ネパール人がカレーを作ると犯罪になる?~外国人雇用の落とし穴、入管法の就労資格~

ネパール人がカレーを作ると犯罪になる?~外国人雇用の落とし穴、入管法の就労資格~

2021年12月、新宿で著名なカレー屋が書類送検されたというニュースがありました。罪の名前は「出入国管理及び難民認定法違反」、いわゆる入管法違反で、不法就労助長罪とも呼ばれるものです。

一応補足しておきますと、ここで実際に作っていたのは、カレーではなく肉まんのようです。ただ、問題の本質は変わりません。

食べ物を作っていただけで犯罪? 会社が犯罪者? など、パッとは理解しがたい要素も含まれていたように思います。

一方で、今回問題になっている不法就労助長罪というのは、中小の事業を営む人なら、必ずといって良いほど犯してしまう可能性があるものでもあります。

そんな入管法の問題と犯罪について、今回はお話します。

1. 外国人は自由に活動できない!~学生は学生、コックはコック、通訳は通訳~

外国人は、在留資格という特別な理由により、日本における滞在を許可されている立場です。観光目的での短期滞在、留学、そして何らかの就労など、それぞれ在留資格のカテゴリごとに応じた目的のために日本に滞在し、原則としてそれ以外のことをしてはいけません。

そのため、まず「留学」してきた外国人は、あくまで勉強のために日本に来ているのですから原則として仕事ができず、バイトも資格外就労許可をもらって行っています。

就労資格が(料理技術などの)「技能」であれば、レストランの中でもコックとしてしか働けません。「技術・人文知識・国際業務」に含まれる通訳は、その高い言語能力の専門性を評価されて日本への滞在を認められており(したがって、仕事で少し日本語と外国語を話す程度では、この資格は認められません)、そうでないカレーや肉まん作りの仕事は、日本での滞在を認めた理由と異なるため不法就労ということになるわけです。

このように、外国人は滞在の目的に、厳格に縛られて活動しています。

2. 不法就労助長罪は雇う側の犯罪、そしてうっかりは許されない

上記のように、外国人は自分の在留資格に合わせて、仕事をする際も違反の地雷を踏まないように気をつけなければならないのですが、これは雇う側でも同じになります。

第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関し、あっせんした者
2 前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。

これが、「不法就労助長罪」について定めた「入管法」の条文です。この第2項がくせ者で、要するに資格外労働だったと知らなかったという言い訳は許さず、過失がなかったことを自ら証明しない限り処罰するという内容になります。

そのため、原則として不法就労があれば、雇っていた側も不法就労助長罪になり、ちゃんと在留カードなどをチェックしたのにカードが偽造されていたのでだまされていたなどでなければ、罪を免れられないことになります。法定刑も「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」とあり、決して軽い処罰ではありません。

この様なリスクがあることから、外国人を雇用するものは、ちゃんと在留カードを確認し、また「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律28条」で義務付けられているように、その氏名や在留資格を確認してハローワークに届け出るなどして、しかも資格区分にあった仕事をあてがうなど、厳重な注意が必要になります。

事業が大きければ、末端まで確認が行き届くシステムを作っておく必要がありますし、事業が小さければ小さいで、作業を怠らないようにしなければなりません。私が実際に見てきた事件ですと、日雇いなどで雇用している現場職などで、しばしば、就労資格の確認を怠ってしまうという事態が生じているようです。

3. それでも彼は必要です~外国人なくして事業は回らない~

日本人を雇用するのと比べて、リーガルリスクがあり、確認の手間がかかり、職場内でも自由な仕事内容の変更がしにくい外国人は、法律的には日本人よりも雇いにくい状態にあります。しかし、日本で事業を営んでいくには、外国人の力を借りないわけにはいきません。

以前は、女性や高齢者の雇用参加により労働力人口はまだ微増を続けると予想されていたのですが、直近の総務省による労働力調査によっても、すでに労働力人口の減少も確認されているように、今後もさらに働き手を日本で探すのは困難になって行くからです。

ネパール人にカレーを作らせても良いのか、そんな一見冗談みたいな問い立てを軽々しく考えずに、適法に外国人の人と仕事をしていける環境を作っていきましょう。

杉山 大介
杉山 大介 弁護士

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