身代わり出頭は犯罪? 捜査かく乱で罪が重くなる?
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身代わり出頭は犯罪? 捜査かく乱で罪が重くなる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

罪を犯したものの、事件があったことを隠しとおしたり、逃げたりするのは不可能だという状況になると、誰かを身代わりにして自分は罪を逃れようという考えに至る人がいます。

家族、友人、上司といった立場の人から依頼されてしまうと、断ることができず「身代わり出頭」を受け入れてしまうかもしれません。

もし身代わり出頭を依頼されているなら、当然ですが、毅然(きぜん)として断るべきです。もちろん、身代わり出頭を大切な人に頼んでもいけません。

身代わり出頭で問われる罪や刑罰について確認していきましょう。

1. 「身代わり出頭」とは?

まずは「身代わり出頭」とはどのような行為なのかを、実際の事例も交えながら確認していきます。

(1)身代わり出頭の意味

身代わり出頭とは、事件の真犯人の身代わりとして、警察などの捜査機関に自ら犯罪を行ったと名乗り出ることをいいます。

真犯人ではないのに捜査機関による取り調べや刑事裁判を経て刑罰を受けることになるので、結果として罪を犯していない人が刑罰を科せられてしまう「冤罪(えんざい)」へとつながる行為です。

(2)身代わり出頭は通用する? 実際のケース

ドラマや小説といったフィクションの世界では、大切な人をかばって身代わり出頭をして刑罰を受け入れるといった描写が登場することがあります。

しかし、冷静に考えてみれば、捜査が進むにつれてつじつまの合わないことも増えてくるので、身代わり出頭という軽率な行為が本当に通用するのか、疑問を感じるでしょう。

捜査機関は「裏の裏」まで徹底的に調べ上げてきます。犯行の方法や事前準備、犯行後の行動まで、証拠に照らした取り調べを受けることになるので、厳しい追及によって身代わりであると発覚する可能性はきわめて高いというのが現実です。

実際に身代わり出頭を依頼しても、次のように警察の捜査によって発覚してしまうでしょう。

  • 無免許運転で追突事故を起こした男が、同僚に身代わり出頭を依頼したが身代わりだったと発覚
  • 飲酒のうえで交通死亡事故を起こした男が、部下を身代わりに出頭させたが捜査で発覚
  • 駐車違反の取り締まりを受けた男が、妻に身代わり出頭を依頼し出頭させたが妻の受け答えが不審だったため発覚

2. 身代わり出頭は犯罪! どのような罪に問われる?

真犯人の身代わりに出頭し、捜査機関に事実が発覚してしまうと「実は身代わりでした」というだけでは済ませてもらえません。身代わり出頭は、その行為自体が犯罪になるのです。

(1)身代わりになった人は「犯人隠避(いんぴ)罪」

身代わり出頭は、刑法第103条の「犯人隠避罪」にあたる行為です。先に紹介した事例でも、身代わりに出頭した人にはすべて犯人隠避罪が適用されています。

本罪は、罰金以上の刑罰が定められている罪を犯した者を蔵匿・隠避した者を罰する犯罪です。「蔵匿」とは隠れる場所を提供して犯人をかくまうこと、「隠避」とはそれ以外の方法で発見や逮捕を免れさせることをいいます。

身代わりとして出頭すれば、捜査機関の疑いの目は当然自分に向けられるので、犯人隠避罪の成立は避けられません。法定刑は3年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

もっとも、犯人の親族については、犯人を庇うことが仕方がないという庇護的観点から、刑法105条により「その刑を免除することができる」とされています。

(2)身代わりを依頼した人は犯人隠避罪の「教唆犯」

犯人隠避罪は「犯人をかくまって捜査をかく乱したことに対する罪」なので、処罰されるのは身代わりとして出頭した人です。

しかし、本人がすすんで「私が身代わりになってあげるから逃げて」などと身代わりを名のり出たという状況でなければ、本当に悪いのは「身代わり出頭を依頼した人」でしょう。

もちろん、身代わり出頭を依頼した人も不問というわけにはいきません。本来問われるはずだった罪に加えて、犯人隠避罪の「教唆犯」として処罰されます。

教唆犯とは刑法における共犯のひとつで、犯罪をはたらく意思をもっていなかった人をそそのかし、犯罪を決意させた人を罰するものです。

刑法第61条1項は、教唆犯について「正犯の刑を科する」と定めており、教唆犯は実際に犯罪をおこなった本人と同じ罪で処罰されます。むしろ、裁判官の判断次第では行為の悪質性から教唆犯のほうが厳しい刑罰を科せられる可能性も高いでしょう。

「身代わり出頭」は、依頼した人も、依頼を受けて実際に身代わりとして出頭した人も、どちらも厳しく処罰されます。

どうしても断りにくい相手から身代わり出頭を依頼されて困っている、大切な人に身代わり出頭を依頼したが反省しているので警察に真実を告白したいなど、身代わり出頭に関する悩みがある方は弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年12月09日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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