定期借地権はトラブルが多い? メリット・デメリットとトラブル
事業用の土地を確保する際、「定期借地権」の利用を考える方も多いのではないでしょうか。しかし、この定期借地権にはメリットとデメリットの両面があるので注意が必要です。
本コラムでは、定期借地権のメリット・デメリットや、よくあるトラブル、そしてトラブル時の相談先について解説します。
1. 定期借地権とは
定期借地権とは、契約期間内だけ土地を使用できる権利のことです。そもそも借地権とは、他人の土地を借りてその上に建物を建設する権利を指します。所有権とは異なり、土地自体の所有者は変わらず、土地の使用料(地代)と引き換えに使用権のみが借地人に与えられます。
そのため、借地人は、地主の許可なく土地を売却したり譲渡したりすることはできません。なお、土地にかかる固定資産税の納税義務は地主が負います。
(1)普通借地権と定期借地権の違い
借地借家法における借地権は「普通借地権」と「定期借地権」に大別できます。普通借地権とは、契約満了後も契約更新が可能な借地権です。普通借地権では、借主側の権利が強力に保護されており、希望すれば契約を更新して半永久的に土地を借り続けられます。地主が借地人に土地の返却を求める場合は、正当な事由が必要となり、立ち退き料の支払い等が必要となります。
もともと、旧借地法における借地権は、この普通借地権とほぼ同じものを指しました。しかし、上記のとおり、普通借地権は借主の権利が強力すぎて、地主は実質的に土地が返ってこないリスクを抱えることになります。そこで地主がより土地を貸しやすいように、平成4年に新たに設けられたのが定期借地権です。
定期借地権は、契約期間が明確に定められており、期間満了時には自動的に契約が終了して土地の返却を受けられます。そのため、地主は以前より土地を貸しやすくなりました。
(2)定期借地権の種類と特徴
定期借地権には、主に以下の4種類があります。
①一般定期借地権
居住用・事業用問わず、自由な用途で土地を使える借地権です。契約期間は50年以上と長期設定されます。しかし、この借地権は双方の合意がない限り更新できないため、契約期間が終了すると原則的には土地の使用権が失効します。契約満了に際して、借地人は更地にしたうえで土地を返還することが必要です。一般定期借地権を得るには、書面や電磁的記録による契約が求められます。
②建物譲渡特約付借地権
契約期間終了後に地主が借地人の建物を買い取る特約を設けた借地権です。そのため、借地人は契約満了時に土地を更地に戻す必要はありません。契約期間は30年以上とされます。建物譲渡の特約は通常書面で交わしますが、口頭でも可能です。契約終了後に、借地人が建てた建物を使って、地主が賃貸経営などをしたい場合に適しています。
③事業用定期借地権
店舗や商業施設の経営など、事業目的で土地を利用するための借地権です。契約期間は10年以上50年未満とされます。契約期間が10年以上30年未満の場合は、借地人からの建物買取請求は認められません。30年以上の契約を結ぶ場合も、建物買取請求を認めない特約を設定可能です。契約は公正証書で行います。
④一時使用目的の借地権
1か月や1年など、ごく短い期間に一時的に土地を利用する場合に適した借地権です。建設現場用の事務所やプレハブ建築の設置などが主な用途です。契約内容は当事者間で比較的柔軟に決められます。契約も書面で行う必要はありません。
(3)事業用借地権の地代相場
事業用定期借地権の地代相場は、更地価格(相続税評価額)の6%程度を目安にされることが多く、普通借地権に比べると若干高めに設定されます。これは普通借地権とは異なり、地主に高額の権利金を支払う必要がないことが関係しています。ただし、事業用定期借地権の契約時には、地主に保証金を支払うのが一般的です。保証金の相場は地代の6か月分程度で、契約終了時に返還されます。
2. 定期借地権のメリット・デメリット
上記で紹介した定期借地権の各種類のメリット・デメリットは以下のとおりです。
(1)一般定期借地権のメリット・デメリット
用途制限がなく、柔軟な土地利用が可能なのがメリットです。地代も比較的低額で、50年以上の長期にわたる土地利用が可能になります。他方で、契約期間の更新ができないことや、建物買取請求も認められず、期間満了後は自費で土地を更地にする必要があることがデメリットです。
(2)建物譲渡特約付借地権のメリット・デメリット
基本的には一般定期借地権と同じですが、契約終了時に建物を地主に買い取ってもらえるため、経済的負担が軽減されます。ただし、建物譲渡特約に基づく所有権移転請求権保全のための仮登記にかかる費用を負担する必要はあります。
(3)事業用定期借地権のメリット・デメリット
契約期間を10年以上50年未満と柔軟に設定できるので、事業計画に合わせた期間設定が可能です。30年以上の契約であれば、契約の更新や建物買取請求が可能な契約もつくれるため、長期的な事業展開に対応できます。ただし、途中で事業を中止した場合でも居住目的への転用は認められないのはリスクです。また、契約の更新や建物買取請求が当然には認められません。
(4)一時使用目的の借地権のメリット・デメリット
一時使用目的の借地権は、必要な期間だけ土地を比較的安価で利用できるのがメリットです。ただし、継続利用が必要になった際には、新たに契約を結ぶ必要があることや、借地借家法による保護規定が適用されない点を考慮する必要があります。
3. 定期借地権でのトラブル
定期借地権におけるトラブルは多岐にわたります。事前にこれらの問題を知り、対処法を理解しておくことが重要です。
(1)定期借地権全般でよくあるトラブル
どの種類の定期借地権でもよくあるトラブルとして、以下のような問題が挙げられます。
①地代の増額請求
土地の価値が上がった場合や経済状況の変化により、地主から地代の増額を請求されることがあります。
②名義変更料や更新料の請求
借地権の名義変更や契約の更新時に、追加料金を求められることがあります。
③立ち退き請求
土地の所有者が変わった場合や事業用途の変更などにより、立ち退きを求められることがあります。
④増改築の制限
定期借地権の契約内容によっては、増改築に制限があることが多く、許可なく行うと契約解除などをされる原因となります。
⑤売却の制限
借地権や借地上の建物を売却したいと思っても、地主の承諾が得られずもめるケースがあります。
⑥相続問題
定期借地権も相続の対象になるため、借地権や土地・建物の扱いを巡って相続人同士や地主との間で問題が起きる恐れがあります。
(2)事業用定期借地権のトラブル
事業用定期借地権に特有のトラブルも存在します。
①資産区分と原状回復の不明瞭さ
契約時に資産の区分や原状回復の責任を明確にしておかないと、契約終了時に争いに発展することがあります。
②事業者の経営破綻
事業者が経営破綻してしまった場合、契約終了時に更地にすることができず、地主が建物の撤去費用を負担しなければならないケースがあります。
③保証金の返還問題
契約時に地主に支払った多額の保証金が、契約終了時に返還されない場合があります。
4. 定期借地権のトラブルは弁護士に相談しよう
上記のように定期借地権を巡っては、さまざまなトラブルが発生しがちです。こうしたトラブルが起きた際には、弁護士に相談することをおすすめします。
たとえば、地主が不当な要求をしてきた場合、弁護士に依頼すれば法律に基づく強力な反論が可能です。また、弁護士という第三者を挟むことで、地主との感情的な摩擦を避けて、交渉による紛争解決を円滑に進められる場合があります。もちろん、法的な文書の作成や手続きの進行といった専門的な作業も代行してもらえます。
借地権に関するトラブル解決には、深い法律知識が必須です。問題が生じた際は、早めに弁護士へ相談しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年06月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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