美容整形が失敗! 説明義務違反で訴えられる?
美容整形は「こうなりたい」という希望を解決してくれるものの、必ずしも成功するとは限らず、整形後の状態が施術前に聞いていた説明とは違うといったケースは残念ながらよくあります。
本記事では、美容整形で後遺症などが出てしまった場合、手術を受けた側としてとれる方策について解説します。
1. 美容整形における説明義務とは?
美容整形は病気やけがの治療を目的として行われるものではなく、あくまで患者個人の「美しくなりたい」といった主観的な願望をかなえるために行われるものです。
美容整形も医療行為ではあるものの、目的が異なることから、医師に施術に関する説明義務はあるのか、ある場合にはどの程度の説明が求められるのかという点について、さまざまな法的解釈がなされてきました。
(1)医師が説明すべき内容
医療法第1条の4第2項に「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」と規定されています。
つまり、美容整形も患者に対する医療行為であるという観点からみれば、施術前に患者が受ける施術内容を十分に理解し、納得できるように説明する必要があります。
なぜなら、厚生労働省では、美容整形(美容医療)を受けようと考えている人に施術前にいま一度チェックしてほしいこととして次の4項目を挙げています。
- 使われる薬がどのようなものか理解しているか
- 効果だけでなく、リスクや副作用などについても納得しているか
- セカンドオピニオンについても説明を受け、自分で選択したか
- 施術はいますぐに行う必要があるのか
逆にいえば、これらの内容については最低限、医師は患者に対して施術前に説明すべきであると考えられるでしょう。
(参考:「確認してください!美容医療を受ける前にもう一度」(厚生労働省))
2. 美容整形における重篤な症状、裁判例
美しくなるために高額な代金を支払ったとしても、施術によって納得できる結果が得られないばかりか、重篤な症状が現れる可能性も少なくありません。ここでは、過去に問題となった症状や裁判例について紹介します。
(1)脂肪吸引による敗血症の例
臀部(でんぶ)の脂肪吸引施術を受けたことにより、敗血症を引き起こしてしまったケースです。こうした事例では、クリニックが行った脂肪吸引手術と敗血症との間に因果関係があるのか否かなどが問題となり得ます。
対応した弁護士事務所は、クリニックに対して医療記録の任意開示請求を行い、同記録を入手し、クリニック側の有責性の判断を得ることができました。
最終的に、訴訟を起こさずに和解する方向で交渉を進めた結果、患者はクリニックから損害賠償金を勝ち取ることができた事例です。
(参考:「臀部脂肪吸引術後の敗血症に関し、病院側に有責性を認めさせて損害賠償金550万円を獲得できた事例」(弁護士法人ALG))
(2)脂肪溶解剤の後遺症例
痩身(そうしん)美容のために、脂肪を溶かす薬剤を皮下注射した事例です。この施術の結果、足関節がうまく動かなくなるという後遺症が残ってしまいました。患者側は、当該溶剤を筋肉層に注射してはならないにもかかわらず、医師の注意義務違反があり、結果的に後遺症をもたらされたとして、医療機関に対して損害賠償訴訟を起こしたのです。
裁判では、
- 患者側の主張する医師の注意義務違反が十分に特定・立証されているのか
- 患者の主張に信用性はあるのか
- 患者の後遺症が常識的にあり得るか
などが争点となり、判決では、医師の注意義務違反は認められず、患者側の請求は棄却され、医療機関側の完全勝訴となりました。
(参考:「脂肪溶解剤を皮下注射する施術を受けた患者から足関節可動域制限の後遺障害が残った事例」(弁護士法人ALG))
(3)豊胸手術後の再置換術での後遺症例
患者が豊胸手術を受けたところ、胸に入れたバッグから液漏れを起こしてしまい、本来必要のないバッグの再置換が行われたことで、切開した傷跡が残ってしまった事例です。患者側の弁護士は、施術した美容外科医院に対して診療内容に関する開示請求を行い、調査を進めました。
その結果を踏まえ、美容外科医院との和解で調整しました。1年以内に和解が成立し、患者には損害賠償金が支払われています。
(参考:「豊胸手術後の再置換術で切開創の瘢痕が後遺した件について、交渉により損害賠償金500万円を獲得できた事例」(弁護士法人ALG))
3. 説明義務違反で訴えられる?
美容整形の結果が施術前に想定していたものではなかった場合、説明義務を怠ったとして医師や美容整形クリニックを訴えることは可能ですが、実際には次のようなハードルがあります。
(1)訴えても軽度の症状の場合には費用倒れになるおそれがある
美容整形は、患者本人の願望を実現するために行われるものです。仮に、医師に説明義務違反があったとしても、もし十分な説明を受けていれば施術を受けなかったということは患者側が証明しなければなりません。
訴訟を起こした場合にその証明ができなければ、説明義務違反は認められたとしても、他に義務違反がない限り、施術を受けた結果の損害賠償まで認められることは難しいと考えられます。
また、モデルや俳優、タレントといった、いわゆる芸能人などの場合には、容姿が職業的に意味を持ちますので収入にも大きく影響しますが、そうでない一般人の場合には、施術が失敗したことで、その後の収入に大きな影響が出るとは限りません。
さらに、肉体的な後遺症の場合、よほど重篤でない限り日常生活への影響も軽微で、大きな損害が発生したと判断されることは難しいでしょう。
これらのことから、患者が訴訟を起こしたとしても、必要な裁判費用に対して医師や美容整形クリニックから得られる金銭はごくわずかなもので、費用倒れになってしまうおそれがあります。
(2)医療ADRの利用を検討するのもおすすめ
美容整形手術を受けた結果、後遺症などが出てしまった場合は、「医療ADR」を活用するのも一案です。医療ADRとは、医療紛争について、中立公正な立場のあっせん人が関与することで、当事者間での解決を目指す手続きです。医療ADRを使うことで高額な裁判費用などを用意せずとも、和解へと一気に進みやすくなることがあります。
美容整形が原因で後遺症が出てしまった場合、裁判を起こしても少額の補償しか受けられないことが多く、費用倒れになるおそれがあることは前述した通りです。困ったときには弁護士へ相談し、解決に向けたアドバイスを受けることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2023年08月15日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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