定まった住居を有しない場合に限られています。

今回の厳罰化によって、侮辱罪は軽微犯罪の範囲から除外されました。逮捕・勾留の制限も緩和されたので、今後はこれまでは在宅事件として処理されていたケースでも身柄拘束されてしまうおそれがあります。

(2)表現の自由がおびやかされるかもしれない

侮辱罪の厳罰化は、日本国憲法が保障している「表現の自由」をおびやかすかもしれません。正当な批判や意見といった表現行為にも侮辱罪が適用されてしまったり、活発な表現行為が抑圧されて萎縮を招いたりするのではないかと懸念されています。

政府は、侮辱罪の厳罰化を盛り込んだ刑法改正の法律において、3年後には有識者を交えて施行状況や自由に対する不当な制約の有無などを検証すると明示しています。3年後の検証結果によっては「公益目的であれば罰しない」といった除外規定が設けられるなどの措置が講じられるかもしれません。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2022年11月28日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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