債権者からの差し押さえを回避する方法はある?

債権者からの差し押さえを回避する方法はある?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

借金や税金の支払いが厳しい方にとって、債権者に財産を差し押さえられかねない事実は非常に不安に感じることではないでしょうか。

本コラムでは、財産の差し押さえはどのようなケースで行われるのか、どのくらい支払いを滞納していると差し押さえを受けるのか、差し押さえを回避する方法はあるのかなどの疑問にお答えします。

1. 財産の差し押さえとは

財産の差し押さえとは、借金の返済などの債務を果たさない債務者の財産を、債権者が法的手続きを通じて強制的に回収することです。この強制執行は、民事執行法に基づき、裁判所が発する差し押さえ命令に従って行われます。具体的には、以下のケースが財産を差し押さえられる典型例です。

  • 借金の滞納
  • 税金や年金、健康保険料、公共料金などの滞納
  • 養育費の未払い

(1)差し押さえ対象の財産

差し押さえの対象になるのは、以下の財産です。

  • ボーナスも含む給与の債権
  • 預貯金の債権
  • 生命保険の請求権や解約返戻金などの債権
  • 不動産や賃料収入などの債権
  • 66万円を超える現金や自動車、美術品、貴金属やブランド品などの価値ある動産

債権とは簡単に言うと、特定人が他方の特定人に対してお金などの利益を請求できる権利のことです。たとえば、「給与債権を差し押さえられた」という場合は、債務分の給与を受け取る権利が債権者に差し押さえられたことを意味します。

ただし、法律上、債務者にも最低限の生活を送る権利があるので、生活必需品や仕事に必要な道具、宗教用具などに関しては差し押さえの対象になりません。給与に関しても手取り金額の1/4までなど、制限がされています。

また、差し押さえの対象になるのは、基本的に債務者本人の財産のみで、家族名義の財産には及びません。ただし、家族と共有名義の財産に関しては差し押さえの対象になるおそれがあります。

(2)差し押さえの間接的な影響

差し押さえによって債務者が受けるダメージは、単に財産が回収されることだけではありません。たとえば、給与債権が差し押さえられる際には、勤務先にその連絡が行くので、自分が借金などを滞納していたことが職場にバレてしまいます。これは自身の社会的信用に関わる問題です。

また、不動産や動産の差し押さえなどのために裁判所の執行官が自宅へ訪問するケースもあり、この場合は家族や近所に差し押さえがバレてしまうおそれがあります。さらに、差し押さえされるほど借金の滞納をしていると、信用情報機関のブラックリストに登録されてしまい、クレジットカードやローンの利用・契約が困難になります。

(3)差し押さえは予告なくされる

差し押さえに至るまでには、借金や税金の督促などが債権者から送られてきます。これらに応じないでいると差し押さえが行われるわけですが、差し押さえそのものは予告なく行われるのが一般的です。

これは差し押さえを予告することで、債務者が財産を隠したり、どこかに移したりすることを防ぐためだとされています。なお、差し押さえがされるまでの大まかな期間は、多くが督促から2~3か月後程度です。

2. 差し押さえを回避する方法

差し押さえを回避する方法は以下のように複数あります。

(1)借金を一括返済する

最も効果的なのは、借金の返済や必要な支払いなどを即座に済ませてしまうことです。これは経済的に難しいことも多いと思われますが、差し押さえに付随するさまざまな不都合を一気に解消できる手段でもあります。

(2)支払督促や訴状に対応する

裁判所から届いた支払督促や訴状に対応することで、回避できる可能性があります。支払督促の内容に異議がある場合は、2週間以内に異議申立書を提出することが必要です。裁判では、債権者と分割払いや減額などの対応は可能かといった形で返済計画について交渉し、和解の可能性を探ります。

(3)税金などの場合は猶予・減免申請を行う

住民税や年金、保険料などの場合は、経済状況などに応じて支払いを猶予もしくは減免する制度を利用できる可能性があります。税務署や役所、年金事務所などに連絡して確認してみましょう。

(4)債務整理を行う

債務の負担がどうしても困難な場合は、債務整理を行うのもひとつの方法です。債務整理の方法には、任意整理・個人再生・自己破産という3つの方法があります。どの方法を採ったとしても、借金の返済や差し押さえを一時的に停止することが可能です。

①任意整理

裁判所を通さずに債権者と直接交渉を行い、返済条件を見直してもらう方法です。利息のカットや長期的な分割払いの許可などによって、債務負担を可能な範囲にまで下げてもらうことを目指します。利息の過払い金がある場合は、それを返還請求することも可能です。ただし、任意整理に応じるかは債権者の裁量に委ねられており、多くの場合、個人再生や自己破産ほど債務を減額する効果は望めません。

②個人再生

裁判所から借金を返済するのが困難であることを認めてもらい、借金を大幅に減額してもらった上で、3~5年程度での完済を目指す方法です。この方法を採った場合、所定の条件を満たせば、住宅などの財産を維持できます。

③自己破産

裁判所を通じて借金の返済が不可能であることを認めてもらい、債務を免除してもらう方法です。自己破産をすれば、多額の借金も0になるので非常に効果は大きい方法ですが、ローン返済中のものも含めて価値ある財産が処分されたり、信用情報機関のブラックリストに登録されたりとデメリットも少なくありません。

3. 債務問題は弁護士に相談しよう

差し押さえに対して上記のような対抗策を講じる際は、弁護士に相談するのがおすすめです。

(1)弁護士に相談するメリット

まず、弁護士に現状を相談すれば、差し押さえに対してどのように対応すればよいのか、法的および実務的な観点からアドバイスを受けられます。また、差し押さえ前であれば、弁護士を代理人に立てることで、債権者が自分に直接督促状を送ったり、取り立てに来たりすることを制限可能です。

(2)万が一差し押さえされても弁護士に相談を

もしもすでに財産の差し押さえが始まっている場合でも、弁護士に相談することは決して無駄ではありません。たとえば、先に紹介した債務整理は、すでに財産の差し押さえがされている状況でも利用できる方法です。

ただし、どの方法で債務整理をするにしても、債権者と交渉したり、裁判所で必要な手続きをしたりと、一般の人には難解な作業が伴います。こうした債務整理に伴う手続きに関しても、弁護士はサポートや代行が可能です。

差し押さえの危機に直面したときに避けなければならないのは、現状を見て見ぬふりして放置したり、不正な手段で差し押さえから逃れようとしたりすることです。適正な方法で債務負担を軽減できるように、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年05月15日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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