医療事故と医療過誤の違いとは。どのような罪に問われるのかを解説
医療過誤とは、医療従事者の過失によって患者が被害を受けることです。
この記事では医療過誤について、医療事故との違いや、医療過誤により医療機関側が問われる責任、損害賠償請求における注意点を解説します。
1. 医療事故と医療過誤の違いとは
「医療事故」と「医療過誤」は混同されやすいですが、厳密には内容が異なります。それぞれについて詳しく解説します。
(1)医療事故とは
医療事故とは、医療が行われている場所において発生した事故のことです。広い意味で捉えられる言葉であり、被害者は患者だけでなく、医療従事者および病院の管理者である場合も当てはまります。たとえば、階段など病院内の設備で発生したケガも医療事故に含まれます。
(2)医療過誤とは
医療過誤は医療事故の中に含まれる言葉であり、医療従事者が起こした過失によって患者に被害が及ぶ事態を指します。具体的には、診療ミスや診断ミス、手術ミスなどです。また、医療従事者間の連携ミスなどにより被害が生じた場合も医療過誤と見なされます。
医療過誤は、医療が人の手により行われている以上、完全に回避することは難しく、常に起こり得るものと認識しなければなりません。
(3)医療事故と医療過誤を区別する必要性
医療過誤は医療事故の一種ではありますが、医療機関において事故が発生した場合、それが医療過誤によるものかという点が重要ですので、それぞれをしっかりと区別しておく必要があります。
実際に医療過誤が疑われたとしても、病院側がすぐに過失を認めない可能性もあるため、医療機関に対して賠償責任を求める際は、訴訟を提起するのが当たり前となっているのが現状です。
2. 医療過誤で問われる三つの責任
医療過誤が起こった場合、医師・看護師などの医療者や医療機関側には、刑事・行政・民事の面において責任が発生する可能性があります。それぞれの責任について詳しく見ていきましょう。
(1)刑事上の責任:医療従事者への刑事罰
刑法第211条では、業務上過失致死傷罪が定められています。これは、業務において必要な注意を怠った場合や重大な過失で人を死傷させた場合に問われる罪で、5年以下の懲役・禁錮、または100万円以下の罰金が科せられます。
刑事責任の追及は、警察や検察などの捜査機関で行われ、医療過誤においては、医療従事者の過失が認められた場合、業務上過失致死傷罪に該当する可能性があります。
(2)行政上の責任:病院に対しての行政処分
医療過誤が発生した場合、行政上の責任を問われ、医師法などの法令に基づいて、厚生労働大臣による命令によって行政処分が下されることもあります。
医師法第7条では、罰金以上の刑に処せられた場合や、医師が医療行為に際して犯罪や不正行為があった場合、医師としての品位を損なう行為があった場合などに、「戒告」「3年以内の医業停止」「免許の取消」の処分を定めています。
しかし、実際には診療報酬請求の不正請求や覚せい剤取締法違反、道路交通法違反などによるものが多く、医療過誤に対して行政処分が下されるケースはごく少数です。
(3)民事上の責任:患者が病院に追及する損害賠償責任
民事上の責任は、医療過誤によって被害を受けた患者やその家族(遺族)が原告となり、医師や病院などに債務不履行または不法行為による損害賠償責任を追及する方法で問われるものです。医療過誤による損害の補償を受けるには、民事訴訟によって損害賠償を請求する必要があります。
損害賠償請求における損害とは、医療過誤によって発生した新たな治療費や、治療のための休業損害、慰謝料など、医療過誤により発生したあらゆる損害が当てはまります。損害賠償が認められるには、医療機関による「過失」および「因果関係」の有無が争点となります。
3. 医療過誤かもと不安になったら専門家に相談を
実際に医療過誤と疑われるケースに遭い損害賠償を請求したいと思った場合でも、困難な状況が考えられるため、以下のような注意点を把握しておきましょう。
(1)医療裁判の勝訴は困難
通常、法律に詳しくない一般人が訴訟を起こすには、決して低くないハードルが待ち構えており、中でも、とりわけ医療に関する裁判は勝訴する確率が低水準にあります。その理由としてまず挙げられるのが、被告側となる医師や病院などが医療のプロであるのに対して、医療の素人である患者や家族が立ち向かわなければならないことです。
また、依頼する弁護士も、法律の知識に加えて医療の知識や医療裁判の経験がある弁護士に依頼する必要があります。さらに、証拠となる「私的鑑定意見書」の提出が必要ですが、これには作成してもらえる専門医を探さなければなりません。
このような課題をクリアした上で、裁判官に医学的な問題点を理解してもらう必要があります。
これらの要件を全て満たすことは簡単ではないため、医療訴訟における勝訴は難しいとされています。一方で、過失がはっきりとしている場合は、裁判に至らず示談となるケースもあります。
(2)医療過誤が疑われる場合は弁護士に相談
医師や病院などに対して医療過誤の疑いを感じた場合、まずは弁護士への相談がおすすめです。ご自身やご家族のケースが医療過誤に当てはまるのか、責任は追及できるのか、適正な額の損害賠償金を得るためにはどのように請求すれば良いかなどのサポートが受けられます。
- こちらに掲載されている情報は、2023年06月28日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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