アルコール依存の家族と縁を切りたいときはどうすればいい?

アルコール依存の家族と縁を切りたいときはどうすればいい?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

アルコール依存症は本人だけでなく家族にも苦しみをもたらします。今回はアルコール依存症の家族を持つ方に向けて、法的な対処法を解説します。

1. アルコール依存症の概要と治療法

アルコール依存症の概要を把握しておきましょう。

(1)アルコール依存症とは?

アルコール依存症には以下の特徴があります。

  • 飲酒量をコントロールできない
    アルコール依存症になると、自分で飲酒量をコントロールできなくなります。
  • 強烈な飲酒欲求が生じる
    アルコール依存症の方は、強烈にお酒を飲みたくなります。

(2)アルコール依存症の診療ガイドライン

WHOはアルコール依存症について、以下の通り診断ガイドラインを定めています。
これらの症状がある場合は、アルコール依存症のおそれがあります。アルコール依存症である場合には、ご家族だけで対処しようとせずに、適切な治療を受けることが重要です。

  • 飲酒したいという強い欲望あるいは強迫感
  • 飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難
  • 禁酒あるいは減酒したときの離脱症状
  • 耐性の証拠(例えば、少量の飲酒では酔わなくなる等)
  • 飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるを得ない時間やその効果からの回復に要する時間が延長
  • 明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒

(3)アルコール依存症の一般的な治療法

アルコール依存症の治療の多くは、入院して専門医の管理下にて行われます。まずは本人に病気であることを認識させて、断酒を開始します。断酒中は薬を用いることもあります。

アルコール依存症の入院治療は1か月程度で終了することもありますが、アルコール依存症との戦いは長期間続くものです。本人だけでなく家族による継続したサポートが欠かせません。

2. アルコール依存症で家族が手に負えない場合の対処法

アルコール依存症の家族と同居をしている場合、さまざまな耐えがたい状況におそわれることがあります。居室内で失禁したり、幻覚が見えたり、暴力をふるったりといった行動は珍しいことではありません。このようなときの対処法は以下の通りです。

(1)警察への通報

飲酒をして錯乱した状態になり手に負えない場合には、警察へ通報してください。

(2)救急搬送

錯乱状態に陥っているときは救急車を呼んで精神科病院等に搬送してもらうことができます。医師の診断にもよりますが、強制保護入院という措置を講じることも可能です。

(3)役所との連携

役所や保健所といった公的機関に相談をすることで、サポートを受けられることもあります。家族だけで対処しようとすると家族も疲弊してしまいますので、ご家族だけで抱え込まないことが大切です。

3. 耐えられずに縁を切りたいと考えたときにやるべきこと

アルコール依存症の家族の世話に疲れ果て、「もう縁を切りたい」と考えている方に向けてできることを解説します。

(1)アルコール依存症患者が配偶者の場合

アルコール依存症患者が配偶者の場合は、離婚によって縁を切ることができます。重度のアルコール依存症であれば、法律上離婚が認められる理由になり得ます。

話し合いで離婚が成立しない場合は、調停を申し立て、それでも話し合いが成立しなければ訴訟に以降します。訴訟で離婚をする場合は、アルコール依存症で生活に支障を来していることを証拠として裁判所に提出しなければなりません。アルコールを摂取して暴れている様子の動画や音声データ、日々の日記、メモ書きなども証拠となり得ます。

アルコール依存症を理由に離婚をする場合、具体的な事情によっては、慰謝料の請求を検討しても良いでしょう。

(2)アルコール依存症患者が親の場合

親がアルコール依存症の場合、法的に縁を切る方法はありません。戸籍をわける「分籍」という手続きもありますが、分籍をしても法律上の親子関係を断てるわけではありません。

物理的に距離をおくために引越しをした上で連絡先を知らせなければ、事実上の関係を断つことはできます。ただし、住民票を閲覧されれば住所は発覚してしまいます。住民票の閲覧を制限の手続きとしては、「住民基本台帳事務における支援措置」というものがありますので、役所等に相談をしてみましょう。

(3)アルコール依存症患者が子どもの場合

アルコール依存症患者が成人した子どもの場合も親の場合と同様に、法的に親子関係を断つ方法はありません。したがって、引っ越しをして物理的に距離をとり「住民基本台帳事務における支援措置」を検討することになります。
また、いずれ相続するであろう財産がある場合、ケースによっては、「相続廃除」の手続きも検討するとよいでしょう。

弁護士に相談すれば、状況を確認した上で、法律的にできることを的確にアドバイスしてくれます。まずは相談してみてはいかがでしょうか。

弁護士JP編集部
弁護士JP編集部

法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2021年04月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

お一人で悩まず、まずはご相談ください

まずはご相談ください

家族・親子に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?

弁護士を探す

家族・親子に強い弁護士

  • 藤田 奈津子 弁護士

    みとみらい法律事務所

    茨城県 水戸市
    茨城県水戸市南町1-3-27 水戸ビル2階
    • 法テラス利用可

    電話対応時間はAM9:30〜PM5:30(PM0:00〜PM1:00を除く)です

     
    注力分野

    後見申立・財産管理や死後事務・親子や兄弟関係に関する問題(認知,親子関係不存在,扶養義務)など,家族や親子に関する様々なご相談を受け付けております。

  • 村田 佳久 弁護士

    ベリーベスト法律事務所 大宮オフィス

    埼玉県 さいたま市大宮区
    埼玉県さいたま市大宮区大門町三丁目42番5号 太陽生命大宮ビル9階
    「大宮」駅 徒歩5分
    • 当日相談可
    • 休日相談可
    • 24時間予約受付
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • 初回相談無料

    ※初回相談無料は、ご相談の内容によって一部有料となる場合がございます。

     

  • 大城 拓摩 弁護士

    ベリーベスト法律事務所 浜松オフィス

    静岡県 浜松市中央区
    静岡県浜松市中央区鍛冶町319-28 遠鉄鍛冶町ビル11階
    JR「浜松駅」メイワン口から徒歩5分
    • 当日相談可
    • 休日相談可
    • 24時間予約受付
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • 初回相談無料

    ※初回相談無料は、ご相談の内容によって一部有料となる場合がございます。

     

  • 萩原 達也 弁護士

    ベリーベスト法律事務所

    東京都 港区
    東京都港区六本木一丁目8番7号 MFPR六本木麻布台ビル11階
    東京メトロ南北線[六本木一丁目]2番出口より徒歩3分
    東京メトロ日比谷線[神谷町駅]4a出口より徒歩8分
    • 当日相談可
    • 休日相談可
    • 24時間予約受付
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • 初回相談無料

    ※初回相談無料は、ご相談の内容によって一部有料となる場合がございます。

     

  • 吉﨑 眞人 弁護士

    ベリーベスト法律事務所 奈良オフィス

    奈良県 奈良市
    奈良県奈良市西御門町27‐1 奈良三和東洋ビル5階
    近鉄「奈良駅」より徒歩1分
    JR「奈良駅」より徒歩14分
    • 当日相談可
    • 休日相談可
    • 24時間予約受付
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • 初回相談無料

    ※初回相談無料は、ご相談の内容によって一部有料となる場合がございます。