自然災害で隣家に損害を与えた。不可抗力でも損害賠償責任はある?

自然災害で隣家に損害を与えた。不可抗力でも損害賠償責任はある?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

地震や台風などの自然災害によって自宅の塀や屋根瓦などが崩れ、隣家に被害が生じた場合、法的責任を負うことになるのでしょうか。これは法的な観点から言うと、「土地工作物責任」という民法に関係した問題です。

本コラムでは、こうしたトラブルに対してはどのような法律が適用されるのか、損害賠償責任の有無や交渉の手順などを解説します。

1. 自然災害により被害を与えた場合法的責任はある?

地震や台風などの自然災害が生じた際、自分の家の塀や屋根瓦などが崩れて隣家に損害を与えるケースがあります。こうしたとき、たとえ自然災害が直接の原因だとしても、民法717条で定められた「土地工作物責任」に基づいて法的責任を問われる可能性があり、注意が必要です。

そもそも土地工作物とは、建物や塀、看板など、土地に設置された施設や構造物を指します。民法717条では、こうした土地工作物に存在する何らかの瑕疵(かし)(安全性の欠如)や欠陥が原因となって他者に損害を与えた場合、その占有者(居住者)または所有者に損害賠償責任があると定められています。

損害賠償とは、不法行為や安全配慮義務の不履行によって他者の財産や身体などに被害を与えた場合、その損害に対して金銭的な補償をすることです。損害賠償については民法709条以下に定められています。土地工作物に対する管理責任を果たさないことも、不法行為の一種です。

(出典:「民法」(e-Gov法令検索))

土地工作物に対する管理責任を怠ったとみなされるのは、占有者または所有者が損害の発生を防止するのに通常必要とされる注意や対策を講じていなかった場合です。完璧な対策を講じる必要はありませんが、その土地工作物の特性・場所・環境・利用方法などにあわせて、一般的に要求されるレベルであることが求められます。

たとえ自然災害が直接の原因だとしても、たとえば「塀が倒壊したのは経年劣化でもろくなっていたのが影響している」と判断されれば、損害賠償責任が生じる可能性が高くなります。

もしも土地工作物にこうした対策が講じられており、損害が不可抗力によって生じたと判断された場合は、責任を問われない可能性があります。不可抗力とは、簡単に言うと、予見や回避ができない外的要因です。

たとえば例年にないレベルの大地震・台風・洪水などの自然災害、あるいは第三者による不慮の行為などが挙げられます。損害がこうした不可抗力によると判断されると、損害賠償の免責または減額が認められる可能性があります。

2. 自然災害による損害を受けたら

では、自然災害および他者の不適切な土地工作物によって、自分が損害を受けたケースについて対策を考えてみましょう。先述のとおり、たとえ自然災害が直接の原因だとしても、その土地工作物に何らかの欠陥があると考えられるなら、加害者に対して損害賠償を請求する権利があります。以下は損害賠償請求をする場合の手順です。

(1)直接請求する

まずは当事者同士で話し合って解決することをおすすめします。特に、相手とご近所同士である場合は、今後の人間関係も考えると、裁判にまで持ち込むのはなるべく避けるべきでしょう。

相手に損害賠償を請求する事前準備として、まずは被害状況の確認や被害額の算出が求められます。被害状況やその現場を写真や動画などで記録しておくと、後で事実関係についてもめた場合に証拠として提出可能です。これらの資料をそろえたら、加害者に対して損害賠償を請求します。管理責任が明らかであれば、この時点で相手が請求に応じる可能性があり、問題のスムーズな解決が期待できます。

(2)裁判を起こす

直接の請求が難航した場合は、民事調停や民事訴訟による解決を検討します。民事調停とは、裁判官や調停委員の仲裁を受けながら、当事者同士で合意できるラインを探る方法です。手続きに専門知識が不要で、比較的短期間(3か月程度)で解決できるのがメリットです。

民事訴訟の場合は、当事者双方の主張や証拠資料に基づき、裁判官が損害賠償責任の有無や賠償額を決定します。民事訴訟にまで発展した場合は、裁判官を説得できる合理的な主張や、相手の管理に不足があったと示す客観的な証拠をそろえることが重要です。

3. 隣家に損害を与えたら弁護士相談を検討

自分側が隣家に損害を与えてしまうことも十分にありえます。こうした場合は上記のとおり、被害者から損害賠償請求を受ける可能性があります。こうした際、もしも相手の主張や賠償額などに納得がいかない場合は、弁護士への相談をおすすめします。

「弁護士に相談するのは裁判沙汰になってから」というイメージがあるかもしれませんが、実際にはそんなことはありません。弁護士は法律の専門家として、法的な観点から相手の主張や請求額などが妥当か判断し、交渉を代行・サポートしてくれます。当事者同士では感情的になって話がこじれそうな場合でも、弁護士の関与によってお互いが納得できる落としどころを見つけ、交渉がスムーズに終わることが期待できます。

当事者同士の交渉がうまくいかず、民事訴訟になった場合、弁護士のサポートはさらに重要です。弁護士は訴訟の提起や法的な主張、証拠の提出などをしてくれます。民事訴訟に精通した弁護士の助力を受ければ、裁判を自分の有利な結果で終えやすくなるでしょう。

特に、自然災害が介在しているケースでは、土地工作物責任に関する判断は、専門的な知識がなければ困難です。もしこうしたケースでお困りの方は、ぜひ弁護士に相談するようにしましょう。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年02月06日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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