養子縁組を解消したらどうなる? 離縁手続きの注意点も解説

養子縁組を解消したらどうなる? 離縁手続きの注意点も解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

養子縁組を解消するためには、離縁の手続きを行う必要があります。

今回は養子縁組の解消について、法的効果・離縁の手続き・注意点などを解説します。

1. 養子縁組の解消とは

(元)配偶者の連れ子などとの養子縁組は、離縁によって解消することができます。

(1)養子縁組解消の効果

養子縁組を解消すると、法律上の親子関係が消滅します。その結果として、以下の法的効果が生じます。

①扶養義務・扶養請求権の消滅

親子関係に基づく扶養義務・扶養請求権が消滅します(民法第877条第1項参照)。元養子が未成年者の場合、元養親は養育費を負担する義務を免れます。

②親権の喪失

元養親は、元養子に対する親権を失います。

③相続権の喪失

元養親と元養子は、互いの遺産を相続する権利を失います。

④復氏

元養子の氏(名字)は原則として、養子縁組前の氏に戻ります(民法第816条第1項)。ただし、養子縁組の期間が7年を超えている場合、元養子は離縁の日から3か月以内に届け出を行うことで、離縁の際に称していた氏を称することができます(同条第2項)。

⑤養親の戸籍からの除籍

元養子は、元養親の戸籍から除籍となります。この場合、元養子は養子縁組前の戸籍に戻るか、または自分を世帯主とする新たな戸籍に所属します。

(2)養子縁組解消には離縁の手続きが必要

養子縁組を解消するには、法律の規定に従って離縁の手続きをとる必要があります。

たとえば、配偶者の連れ子と養子縁組をするケースがよく見られますが、配偶者と離婚しても連れ子との養子縁組が自動的に終了するわけではありません。連れ子との養子縁組についても、解消するには離縁の手続きが必要です。

2. 養子縁組解消(離縁)の手続き

養子縁組を解消する手続きには、主に以下の4種類があります。

(1)協議離縁

養親・養子の間で話し合い、合意に基づいて養子縁組を解消します(民法第811条第1項)。養子が15歳未満の場合は、離縁後に法定代理人となるべき者が、養子に代わって養親と協議を行います。

(2)調停離縁

家庭裁判所の離縁調停を通じて養子縁組を解消します。離縁調停では、民間の有識者から選任される調停委員が養親・養子間の話し合いを仲介し、離縁の合意を目指します。

(参考:「離縁調停」(裁判所))

(3)審判離縁

調停が成立しない場合において、家庭裁判所が相当と認めるときは、職権で調停に代わる審判を行って養子縁組を解消することができます(家事事件手続法第284条第1項)。

(4)裁判離縁

家庭裁判所に離縁訴訟を提起して、判決により強制的に養子縁組を解消します。裁判離縁が認められるのは、以下のいずれかに該当する場合に限られます(民法第814条第1項)。

  1. 相手から悪意で遺棄されたとき
  2. 相手の生死が3年以上明らかでないとき
  3. その他養子縁組を継続し難い重大な事由があるとき

上記の手続きによって離縁が決まった場合、市役所・区役所・町村役場へ「養子離縁届」を提出する必要があります。

協議離縁については、届出日から効力が発生します。調停離縁・審判離縁・裁判離縁につては、調停成立または審判・判決の確定日から効力が生じますが、当該日から10日以内に届け出をしなければなりません。

3. 養子縁組を解消する際の注意点

養子縁組を解消する際には、以下の各点に十分ご留意ください。

  1. 勝手に離縁届を提出するのはNG
  2. 離縁成立までは養育費の負担が発生する
  3. 特別養子縁組の離縁には厳格な要件あり

(1)勝手に離縁届を提出するのはNG

相手が離縁に応じないからといって、役所へ勝手に離縁届を提出することは厳禁です。離縁が無効になるだけでなく、有印私文書偽造罪(刑法第159条第1項)などの責任を問われるおそれがあります。

養子縁組を解消するには、弁護士のアドバイスを受けつつ、法律上の手続きを正しく履践してください。

(2)離縁成立までは養育費の負担が発生する

養子が未成年者の場合、離縁を解消する予定であっても、実際に離縁が成立するまでの間、養親は養子の養育費を負担しなければなりません。

<離縁の効力発生日>

  • 協議離婚
    →届出日
  • 調停離婚、審判離婚、裁判離婚
    →調停成立または審判・判決の確定日

養育費の負担から早く解放されたい場合には、弁護士のサポートを受けながら早期の離縁成立を目指しましょう。

(3)特別養子縁組の離縁には厳格な要件あり

実親との親子関係を消滅させる「特別養子縁組」についての離縁は、家庭裁判所の審判による必要があります(民法第817条の10)。

特別養子縁組の離縁が認められるのは、以下の要件をすべて満たす場合のみです。

  1. 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること
  2. 実父母が相当の監護をすることができること
  3. 養子の利益のために特に必要があると認められること

また、特別養子縁組の離縁の請求ができるのは、養子・実父母・検察官のみとされており、養親側による離縁請求は認められないのでご注意ください。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年05月09日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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