従業員から残業代請求されたらどう対応すべきか?
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従業員から残業代請求されたらどう対応すべきか?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

従業員から残業代を請求された場合、トラブルの深刻化を防ぐために、会社(経営者)は労働基準法に従って誠実に対応する必要があります。

今回は、従業員から残業代を請求されるきっかけや、残業代請求に関して会社がチェックすべきことなどを解説します。

1. 未払い残業代を請求されるきっかけは?

会社が従業員から未払い残業代請求をされるきっかけはさまざまですが、主に考えられるきっかけは以下のとおりです。

(1)長時間労働の常態化

毎月の長時間労働が常態化していると、従業員はどんどん疲弊してしまいます。

この場合、「こんなに働いているのに、給料が少ないのはおかしいのでは?」などと、労働者が疑問を抱くおそれが大いにあるでしょう。このように、長時間労働に不満を持った労働者が、会社に対して残業代の計算し直しなどを要求するケースは、非常に多く見られます。

(2)労働者本人の弁護士への相談

最近では、残業代に関する弁護士などの見解に、インターネット上で簡単に触れることができるようになっています。

何かのきっかけで労働者が残業代に関する解説などを目にした際、「自分にも未払い残業代があるかもしれない」と思い、弁護士に相談するケースもあり得るでしょう。その際、正確に計算をしたところ未払い残業代があることが分かったので、会社に対して未払い残業代を請求するというパターンが考えられます。

そして労働者の未払い残業代請求は、回収可能性や回収可能額の見通しもたてやすいことから、弁護士側でも積極的に受任しやすい分野の一つであるため、相談を受ければそのまま請求の手続に進んでいくことも少なくありません。

(3)労働基準監督署からの指導・勧告など

残業代の未払いについては、労働基準監督署も相談を受け付けています。労働環境に不満を持った労働者が、会社の残業代の未払いについて労働基準監督署へ申告した場合、労働基準監督署による調査が行われます(労働基準法第101条第1項)。

調査の結果、残業代の未払いが発覚した場合には、労働基準監督署からの指導・勧告が行われます。未払いが続くようであれば、最終的に刑事処分が行われるおそれがあるため、会社としては未払い残業代を精算しなければなりません。

2. 会社が残業代請求されたらチェックすべきこと

会社が従業員から残業代請求をされた場合、労働基準法に従って適切に対応するとともに、再発防止策を講ずる必要があります。

具体的には、以下の各点に留意して対応してください。

(1)労働基準法に基づき、金額を正確に計算する

労働基準法では、残業代は以下の賃金率によって計算することが定められています(労働基準法第32条第1項、第2項、第37条第1項)。

法定内残業(所定労働時間と合わせて、1日8時間以内かつ1週40時間以内の残業) 通常の賃金
時間外労働(所定労働時間と合わせて、1日8時間または1週40時間を超える残業) 通常の賃金+25%以上
休日労働(法定休日の労働) 通常の賃金+35%以上
深夜労働(午後10時から午前5時までの労働) 通常の賃金+25%以上
時間外労働+深夜労働 通常の賃金+50%以上
休日労働+深夜労働 通常の賃金+60%以上

会社が従業員から残業代を請求された際には、タイムカードなどから判明した労働時間に対して、上記の賃金率をそれぞれ適用し、残業代の総額を計算する必要があります。労働者側の請求額が間違っている可能性も多分にあるので、弁護士に相談して正確な計算を行うことが大切です。

なお上記は基本形であり、みなし残業代などを取り入れている場合、そのような各会社の制度毎に最適な計算が必要となるのは言うまでもありません。

(2)残業代請求権の消滅時効を確認する

残業代請求権には、以下の消滅時効が設けられています。

2020年3月31日以前に発生した残業代請求権 支払日から2年
2020年4月1日以降に発生した残業代請求権 支払日から3年

上記の期間を経過した場合、消滅時効を援用することで、会社は残業代の支払い義務を免れることができます。そのため、労働者側の請求内容を精査して、消滅時効が完成している残業代が含まれていないかを確認しましょう。

なお、これも法改正における影響を緩和するための経過措置とされており、将来的には支払日から5年まで延長が見込まれています。法改正が盛んな領域は、常に最新の情報へのアップデートも必要です。

(3)再発防止のために労務管理体制を見直す

未払い残業代の問題が発生するのは、労働時間の管理を含めて、会社の労務管理体制に不備があることに起因します。労働者とのトラブルにより発生する、労働審判や訴訟への対応は、会社にとって大きな負担です。そのため、できる限り問題の再発を防ぐための対策を講ずべきでしょう。

会社としては、就業規則その他の社内規定の内容や、実際の残業代計算のオペレーションなどが、労働基準法に違反していないかをチェックしなければなりません。そして、もし違反が判明した場合には、弁護士にリーガルチェックを受けつつ、社内規定やオペレーションの見直しに着手しましょう。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2022年03月14日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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