- (更新:2021年07月26日)
- 犯罪・刑事事件
プロセスが大事な少年事件の示談~1歩進んだ示談の考え方~
「示談してくれますか?」
犯罪の疑いをかけられた方、あるいはそのご家族から、しばしば耳にする言葉です。特に、20歳未満のお子さんが、犯罪の当事者になってしまったご家族の方々は、何とか力になれないかという思いで、このような相談に来られます。
そのような思いに応えるには、示談によってどのような効果が法律上見込めるかをよく検討することが必要だと、これまで解説してきました。
そして、これが少年事件の時は、特に注意が必要になります。なぜなら示談そのものに、法律上の効果はほとんど期待できないからです。一方で、示談の手続きに重要な意味を持たせることは可能です。
どういうことか、これから解説していきます。
1. 捜査段階における成年との考慮事由の違い
(1)全件送致主義の壁 ~犯罪があったら必ず家裁に行く~
成年の示談において、もっとも大きな効果として期待できたのが、不起訴によって処分を受けないことでした。
少年事件では、原則として、示談にそのような効果は期待できません。成年は、起訴するか不起訴にするかについて、検察官の広範な裁量が認められていました。少年事件では、家庭裁判所が審判を開いて処分を決するかまで決めることになっており、捜査機関は、犯罪にあたる行為(非行行為)があれば、全ての事件を家庭裁判所に送ることになっています。これを全件送致主義と言います。
この結果、成年における、犯罪があったが前科まではつけず許す「起訴猶予」は存在せず、成年における「嫌疑不十分・嫌疑なし」のように、犯罪があったことを立証できないパターンでしか、処分を免れることはできません。
罪を認めて謝罪するというのが本来の形である示談において、罪を否定しながら示談をする際の難しさについては、これまでのコラムでも解説してきたところです。しかも少年事件では、裁判所における成年との手続きの違いが加わります。
(2)書面で足りる少年審判手続~被害者の出廷は必要ない~
成年の刑事裁判では、人の言葉を証拠として使うには、原則として本人に出廷してもらう必要があります。性犯罪において不起訴になるのは、被害者が示談などを契機として出廷を望まなくなった結果、立証が難しくなるというメカニズムによることは、以前解説しました。
少年事件では、基本的に、あらゆる捜査中の記録が判断材料として使われます。被害者の供述についても、警察官や検察官が作成した供述調書によって、犯罪があったかどうかの認定は障害なく行われます。そのため、示談によって裁判を望まないような言葉を得ていようが、家裁送致を防ぐことはできません。
(3)それでも捜査段階で意味のある少年示談とは
以上のような手続きの仕組みから、犯罪にあたらない事実について相互に確認が取れたなど、示談の中でもかなり高い獲得目標を達成できていなければ、少年事件の捜査段階における成果に結びつけるのは、難しいです。
そこまでの達成が難しいようであれば、あくまで家庭裁判所に行くことは前提に、後述する審判を意識した示談を進めて行くのが得策です。
そこで続いて、少年審判における処分結果に関して効果がある、示談の取り組みについて解説していきます。
2. 少年事件において結論を決める「要保護性」
少年事件におけるさまざまな結論は、おおむね「要保護性」という概念によって決定されています。
処分が不要であるか、保護観察に付すか、少年院にまで行かせるか、少年としての手続きではなく「逆送」して成年の刑事裁判を受けさせるか、これらは全て要保護性から決まっています。
厳密にいえば要保護性は、少年の犯罪的危険性、矯正可能性、保護相当性という要素から構成され、たとえば逆送事案の場合は保護相当性が欠けているといったメカニズムがあり、裁判官にプレゼンテーションをする際は、こういった少年法上の概念を正しく理解しておくことも必要になります。
ただ、ざっくりと言えば、少年が自己の問題を認識し、今後の問題行動を防げるようになるか、すなわち要保護性が減少させていくのが少年事件における弁護士の目標です。
それでは、示談はどのように位置づけられるでしょうか。
「親が相手方にお金を払った」、この事実のみによって、要保護性が減少するかといえば、そうとはいえないでしょう。裁判官の著作を読むと、示談そのものについても一応の効果を認める考えはあるようですが、それでも中核である要保護性に対して、あくまで副次的なものと位置づけられてしまうようです。
それはそれで、結論が分かれ目にあるギリギリの事案では意味があるのですが、要保護性の減少につなげる形を作れるなら、その方が望ましいのは間違いありません。
そのため、少年事件においては、ただお金を渡したではない形を作っていくことで、より有益な効果を期待できます。
3. 示談は被害者を知ることができる貴重な機会である
要保護性の減少につなげられる手法は、事案の性質と弁護士のアイデア次第で多様ですが、少年自身をどう関与させるかという視点が重要になるのは、共通しているように思います。
被害者の生の声に弁護士を通して直面し、事後の心境を自らつづることで、少年が自ら起こした結果の重さを、理解するきっかけになるかもしれません。自ら被害者に提示すべき条件を考え、被害者から提示された条件の意味合いを考えることで、自己の行為がもたらした被害の中身を、より具体的に理解するきっかけになるかもしれません。
そしてこのように、被害者と接する中でのプロセスに少年を関与させ、その過程を記録化することで、要保護性の減少につながる資料を作成できるかもしれません。
4. プロセスを大事にする少年示談のススメ
手続きの仕組み上、少年事件は示談で終わらせることが難しいです。まず、獲得目標が達成できるかをよく意識し、依頼者に対してコストに見合ったプランを提示できる必要があるのは、成年同様に当然でしょう。
それに加えて、示談を進めるプロセスに、少年事件において重要となる要保護性を意識した取り組みを入れていくことで、少年事件の結論に効果のある示談を行っていくことができます。
お子さんのために力になりたいと思ったご家族が、弁護士に依頼する示談活動。これを最良の形で進めて行くには、刑事事件のみならず少年事件について、正確に理解している弁護士に依頼することを、オススメします。
- こちらに掲載されている情報は、2021年07月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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