法人が脱税するとどんなリスクがある? 刑罰や時効について解説

法人が脱税するとどんなリスクがある? 刑罰や時効について解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

脱税とは、所得や資産を隠したり、虚偽の申告をしたりといった不正な手段によって、申告・納付すべき税金を免れることです。脱税をすると、刑事罰や追徴課税などの厳しい処分を受けることになります。

本コラムでは、法人の脱税に関する刑罰や時効、脱税をした場合のリスクや、申告・納税時のリスクを軽減する対処法を紹介します。

1. 法人の「脱税」とは

法人の「脱税」とは、法人に課せられる税(法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税、消費税など)のうち、主に法人税および消費税を、違法行為と知りながら不正な手段によって免れようとすることです。具体的には次の行為によって、正しく申告・納付しないことを指します。

  • 所得や資産を隠す(例:海外口座に資金を移す、架空の費用や損失を計上する、など)
  • 虚偽の申告をする(例:収入を過少に申告する、経費を過大に申告する、など)
  • 申告しない

節税との違いは合法かどうかです。節税の場合は、合法的な手段によって納付する税額の軽減を図ります。たとえば、税制上の優遇措置や控除を活用したり、税務上有利な事業形態を選択したりといった方法が考えられます。

脱税とは異なりますが、経理処理上で注意すべきなのが申告漏れです。たとえば、不注意で期限内に申告書を提出しなかったり、申告書に記入ミスや計算ミスがあったり、必要な添付書類や証明書類が不足していたりといった事例が申告漏れに該当します。

悪意をもって納税額を不正に処理しようとしているわけではないため、刑事罰を受けることはありませんが、追徴課税や延滞税などの処分を受ける可能性はあります。

法人による税の申告は、正しい知識によって正確に行うことが大切です。必要に応じて税理士と相談し、不正や間違いのないよう申告してください。

(参考:「令和3年度 査察の概要」(国税庁))

2. 脱税をした場合、何年で時効を迎える?

脱税の時効は、刑事事件と徴収期限とで異なります。

(1)刑事事件としての時効(公訴時効)は最長7年

脱税の種類や内容によって科せられる刑事罰は異なります。

法人税法の条文 脱税の種類 脱税の内容 罰則
159条1項 虚偽過少申告ほ脱犯 偽りなどの不正行為で法人税を免れたり、還付を受けたりするケース 10年以下の懲役か1000万円以下の罰金
159条3項 無申告ほ脱犯 故意に確定申告書を提出しないことで法人税を免れるケース 5年以下の懲役か500万円以下の罰金
160条 無申告犯 正当な理由なく、確定申告書を提出期限までに提出しないケース 1年以下の懲役か100万円以下の罰金

刑事罰の公訴時効は、刑事訴訟法第250条第2項で定められており、懲役・禁錮が15年未満の場合には7年、同10年未満であれば5年、同5年未満の場合には3年といったように、罰則の重さによって期間が変わってきます。つまり、脱税による刑事罰の時効が成立するには最長で7年が必要だということです。

時効の起算日は、「犯行が終了した日」もしくは「最後に犯行が行われた日」です。ただし、被疑者が逮捕されたり、起訴されたりすると時効の進行は中断し、その中断事由が終了した日から進行が再開します。

(2)徴収期限としての時効は5~9年

徴収期限としての時効には、賦課権(新たに税金を確定できる権利)の時効と徴収権(確定した税金を徴収する権利)の時効があります。さらに国の租税債権の時効には、

  • 期限の中断や停止があり、期限経過後に債務者が主張することで権利が消滅する消滅時効
  • 期限の中断や停止がなく、期限経過後に自動的に権利が消滅する除斥期間

が適用されるものがあり、期限の起算日も、消滅時効と除斥期間では異なります。

賦課権には除斥期間が適用されます。原則は5年ですが、不正行為で脱税や還付を受けた場合は7年、法人税に係る純損失を偽るなどの行為の場合は9年です。一方、徴収権には消滅時効が適用され、時効が成立するには5年が必要です。督促状の送付などがあった場合には、時効は中断されます。

租税債権の時効は複雑ですが、税務署の脱税に対する追及は厳しく、時効で逃れられるという考え方は危険です。脱税をしたことを早く認めて、迅速に修正申告を行うのが賢明です。

3. 脱税をした場合のリスク

脱税をした場合のリスクとしては、刑事罰、追徴課税、税務調査、信用の低下が挙げられます。

  • 刑事罰
    脱税は重大な犯罪であり、懲役や罰金などの刑事罰を受ける可能性があります。
  • 追徴課税
    脱税が発覚すると、税務署は正しい税額を計算し、不足分を追徴課税します。追徴課税には、追加税や延滞税などの割増金も含まれるため、本来よりも多くの税金を支払わなければなりません。
  • 税務調査
    脱税が疑われる場合、税務署は法人の経理や財務に関する証拠を調べるために、税務調査を行います。税務調査は、時間や手間がかかるだけでなく、業務や経営にも影響を及ぼします。
  • 信用の低下
    脱税が発覚すると、法人の信用や評判は大きく低下します。取引先や顧客、金融機関などとの関係が悪化するかもしれません。取引先を失ったり、金融機関からの融資を受けられなくなったりするおそれがあります。

(1)申告・納税時のリスクを軽減する対処法

申告後に納税額に過誤があることに気づいた場合や税務署から指摘された場合には、まずは一刻も早く修正申告を行いましょう。故意ではない軽微な過失であれば、修正申告をし、新たに納付すべき税額を納めれば、刑事罰や追徴課税を避けられます。

無申告の場合も同じく、早期の申告が大切です。過去に一度でも無申告があると、放置期間の長さに応じて罰則が重くなります。税務署からの指摘がないからといって安心してはいけません。様子見で泳がされているだけかもしれませんので、無申告に気づいた場合には即刻、申告してください。

「適切な申告方法がわからない」「税務に対応するための人手が足りない」という場合は、税理士に相談することをおすすめします。税理士であれば、税務状況の調査から修正申告、税務署への対応など、さまざまなことをサポートしてくれます。企業の状況に応じた節税についてもアドバイスしてくれますので、税金に関する悩みを抱えている場合は、ぜひ、相談してみてください。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2023年12月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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