逮捕勾留からの自由を勝ち取れ ~身柄解放:証拠集め編~

逮捕勾留からの自由を勝ち取れ ~身柄解放:証拠集め編~

「私は逮捕されるんですか!?」

犯罪の疑いをかけられた時、真っ先によぎる不安だと思います。実際、日々の相談を受けていても、逮捕されるのかという不安を抱えて相談される方は多いです。3日間の逮捕、そして20日間の勾留は、あらゆる犯罪について行われるわけではありません。証拠をつぶす「罪証隠滅」と「逃亡」を防ぐためで、その目的に比して勾留されることによる不利益が大きくなく「勾留の必要性」が認められることを条件として、裁判によって決定されることは、以前の基礎知識編(逮捕・勾留からの自由を勝ち取れ~身柄解放:基礎知識編~)で説明しました。

今回は、そのような逮捕・勾留のルールに基づいて実際に戦う手法として、証拠集めの考え方を、具体的なエピソードを交えながら紹介したいと思います。

1. 事前準備から勝負は始まっている

逮捕直後、勾留の裁判が迫っている時、24時間以内には準備を済ませなければいけないくらいのタイムスケジュールになることが多いです。

勾留の裁判がもう行われてしまっていて、今からはじめて争おうという時にも、1日も早く外に出たいという要望をかなえなければなりません。そういう差し迫ったスケジュールの中で、捕まっている本人と接見する機会も、あるいは家族のような身柄解放に協力する人たちと会えるのも、基本は1回。「一期一会」の構えで、必要な証拠をそろえなければなりません。

そのためには、接見に持参する資料にしろ、協力者に面会の場で作成してもらい、あるいは持参してもらう資料にしても、的確に事前準備する必要があります。

それでは、どういう資料が、身柄解放に有効なのでしょうか?

2. 証拠資料は弁護士のアイデアの見せどころ

(1)証拠資料に制限はない

刑事裁判における証拠は、刑事訴訟法によって提出できる証拠が厳格に制限されています。一方で、勾留に関する手続き、勾留却下の意見、準抗告、保釈といった手続きでは、原則、何を出しても良いです。

もちろん、罪証隠滅、逃亡、勾留による不利益という各要件に関係するものでなければ意味はないですが、そこに向けて説得力が増しそうなものなら、多ければ多いほど良いとも言えます。いくつかのパターンを見てみましょう。

(2)監督者の監督手法を上申し、本人にも承認させる

これはほぼ全ての事案で共通するところだと思います。

捕まっていた人が、外に出ても勝手に行動せず、事件関係者に接触したり逃げたりする隙がないほど、罪証隠滅や逃亡のおそれは小さくなります。そのため身元引受人や家庭・職場での協力者を用意して、それぞれが被疑者・被告人といつ、どこで行動を共にできるかを示すのです。

こう言うと当たり前のようですが、その申告する言葉を上申書として提出するには、内容を聴取の上、いち早く上申書として署名押印したものを作成しなければならないため、実はこの程度でも、誰でもちゃんとやっているわけではないのが実情です。

身元引受人や協力者側で作った監督プランに対応した遵守事項を作り、捕まっている本人に誓約をさせることで、監督プランが捕まっている人たちの間での共通理解になっていることを示すのも、実効性を高めて説得力を増させるには有効でしょう。

この誓約書は、定型文を用いて作ると簡単ですが、私は事案と当事者のキャラクターに合わせたものを作るようにしています。外国人だと、その人の言語での説明をそえて、真に理解をしたことを示したりします。

(3)一緒にいられない時間を補う

前項の応用編になりますが、身元引受人になる家族や協力者をいくら集めても、それぞれの生活もあることから、24時間監視にはならないことが多いでしょう。身柄解放の難易度が高い重めの事件では、その部分をどう手当てするかまで考えた方が良いです。

たとえば、職場から家に帰る間自由になる場合は、協力者に連絡を義務付けるなどは基本的なやり方です。また、自由になる時間が少ないことを示すために、Googleマップなどを利用して、所要時間・距離を示すことも考えられます。

より厳しめな手法だと、最近の若い人は日常的に位置情報共有アプリを使っていますし、iPhoneのデフォルト機能にも位置情報共有可能なものがあります。外出時にはこのアプリを使って位置を把握させるといった手法も有効です。この場合、証拠からその効果を理解してもらう必要があるため、機能を説明したインターネットページもあわせると良いでしょう。

(4)勾留による不利益を積み上げろ

裁判官は判断を悩んだ時、仕事や生活にどのような不利益が生じるのかという部分と天秤にかけて、最後の判断をすることがあります。特に罪を否定しているような事件だと、どうしても罪証隠滅や逃亡のおそれがないとは言えないと評価されがちなため、不利益の大きさを強調することによるダメ押しは重要です。

捜査機関は、職場や家庭の状況まで把握はしていないため、こちらの資料の集め方次第で裁判官の考慮事項となるかも決まってくるのであり、力の入れどころとも言えます。

たとえば、家計の柱となる人が逮捕された場合、家計を示す通帳や家計簿は有益です。数字が、ある家族全体を困窮に追い込んでいく様を伝えることができ、大きな不利益だと提示できます。

仕事に欠かせぬ人材であることを理解してもらうには、その企業の会社説明資料や、携わるプロジェクトの内容がわかるものがあると、その確かさを示すことができ、これを犠牲にしてまで逃げ出すことはないだろうと強く訴えられます。

被疑者が疾患を持っていたり、たとえば家族の誰かが疾患を持っていて薬の服用には捕まっている被疑者が必要だったりする場合も、生命身体に関わる事情として、勾留の不利益が大きいことを示せます。医療診断書のような堅い資料も効果的ですが、家の棚に詰まった薬の山を写真に撮り証拠として用いたこともありました。

3. 身柄解放は頭と、最後は足で戦う

以上のように、身柄解放の証拠戦略を即座に打ち立て、証拠資料を収集することが、早期の身柄解放に必要なアプローチとなります。

あらかじめ頭でよく考え、依頼者や協力者にも的確に指示や協力要請を行う必要があります。そして最後には、たとえば彼らの家に行くなどして、足で証拠を集めることもあります。これらは一例に過ぎず、私は事案ごとにアラカルトな証拠資料を用意して、捕まっている依頼者の状況を、より正確に伝えようとします。

捕まっている人が外に出られるかどうかも、無実を訴えることや、刑務所に行かずに社会生活を維持するといったニーズと同じくらい、依頼者にとって重要なものかと思います。身柄解放での勝利を得るには、刑事弁護への柔軟な発想力、そして情熱を持った弁護士に依頼するのがオススメです。

杉山 大介
杉山 大介 弁護士

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  • こちらに掲載されている情報は、2021年10月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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