ネット上の誹謗中傷。削除請求と投稿した相手を特定する方法

ネット上の誹謗中傷。削除請求と投稿した相手を特定する方法

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

匿名で投稿ができるインターネット掲示板などでは、第三者を誹謗中傷する内容の書き込みがなされることも少なくありません。誹謗中傷の書き込みをされた被害者の方ができる対抗策としては、誹謗中傷の書き込みの削除や、書き込んだ相手を特定して損害賠償を請求することです。

そこで本記事では、インターネット上の誹謗中傷の削除と、書き込んだ相手を特定する方法について解説します。

1. 書き込まれた誹謗中傷を削除する方法

インターネット上に書き込まれた誹謗中傷を削除する方法としては、主に以下の3つの方法が考えられます。

(1)任意の削除依頼

誹謗中傷の書き込みを発見した場合には、当該サイトの管理者に対して削除を請求することができます。多くのサイトは、オンラインフォームやメールフォームを準備しているので、それらを利用して削除依頼を行います。

この方法は、所定のフォームに入力するだけで削除依頼ができるので、費用も時間もかからず非常に簡単な手段です。

削除依頼の方法としては、所定のフォームに従って記載することになりますが、以下のような内容を記載するのが、一般的でしょう。

  • 氏名
  • 連絡先(メールアドレス)
  • 削除したい対象(URLと問題と考える具体的な部分)
  • なぜ削除したいのかの理由

(2)ガイドラインによる削除依頼

サイト内に削除フォームがないなどの場合は、一般社団法人テレコムサービス協会が設置している「プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会」が検討・作成している書式(「テレサ書式」といいます。)のひとつである「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書」を利用し、送信防止措置依頼を行います。

方法としては、所定の書類を作成しサイト管理者やプロバイダに対し郵送します。書類を受け取ったサイト管理者などは、投稿者に対して書き込みの削除の可否を尋ねる照会を行います。投稿者から7日以内に反論がない場合や、反論が不合理だった場合には、サイトの管理者やプロバイダの判断によって書き込みは削除されます。

(3)削除仮処分の申し立て

任意の削除請求やガイドラインによる削除依頼をしたにもかかわらず、削除に応じてもらえないという場合は、仮処分という裁判手続きを申し立てます。最初から裁判手続きを用いても問題ありません。

削除の仮処分は、「仮の地位を定める仮処分」として申し立てを行います。「仮の地位を定める仮処分」は、その発令により、申立人の求める結果が実現することから、「満足的仮処分」と呼ばれ、実質的には訴訟と同程度の実効性があります。

2. 匿名の相手を特定する方法

書き込みをした相手の責任を問う方法としては、損害賠償を請求することが考えられます。そのためにはまず相手を特定しなければいなりません。匿名の相手を特定するには、いくつかの段階を踏む必要があります。

(1)コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示請求

書き込みをした人物を特定するためには、第1段階として、コンテンツプロバイダに対してIPアドレスとタイムスタンプの開示を求めます。

コンテンツプロバイダとは、書き込みがなされたSNSやウェブサイトを運営する主体のことを指します。IPアドレスやタイムスタンプとは、書き込みを行った者が残したネット上の足跡のようなものです。

IPアドレスとタイムスタンプの開示請求の方法には、任意の開示請求と裁判上の開示請求という2つの方法があります。

任意の開示請求の場合には、テレサ書式のひとつである「発信者情報開示請求書」という書式を利用して行います。この書類を受け取ったコンテンツプロバイダは、発信者に対して照会を行い、発信者が同意をした場合には開示がなされます。他方、発信者が同意しない場合でも、コンテンツプロバイダが、権利侵害が明らかだと判断した場合には、開示がされます。

任意に開示がなされない場合には、裁判所の仮処分の手続きを利用して開示を求めます。仮処分では、

  1. 発信者情報開示請求権があること
  2. 早急に決定が出ないと回復困難な損害が生じるおそれがあること

を主張・疎明する必要があります。

一定額の担保金をおさめたうえで、仮処分命令が発令されれば、IPアドレスとタイムスタンプが開示されることになります。

(2)発信者情報開示請求訴訟

上記の手段によってIPアドレスとタイムスタンプが判明した場合、次は、IPアドレスからインターネットサービスプロバイダを調べて、インターネットサービスプロバイダに対して、書き込んだ人物の住所や氏名などの個人情報の開示を求める訴訟を提起します。

インターネットサービスプロバイダとは、インターネット接続サービスを提供し、コンテンツプロバイダへの通信を媒介している通信事業者のことを指します。投稿者はインターネットサービスプロバイダを介さない限り、投稿することはできません。

インターネットサービスプロバイダが判明したら、発信者情報開示請求を行う前に、通信ログの保存を請求すべきです。

通信ログとは、これも投稿者の足跡のようなものです。この通信ログはインターネットサービスプロバイダにおいて、通常3~6か月の間しか保存されておらず、これがなくなってしまうと、足跡がなくなってしまうわけですから、投稿者の情報を開示することができなくなってしまいます。

通信ログの保存請求後、発信者情報開示請求をすることになりますが、上記のとおり、通信ログさえ保存されていれば、発信者の情報は特定しうることから、保全の必要性が認められにくいため、原則として仮処分の申し立てを用いることはできず、訴訟の提起が必要です。

請求が認められ、誹謗中傷をした投稿者の住所氏名が明らかになった後は、その人物に対して、名誉毀損(きそん)などを理由とした損害賠償請求を行います。

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