購入した注文住宅の工期が大幅に遅れた。賠償請求できる?

購入した注文住宅の工期が大幅に遅れた。賠償請求できる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

購入した注文住宅(新築住宅)の工期が遅れた場合、施工業者に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

今回は、注文住宅の工期遅れが発生した場合における損害賠償請求の可否、および損害賠償の対象となる費用の種類などを解説します。

1. 注文住宅の工期が遅れた場合、まず工事請負契約を確認すべき

注文住宅の工期が遅れた場合は、工期遅れの取り扱いなどにつき、工事請負契約の内容を確認しましょう。

(1)工事請負契約とは

工事請負契約とは、工事に関して適用されるルールにつき、注文者(施主)と請負人(施工業者)が締結する契約です。

注文住宅を新たに建築する場合、ハウスメーカーや工務店を決めた段階で、最初に工事請負契約を締結します。

(2)工事請負契約のチェックポイント

注文住宅の工期遅れが発生した場合に、工事請負契約においてチェックすべき主なポイントは、以下のとおりです。

  • 契約上の工期(完成の期限)
  • 工期遅れが発生した場合の報告(施工業者から施主への報告、施主が施工業者に対して報告を求めることができる事項)
  • 工期遅れに関する損害賠償、違約金のルール

工事請負契約におけるこれらの規定を確認した上で、どのような対応を取るべきかについて検討・判断しましょう。

2. 工期遅れの損害賠償を請求できる場合・できない場合の例

施工業者に対して工期遅れの損害賠償を請求できるのは、施工業者側に債務不履行が認められる場合です。

(1)損害賠償を請求できる場合の例

  • 施工業者の発注ミスにより、資材の到着が遅れた場合
  • 施工業者の手配ミスにより、人員不足が生じて工程が遅れた場合
  • 施工業者の不注意により、工事現場で事故が発生して遅れが生じた場合

また、工事請負契約において違約金が定められている場合は、(債務不履行の有無にかかわらず)契約所定の条件に従って、施工業者に違約金を請求できます。

これに対して、施工業者側に債務不履行が認められず、違約金の発生要件にも該当しない場合には、工期遅れの損害賠償を請求することはできません。

(2)損害賠償を請求できない場合の例

  • 天災地変(台風、地震など)によって工期が遅れた場合(工事請負契約に基づき違約金が発生する場合を除く)

3. 工期遅れに係る損害賠償の対象となる費用の種類

注文住宅の工期遅れを理由に、施工業者に対して損害賠償を請求できる費用としては、以下の例が挙げられます。実際に損害賠償請求を行う際には、弁護士にサポートを依頼するのが安心です。

  • 現住居or仮住まいの賃借延長にかかる費用
  • 賃貸併用住宅の場合:賃料相当額の逸失利益
  • 工事請負契約所定の違約金
  • 遅延損害金

(1)現住居or仮住まいの賃借延長にかかる費用

注文住宅の工期が遅れた場合、現住居や仮住まいに住む期間が長引くことになります。

当初の予定よりも賃借が長引くことに伴い、賃料・管理費・更新料などが余分に発生します。これらの費用は、工期遅れとの間に因果関係があるものとして、施工業者に対して損害賠償を請求可能です。

(2)賃貸併用住宅の場合

賃料相当額の逸失利益

建築中の注文住宅が賃貸併用住宅である場合、完成後はその一部を他人に賃貸することが予定されています。賃貸をすれば賃料収入を得ることができますが、工期が遅れた場合は収益開始が遅れてしまいます。

この場合、工期の遅延期間に対応する賃料相当額を、逸失利益として施工業者に請求できる可能性があります。

(3)工事請負契約所定の違約金

工事請負契約では、工期遅れに関する違約金が定められるケースがあります。この場合、契約所定の条件に従い、施工業者に対して違約金を請求することが可能です。

なお、違約金規定の有無および内容は、工事請負契約によって異なります。

(例)

  • 施工業者の債務不履行の有無にかかわらず、一定額の違約金が発生する
  • 施工業者の債務不履行があることを条件に、一定額の違約金が発生する
  • 施工業者の債務不履行があることを条件に、違約金額を上限として、実際の損害額を基準に損害賠償を行う

具体的にどのようなルールが適用されるかについては、必ずご自身の締結した工事請負契約の内容を確認しましょう。

(4)遅延損害金

損害賠償や違約金の支払いがなされない場合、請求時から支払い済みまでの期間につき、施工業者に対して遅延損害金を請求できます。

遅延損害金の利率は、原則として法定利率(年3%)ですが、工事請負契約などによって利率が定められている場合には、その利率に従います(民法419条3項)。

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  • こちらに掲載されている情報は、2023年02月20日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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