正当防衛はどこまで認められる? 必要な条件とは
自分の生命や財産などを守ることは、人間の基本的な権利のひとつです。しかし、自分がとっさにとった防衛行動が法的に正当なのか過剰なのかを、冷静に判断するのは難しいことでしょう。
本記事では、正当防衛の成立条件と、過剰防衛と見なされる可能性のあるケースについて解説します。
1. 正当防衛が認められるための条件
そもそも正当防衛とは、他者からの不法な攻撃に対して、自分や他人の生命・財産などを保護するための行動です。例えば、「刃物で切りかかってきた相手に殴って反撃する」などが、典型的な事例として挙げられます。
他者への暴力行為は、通常ならば暴行罪や傷害罪などに該当します。しかし、裁判などでそれが正当防衛であると承認された場合は、刑事罰の対象外です。では、正当防衛だと承認されるためのポイントとして、どのようなものが挙げられるでしょうか。
(1)正当防衛の4つの条件
正当防衛が成立する条件は、主に4つ存在します。
①急迫不正の侵害があること
簡単に言えば、現在進行形で今まさに犯罪被害に遭う危機的状況に陥っていることを意味します。自分の権利を不法に侵害されそうになった際に許されるのが正当防衛です。したがって、前提として自分が違法な被害に遭っている、または遭いかけていることが必要になります。
②防衛を目的としていること
正当防衛は、あくまでも自分や他人を守るための行動です。単に相手へ怒りや復讐(ふくしゅう)心をぶつけるために反撃した場合などは該当しません。
③防衛せざるを得ないこと
危険から逃れるためには、反撃以外に方法がない状況を指します。つまり、逃げたり警察に通報したりするなど、他の方法で対処することも可能だったのに、不要に反撃した場合は該当しません。それゆえ、暴力や盗みなどの不法な行為を終えて立ち去ろうとしている相手を追いかけ、後ろから殴りかかった場合なども、正当防衛を主張することは難しいです。
④防衛行動の手段や程度が妥当であること
反撃が適切な範囲内であることを意味します。例えば、突然襲ってきた相手を殴り返すことは、正当防衛の許容範囲です。しかし、その後も地面に倒れ込んだ相手を何度も執拗(しつよう)に蹴り飛ばした場合は、必要以上に攻撃していると見なされてしまいます。
2. 正当防衛にならないケースは?
上記のように、正当防衛であると承認されるためには、細かな条件が必要です。それにより、自分では正当防衛のつもりだったのに、何らかの罪に問われてしまうことも十分起こり得ます。それが、正当防衛の度を超える「過剰防衛」という概念です。
(1)過剰防衛とは
不法行為に対する防衛行動が、必要以上に強い場合を指します。前述した「倒れ込んだ相手を何度も蹴り飛ばす」の例も、過剰防衛の一種です。
自分の身を守るためだけなら、突き飛ばして相手が転んだ段階で、一目散に逃げるなどの手段をとれるはずです。しかし、そうせずに何度も相手へ追い打ちをかけるのは、「やりすぎ」と見なされてしまいます。
あるいは、「素手の相手に銃器で対抗する」なども、過剰防衛に該当します。要するに、危機の度合いに対して、反撃の手段が過激すぎるという見方です。ただし、その反撃が過剰であるかどうかは、実際にはケース・バイ・ケースになります。
例えば、高齢者を屈強な若者が襲ってきた場合、体力に劣る高齢者が武器を使って反撃しても、やむを得ないと判断されるかもしれません。したがって、裁判における過剰か否かの線引きは、被害者と加害者の特性や当時の状況などを、総合的に考慮したうえで行われることが通例です。
(2)正当防衛にならない可能性があるケース
上記の通り、正当防衛と過剰防衛の線引きはケース・バイ・ケースですが、大まかな傾向はあります。その代表例を以下で紹介します。
①ケンカが発端になったケース
ケンカは基本的に対等な立場で行うものなので、どちらかが一方的に権利を侵害されている状態とは見なされない可能性があります。したがって、ケンカで相手を害した場合に、正当防衛は認められにくいといえます。
②原因が自分にあるケース
自分が危険を招いたと判断される場合も不利になります。例えば、自分から街中で誰かに因縁をつけたところ、相手から攻撃を受け、それに対してさらに殴る蹴るなどの反撃を加えたパターンです。
③加害行為で相手を死亡させてしまったケース
上記で紹介したように、正当防衛か否かは、反撃の手段や程度が自分の直面している危機に対して、妥当であるかがポイントです。その点においては、相手を殺害するしかないほど追い詰められた状況だった、と証明することは簡単ではありません。
3. 正当防衛として認められなかった場合はどうなる?
自分の行動が正当防衛であると主張しても、それが承認されなかった場合は、法的な罰則を受けなければなりません。例えば、相手にけがを負わせてしまったら、傷害罪が適用され、15年以下の懲役または50万円以下の刑事罰が科されます。
とはいえ、過剰防衛と承認された場合は、情状酌量の余地があるとして、通常の犯罪行為より刑が減軽または免除される場合があります。逆に、過剰防衛と承認されない場合は、通常の犯罪行為と同じ扱いになります。
こうした法的な問題を抱えている方は、なるべく早めに弁護士へ相談することがおすすめです。自身の行動が正当防衛か過剰防衛かは、多角的に判断しなければならない複雑な問題なので、法律の専門家である弁護士のサポートは必須です。
弁護士の協力や弁護によって、その防衛行動がどうしても必要だったと説得力を高めることで、無罪放免や減軽などを望みやすくなるでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年09月28日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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