暴行罪で現行犯逮捕されるケースとは? 逮捕の種類と逮捕後の流れ

暴行罪で現行犯逮捕されるケースとは? 逮捕の種類と逮捕後の流れ

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

令和2年版の犯罪白書によると、令和元年中に全国の警察が認知した暴行事件は3万276件で、うち2万5556件が検挙に至っています。検挙率は84.4%で、全刑法犯の検挙率39.3%と比較すると非常に高い数値であることがわかります。

このような統計の数値をみると、暴行罪を起こせば必ず逮捕されるのだろうか? と不安になる方も多いでしょう。また、事件現場でそのまま逮捕され、自宅に戻れないといったケースがあるのかについても気になるところかもしれません。

1. 逮捕の種類は3つ

「逮捕」とは、警察・検察などの捜査機関が、法律の定めに従って被疑者の身柄を強制的に拘束する手続きです。逮捕には3つの種類があり、状況に応じて適切な方法で執行されます。

(1)通常逮捕

日本国憲法第33条の定めに従い、裁判官が発付した逮捕状に基づいて執行される原則的な逮捕を「通常逮捕」といいます。事件の発生から逮捕までに日数がかかり、犯行の後日に逮捕されることから、後日逮捕と呼ばれることもあります。

(2)現行犯逮捕

現に罪をおこない、またはおこない終わって間もない者を逮捕するのが「現行犯逮捕」です。
まさに犯罪がおこなわれているそのときや、事件が発生してすぐに警察官が駆けつけた場合は、逮捕状の発付を受けていなくても逮捕が認められます。

なお、現行犯逮捕はまさに犯行の状況が目撃されており、加害者を取り間違える危険がないことから、捜査機関に所属しない一般の私人でも逮捕が可能です。私人による現行犯逮捕の場合は、直ちに警察に通報して被疑者の身柄を引き継がなくてはなりません。

(3)緊急逮捕

一定の重大犯罪を対象に、その場で逮捕しなければ逃亡・証拠隠滅を許してしまう危険がある場合は、令状なしの逮捕が許されています。

これを「緊急逮捕」といいます。

緊急逮捕は、厳格な要件を満たしている、かつ逮捕後は直ちに逮捕状を請求し、逮捕状が発付されれば被疑者に示すことを条件に、令状主義の例外として認められています。
そのため、もし裁判官が逮捕状請求を却下した場合は、直ちに被疑者を釈放しなくてはなりません。

2. 暴行罪で現行犯逮捕されるケース

暴行罪は、窃盗罪や詐欺罪のように、誰が犯人なのかわからないという犯罪ではなく、加害者と被害者が直接会って発生する「対面犯」に分類されます。
被疑者として特定されやすので、通報を受けて現場に駆けつけた警察官に現行犯逮捕されるケースも少なくありません。

暴行罪で現行犯逮捕されるケースとしては、次のような状況が考えられます。

  • 友人や知人と口論になり、一方的に相手に暴力を振るった
  • 酔っ払ってほかの酔客に暴力を振るった
  • 見ず知らずの通行人に対していきなり殴りかかった

周囲に人の目がある状況であれば、目撃者などが警察に通報して現行犯逮捕に至る可能性が高いでしょう。

3. 現行犯逮捕された後はどうなる?

現行犯逮捕されると、その場で身柄拘束を受けて警察署に連行されます。その後、取り調べを受けたうえで、警察署内にある留置場に留め置かれるため、自宅へ帰ることも、会社や学校へと通うことも許されません。自由な行動は大きく制限されることになります。

(1)逮捕による身柄拘束は72時間

逮捕による身柄拘束の効力は最大72時間です。
まず、警察の段階で48時間以内の身柄拘束を受けます。この期間は、警察官による取り調べのほか、被疑者としての写真撮影や指紋採取などがおこなわれます。

逮捕から48時間以内に、逮捕された被疑者の身柄は検察官へと引き継がれます。

この手続きを「送致」といいますが、ニュースなどの報道では「送検」と呼ばれることもあります。

送致を受けた検察官は、24時間を期限に被疑者を取り調べたうえで、勾留請求をするかを判断します。

警察段階で48時間、検察官の段階で24時間の合計72時間が、逮捕による身柄拘束の限界です。

(2)勾留を受ければさらに20日間の身柄拘束を受ける

検察官が、身柄拘束を延長してさらに取り調べを進める必要があると判断した場合、裁判官に対して、「勾留」の許可を請求します。

裁判官が勾留を認めた場合は、初回の勾留で10日間以内、延長請求によってさらに10日間以内、合計で勾留請求の日から最大20日間の身柄拘束を受けます。勾留が満期を迎えるまでに検察官が起訴すれば、刑事裁判へと発展します。

なお、勾留の必要がないと判断された場合は、在宅事件扱いになります。この場合、身柄は解放されますが事件が終わったわけではありません。勾留のケースと同様に、検察官が起訴すれば刑事裁判で量刑が言い渡されることになります。

暴行罪の量刑は、2年以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料です。刑務所に収容される懲役刑だけではなく、罰金や科料も規定されていますが、どの量刑を言い渡されたとしても前科がつくことになります。

  • 暴行罪で逮捕されたら

まずは、勾留を防ぐのが大事です。前記の通り、勾留されてしまうと約20日の身柄拘束に繋がり、学校や仕事といった生活にも重大な影響が生じます。

勾留は、一つの裁判で決められるため、弁護士を通して勾留をしなくて良い証拠を提出するのが大事です。続いて、事件の結論としても不起訴処分の獲得を目指すことになります。
この点についても、弁護士を通して、不起訴に繋がる要素を増やすのが有益でしょう。

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