歯列矯正で失敗したら? 実際のトラブル事例と対処法
歯列矯正では、治療内容や治療費についての説明義務違反、治療期間の延長、治療の失敗などのトラブルが起こる可能性があります。
本記事では、歯列矯正でよく起こるトラブルの種類や過去の裁判事例、トラブルが起きた際の対処法を解説します。
1. 歯列矯正に関するトラブル例
歯列矯正をすることにより、見た目が良くなるだけでなく、歯磨きがしやすくなったり、かみ合わせが改善されたりなど、さまざまなメリットが得られます。しかし、治療を行う上で、失敗などのトラブルも把握しておくことが重要です。
(1)歯列矯正で起こりやすいトラブル
①必要な説明がなされていない(説明義務違反)
治療費や治療内容、リスクなどについて歯科医師から十分な説明がなされていない場合、「説明義務違反」に当たります。説明義務違反とは、専門家の歯科医師が患者に対して病状や実施予定の治療内容、かかる治療費、治療におけるリスク、選択可能な他の治療法などの説明義務を怠ることです。
②治療費のトラブル
歯列矯正は自由診療であるため、特定のケースを除いて健康保険の適用はありません。基本的な治療費や装置代に加え、受診のたびに調整料がかかることもありますし、万が一装置の破損や紛失をしてしまった場合には、別途支払いが必要になることがほとんどです。このように、想定していなかった追加料金が原因で、トラブルへ発展するケースは少なくありません。
そのため、追加料金や別途料金を含めたトータルの支払い予定額を、十分に確認しておくことが必要です。また、何らかの問題が発生したときの返金対応でもトラブルに発展することがあります。
③矯正が終わらない
当初説明された治療期間よりも大幅に期間が延長してしまい、トラブルに発展するケースです。想定通りに歯が動かないことで治療期間が延長すると、その分通院する回数も増え料金が積み重なることも考えられます。
また、受験や就職、結婚など、大切なライフイベント前に治療を終わらせたいと思っている場合、期間が延びることは大きなデメリットです。
なお、歯が動かない原因として、歯科医師の検査およびシミュレーション不足や、マウスピース矯正のような着脱式装置の装着時間不足、通院していなかったなど、状況によってさまざまな理由が考えられます。
④治療による偶発症
歯列矯正によって、一時的な顎関節症や装置によるアレルギー反応、歯を動かしたことによる歯根露出、歯根吸収などが起こり得る可能性があります。適切な治療をしていても発症する可能性があるため、歯科医師は患者に対してこのようなリスクがあることを説明する義務があります。
⑤歯が後戻りする
矯正後、装置を外した際に歯は元の位置に戻ろうと動きますので、この後戻りを阻止するために、歯の位置を固定するための保定装置を、ある程度の期間装着しなければなりません。装置による保定を十分に行わないと、長期間かけて動かした歯が後戻りし、歯列矯正の効果が得られなくなりますので注意が必要です。
(2)過去の裁判事例
歯列矯正の治療において、実際に起こった裁判事例は以下の通りです。
①事例1
コルチコトミー(歯槽骨皮質骨切手術)と呼ばれる術式を使えば、通常2年半かかる治療期間を1年に短縮できると説明され、相場よりも高額な料金で診療契約を締結しました。しかし、2年以上経過しても治療が終わらず、質問しても明確な説明が得られなかったため、説明義務違反があるとして、損害賠償請求訴訟を行いました。
結果:当該症例を1年で治すことは不可能なことが立証され、勝訴が確定しました。
※【事件番号】東京高等裁判所判決/平成31年(ネ)第1900号、令和元年(ネ)第2422号
②事例2
結婚を機に歯列矯正を希望し、抜歯およびコルチコトミーを用いることで、通常よりも短期間(10か月程度)で治療が行えると説明を受け契約しましたが、10か月を過ぎても治療が継続していたこと、費用の見積もりがさらに膨れ上がったことなどの不信感から、契約解除を申し出ました。
また、治療が終わらずに予定していた治療期間が過ぎたことや治療によって発生した歯のすき間や傾斜が債務不履行に当たるとして、損害賠償請求訴訟を行いました。
結果:裁判所は、歯のすき間や傾斜は特に異常なものではないと判断し債務不履行には当たらないとしたものの、一方、矯正期間が通常よりも短期であることを前提とした高い治療費が設定されていたことなどから、治療費から8割ほどの報酬を控除した金額の返還義務があると判断しました。
※【事件番号】東京地方裁判所判決/平成9年(ワ)第21365号
2. 歯列矯正でトラブルに遭った場合の対処法は?
歯列矯正において、説明義務違反や失敗などが疑われる場合、弁護士や医療ADRへの相談をおすすめします。
(1)弁護士
説明義務違反や医療ミスによる損害賠償請求を検討している場合は、医療分野を得意とする弁護士に相談することがおすすめです。歯列矯正の失敗において、法的な責任が歯科医師または歯科医院にあるのかを調査し、事案に関する資料などの証拠集めを依頼できます。また、示談および訴訟の際の代理人になることも可能です。
(2)医療ADR
医療ADRは、日本弁護士連合会が推進する裁判外の紛争解決を目指す手続きのことです。弁護士があっせん人となり、当事者間の話し合いにおいて第三者として中立・公正な立場で解決を促します。短期間で紛争を解決できる可能性が高いことや、訴訟に比べて簡素な手続きであることが特徴です。
東京や大阪などの中心都市に加え、北海道や東北、中部、中国、四国、九州にも設置されています。
歯列矯正ではトラブルに発展するケースも多いため、歯科医師の説明や治療に不安を感じた場合は、なるべく早めに対策をとることが大切です。
- こちらに掲載されている情報は、2023年08月03日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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