同意があっても犯罪になり、時に逮捕もされてしまう児童ポルノ ~兵庫の16歳高校生逮捕報道を受けて~
  • 2022年06月03日
  • 犯罪・刑事事件

同意があっても犯罪になり、時に逮捕もされてしまう児童ポルノ ~兵庫の16歳高校生逮捕報道を受けて~

2022年5月20日金曜夜、ニュースが飛び込んできました。2022年2月中旬ごろ、18歳未満と知りながら、会員制交流サイト(SNS)で知り合った当時16歳の女子生徒とのみだらな行為を自身のスマホで動画撮影し、保存した疑いで、16歳の高校生が逮捕されたのです(サンテレビ)。神戸新聞によれば、当時高校生の男女は交際中でもあったとのことです。

このニュースは少なからず社会に衝撃を与えたようで、なぜ男子生徒だけ逮捕されるのかという疑問の声もSNS上などで見られました。この疑問には法律と事実についての誤解がみられ、もう少し解説が必要ではないかと考えました。

そこで、本件では最新の事例を通して、18歳未満の児童の性に関する法規制と、逮捕を巡るルールについて解説します。

1. 今回問題となったのは児童ポルノ製造である、淫行・青条例ではない

第一として、今回問題となっている犯罪は、児童ポルノを製造したというものであり、性交渉そのものについて、犯罪として扱っているわけではないという点の確認が必要です。

つまり、今回動画や画像の撮影をしたのは、あくまで男子生徒側だけであったから、男子生徒側だけが犯罪として問題にされているのであろうということが、今回の事件の取り扱われ方から推察できます。

18歳未満の性交渉について規制した、いわゆる「青条例」の規定からすると、理論上は性交渉についても犯罪として問題にしうるのですが、今回の逮捕では問題にされていません。今回適用されている法律が何であるかというのは、まず確認すべきポイントです。

2. 18歳未満に、ポルノ撮影の同意能力はない ~同意してもらっても犯罪になる児童ポルノ~

「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」という正式名称の法律の中に、児童ポルノ製造という行為が、犯罪として規定されています。この製造というのは、自らカメラで撮影する行為だけでなく、相手に頼んで自撮りしてもらったりする行為も含みます。したがって、SNS上で「~な画像が欲しい」と求め、18歳未満の児童である相手が送ってくれただけでもこの犯罪は成立しますし、自分でわいせつな行為をしている最中に撮影したら、当然犯罪行為にあたります。

このように、同意で正当化させないルールになっている理由は、18歳未満の判断能力が不完全であると考えられているからです。確かに、その場で撮影し画像や動画を提供することには同意していますが、画像や動画が後々にまで残るという特徴まで、どこまで理解していたか。

ずっと残り続け、時に過失でも流失し、流失せずともいずれ将来嫌いになった相手に保持され続けるかもしれないリスク。少なくとも法律は、18歳未満の児童については、このリスクに対する理解は全く不十分で、刑事罰によって保護しなければいけないと考えています。

この記事を読んでいる方々は、交際中だから、仲良いからと画像や動画をもらい撮影すること自体が犯罪として扱われていることを理解し、またその背景にある画像や動画へのリスクについて理解し、成人か児童かに関わらず、画像化・動画化という行為について慎重な考えも持ってほしいところです。

3. 逮捕するのは当たり前ではない ~推測できる背景事情~

とはいえ、逮捕するというのは当たり前な扱いではありません。逮捕は、犯罪があっても当然にするものではなく、証拠隠滅や逃亡を防ぐために行うものです。画像や動画は、押収して削除すればリスクを軽減できますし、犯罪の中では決して重いものでもないため、証拠隠滅や逃亡のおそれまでを当然に認めることはありません。

ましてや、今回の当事者は高校生です。逮捕によって学校に行けなくなることにより、今後の生活や成長に与える影響は軽視できず、あくまで少年事件は少年の健全な将来のために行う手続きであることからも、逮捕の判断には慎重さが求められます。

それでは、今回逮捕されてしまったのはなぜでしょうか?

逮捕は裁判所の許可に基づいて行うために、ここでは一応、証拠隠滅や逃亡を防ぐ必要があったと仮定します(なお、残念ながら、裁判所の審査が機能していない事件があるのも事実です)。そうすると、何らかの証拠隠滅の危険性があったと考えられます。今回のような事件で1番考えられるのは、女子生徒に対し何らかの危害が加えられる危険性があったというものです(女子生徒の供述も、証拠です)。

たとえば、当時撮影された画像や動画を巡って、後にトラブルになっていたということが考えられます。交際を続けないと画像や動画をどうにかするというやり取りがあったりすれば、それは強要としての側面も強くなってきて、逮捕することの多い犯罪類型に近づいてきます。

これらはあくまで推測ですが、報道では公開されないような事情があったものと、私は多くの事件に触れてきた経験から考えています。そして、身柄拘束はあくまで、問題を防ぐ必要があるから行う以上、何らかの懸念がなくなれば、釈放される可能性も十分にあります。

4. 事件は始まったばかりである

いずれにしても、今回逮捕された高校生は、今後自分のやったことの何が問題であったのかを家庭裁判所で考えていくことになると思いますし、当然に逮捕される犯罪類型ではないことから、事件途中での釈放も求めて行くことになると思います。この先は報道がされないと思いますが、非常に多くの手続きを、身柄拘束や少年法のルールに従って考えていくことになります。

もし、この記事を読んでいる子どもを持つ親御さんがいましたら、このように報道だけからはわからない点も多々ありますので、もしお子さんが当事者となってしまった場合、すぐ弁護士に相談することをおすすめします。

杉山 大介
杉山 大介 弁護士

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年06月02日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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