未成年の損害賠償責任。校内のケンカで子どもが大けがを負ったら?

未成年の損害賠償責任。校内のケンカで子どもが大けがを負ったら?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

子ども同士のけんかで自分の子どもが怪我をした場合、軽症なら治療をして終わりということも多いでしょう。しかし、怪我が重い場合は、そのまま済ませるわけにもいきません。ましてや、後遺症をもたらすような大怪我の場合は、損害賠償請求が問題となります。

さて、相手が未成年者の場合、損害賠償請求はどのように進めればいいのでしょうか。

1. 未成年同士のトラブルに対して損害賠償は請求できる?

子ども同士の怪我では、当事者が2人とも未成年者というケースがよくあります。この場合、未成年である相手に法的な責任を問うことができるのでしょうか。

(1)相手の子どもに責任能力が認められない場合

加害者が未成年の場合、相手に責任能力があるかどうかで、賠償請求の相手が異なります。

民法上、未成年者は、仮に他人に損害を与えても、責任能力がない場合には、損害賠償義務を負わないと定めています(民法712条)。責任能力とは、自分の行った行為について、法的な責任を負う可能性があることを理解できる力です。

責任能力が認められる年齢は、法律上は明確に定まっていません。過去の裁判例では、おおむね11~13歳程度で責任能力が認められています。したがって、わが子に怪我をさせた子どもが11歳未満の場合は、子どもには責任能力が認められない可能性が高くなります。

その場合、怪我をさせた本人には損害賠償を請求することはできません。このように、責任能力がない者のことを責任無能力者といいます。

加害者が責任無能力者である場合、被害者が泣き寝入りを強いられるわけではありません。責任無能力者が加害行為をした場合、監督する義務を負う者が、原則として被害者に対して賠償責任を負うことになります(民法714条)。

ただし、下記の場合は、監督義務者が賠償責任を負いません(民法714条但書)。

  1. 監督義務者が監督を怠らなかったとき
  2. 監督すべき義務を怠らなかったとしても損害が生ずべきであった場合

子どもの監督義務者は親権者です。したがって、上記の2点に該当するような例外を除き、被害者は相手の親に対して賠償を求めることができます。

(2) 相手の子どもに責任能力が認められる場合

相手の子どもに責任能力が認められる場合は、加害者である相手の子ども本人が損害賠償義務を負います。

ただし、子ども自身には経済力がないため、相手の親に対しても損害賠償請求をした方が確実です。相手の親に損害賠償義務が認められるためには、相手の親自身が一般的な不法行為責任(民法709条)の要件を満たす必要があります。

(3)刑事上の責任

相手に怪我をさせた場合、民事上の責任とは刑事上の責任が問題になります。加害者が未成年者の場合は、14歳未満か14歳以上かどうかで違いがあります。

14歳未満の子どもが刑罰法令に触れる行為をした場合には、「触法少年」と呼ばれます。刑法第41条では刑事責任年齢を14歳未満と定めているため、触法少年は罪に問われることはありません。

触法少年にも少年法が適用されますが、少年法よりも児童福祉法の措置が優先されるため、事件を起こすとまずは児童相談所へ通告・送致されます。そして、児童相談所が少年を家庭裁判所の審判に委ねるほうがよいと判断すると、触法少年は家庭裁判所へ送致されます。

刑罰法令に触れる行為をした14歳以上の少年は、「犯罪少年」と呼ばれます。犯罪少年は刑法41条の刑事責任年齢に達しているため罪に問われますが、成人と同じように刑罰を受けるのではなく、少年法にもとづく処分を受けます。

事件の後、直接家庭裁判所へ送致されるか、検察庁へ送致されたうえで家庭裁判所へ送致されます。ただし、一定の重大な罪を犯した犯罪少年は、家庭裁判所から検察庁へ送り返され、刑事裁判を受ける場合があります。

2. 損害賠償の請求方法は?

実際に加害者側に対して損害賠償請求をする場合、どのような手続きをとるのでしょうか。

(1)親同士の話し合い

子ども同士のトラブルでは、まず親同士の話し合いから始めることが一般的です。当事者が未成年の場合、親権者である親が子どもに代わって交渉を行うことになるからです。

親同士で話し合い、損害賠償金の支払いについて合意ができれば、合意書等の書面を作成します。あとからトラブルが再燃しないように、必ず作成するようにしましょう。

(2)民事調停

親同士で交渉をしても、言い分が食い違ったり話し合いができない場合もあります。そんな場合は、訴訟手続きが思い浮かぶかもしれませんが、子どもを裁判に巻き込むのは抵抗があるという人もいます。

裁判では証人尋問などが行われる可能性もあり、子どもを法廷に立たせるのは親として望まないという方もいらっしゃるかもしれません。

そんな場合は、裁判所の民事調停という方法があります。調停では、裁判所で調停委員という中立の立場の人が話し合いを進めてくれます。

なお、この場合も、双方の親が法定代理人として法的手続きを進めることになります。

(3)損害賠償請求訴訟

調停でも合意ができなければ、裁判になります。裁判では、訴える側が原告、訴えられる側を被告と呼びます。

通常は、相手の子ども本人と両親を被告にして、損害賠償を求めて提訴することになります。裁判では、お互いが証拠を出し合って事実関係や、賠償額について裁判所が判断します。

判決に納得がいかなければ、控訴することができます。双方が控訴しなければ2週間で判決が確定し、事件は終了となります。

子ども同士のトラブルは、子どもにとっても親にとっても大きな負担となります。特に、子どもの怪我が大きい場合は、交渉や賠償の請求で悩むことも多いでしょう。

どうしたらいいか戸惑う場合は、信頼できる弁護士などに相談しながら、事情に沿った解決方法を探っていくことをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2022年05月04日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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