
家族が帰ってこない! 警察に相談すべきケースと捜索願の出し方
警察庁が毎年公表している「行方不明者の状況」によると、令和2年中に全国の警察が受理した行方不明者の届け出受理数は7万7022人でした。昭和31年以降で最小を記録したものの、年間に8万人弱の人が行方不明になっているという現状に驚く方も多いでしょう。
家族が帰ってこないとき、まず考えるのが警察への「捜索願」の提出ですが、なかには「大げさにしないほうがいい」と考えて届け出をためらう方も少なくないようです。
直ちに警察に相談すべきケースや捜索願の出し方を確認しておきましょう。
1. 家族が帰らないとき警察に相談すべきケース
仕事は終わっているはずなのにいつもの時間に帰宅しない、学校からも帰ってこず連絡も取れないといった状況があれば、帰宅を待つ家族としては不安になってしまうでしょう。
もし、ここで挙げるケースに該当する場合は、直ちに警察に相談することをおすすめします。
(1)家庭に悩みがあるとき
警察庁の統計によると、認知症などの疾病関係や原因不明の行方不明を除いた場合、「家庭関係」を原因とした行方不明が構成比16.7%で第1位です。
夫婦・親子の仲が悪いなど、家庭関係の悩みを抱えていた場合は直ちに捜索を開始したほうがよいでしょう。
(2)仕事上のストレスが強いとき
責任のあるポストに就いていて強いストレスを抱えている、事業がうまくいかず悩んでいたといった「事業・職業関係」での行方不明は、構成比10.2%で第2位です。
衝動的に失踪してしまうケースでは手がかりが少なく、本人が通勤用マイカーなどの交通手段や金銭を所持していることも多いため、警察の助けがないと発見が難しくなります。
(3)未成年者が帰らないとき
行方不明全体における若年層が占める割合はきわめて大きく、10歳代は構成比で第2位です。
中学生・高校生の年代では、好奇心が旺盛なうえに親や学校への反発心も高まります。危険な盛り場に足を踏み入れてしまったり、性犯罪・福祉犯罪の被害に巻き込まれたりするケースも目立つので、直ちに捜索を始めるべきです。
2. 行方不明者届(捜索願)を出す手順と必要なもの
家族が行方不明になって警察に届け出をする際は「行方不明者届」を提出することになります。以前は「家出人捜索願(捜索願)」と呼ばれていましたが、平成22年に「行方不明者発見活動に関する規則」が施行され、行方不明者届に改称されました。
行方不明者届を提出する流れや届出に必要なものを解説します。
(1)管轄の警察署に届け出る
行方不明者届は、行方不明者の住所または居所を管轄する警察署で提出します。原則として電話での受理は不可なので、直ちに管轄の警察署を訪ねて届け出をしましょう。
自宅の近くに交番・駐在所がある場合でも、行方不明者届の正式な受理は警察署で行います。二度手間を避けるためには警察署に直行すべきですが、警察署が遠い、正式受理よりも手配を急ぎたいといった事情がある場合は、最寄りの交番・駐在所を訪ねたほうがよい場合もあります。
(2)本人の顔写真・画像が必須
行方不明者届は警察署が所定の様式を用意しているので、事前に作成する必要はありません。行方不明者の氏名・住所・生年月日・勤務先や学校・電話番号・身体特徴・人相着衣・使用車両の種類やナンバーなど、様式に従ってできるだけ詳しく記載しましょう。
行方不明者届の提出にあたって特に重要なのが、行方不明者本人の顔写真や画像です。捜索の手がかりになるので、できるだけ鮮明で本人の特徴をとらえた写真を用意しましょう。
外出先からの届け出で顔写真や画像が用意できていない場合は、先に警察署で行方不明者届を提出することを優先させましょう。まずは身体特徴や服装などから手配して捜索を急いでもらい、追って顔写真・画像などを提供したほうが早期発見につながります。
(3)行方不明者として届け出る際の注意点
行方不明者届は、できる限り早い段階で提出すべきです。
警察庁の統計によると、行方不明者届の受理から所在確認までの日数が2日~7日になってしまうと、死亡して発見されるケースが増えてしまいます。
- 受理当日に発見できた場合……所在確認3万3158人・死亡確認910人
- 受理から2日~7日で発見した場合……所在確認2万702人・死亡確認1627人
この数字を見ればわかりますが、発見が早いほど生存率も高まります。
行方不明者届の提出が早ければ生存して所在が確認できる可能性も高まるので、届出をためらうべきではありません。
なお、自殺や犯罪に巻き込まれる危険度が低いケースでは、行方不明者届を提出しても積極的な捜索は期待できません。本人が望んだうえでの家出や失踪は、通常のパトロールや職務質問、交通取り締まりなどの警察活動を通じて発見に努めるにとどまります。
とはいえ、遠方に失踪していても、交通違反・交通事故や何らかのトラブルを起こして警察沙汰になり、発見につながる可能性もゼロではありません。積極的な捜索が期待できない状況でも、やはり行方不明者届は提出しておくべきでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2022年02月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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