ドラマ好きな弁護士が、オタクな目線で楽しむ『競争の番人』9 ~談合:基礎編~
  • 2022年09月05日
  • 企業法務

ドラマ好きな弁護士が、オタクな目線で楽しむ『競争の番人』9 ~談合:基礎編~

ドラマ『競争の番人』の第8回(8/29放送)から、最終章が始まったようです。企業結合・M&Aの話や共同研究の話、知的財産権との関係の話など、テーマとして扱ってほしいものはたくさんあったのですが、ちょっと寂しいです。

さて、昔から今でも、独禁法の中でもっとも大きな事件になりやすいのが「談合」です。でも、そもそも談合って何が悪いのでしょうか? どんな行為を立証すると摘発できるのでしょうか? そんな基本的なところから、まずは確認し直してみたいと思います。

1. 談合がもたらす弊害とは?

池井戸潤が書いた『鉄の骨』など、談合がテーマとなっている作品は多数あります。

今回のドラマでも出てきましたが、共通して談合する側は、「会社が生きていくために仕方がない」「仕事が必要なんだ」といった話をします。仕事を仲良く分け合って、皆で共存できた方が良いじゃないか、多数が幸せになれるんだと、功利主義者のような正当化をします。

このような罪悪感を帳消しにするのが、“買い手側”も協力している場合です。独占禁止法が究極的に守るべき対象は、高値で買わされる人たちということでしたが、買い手も購入価格に「納得」しているなら良いじゃないかといった言い訳も出てきそうです。

もちろん、これらはすべて“まやかし”です。

「みんなで共存」というのはうそで、必ず談合に参加しなかったことにより仕事が得られない企業、潜在的には参入可能なのに算入できない企業がいます。みんなは、「一部」の間違いです。

「多数が幸せ」もうそです。何一つ努力をしなくても仕事が得られる企業は、努力をしません。結果、”無能“が橋や道路といった社会のインフラを築くようになります。国民の生活に関わるサービスが、低クオリティーで提供されるのです。したがって本当は、一部の企業だけの「幸せ」です。

高値で買わされているという問題も、国であれば「国民」、企業であれば「株主」が損をさせられています。特に「官製談合」が問題になるのは、税金が消費されても国家公務員の懐は一切痛まないため、完全に国民を犠牲にして権力を行使する人間が出るからです。

国全体、市場全体という広い視点を持てば、「談合は悪」だと断じられます。

2. 何をしたら談合として違法になるか? ~基本合意と個別調整~

用いられる条文は、カルテルと同じ不当な取引制限です。

『事業者が、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう』

と定義されています。

談合においても、この相互に事業活動を拘束するような意思連絡が行われることを、違法な行為としてとらえます。これが、立証すべき対象です。

具体的な談合のスキームもイメージしてみましょう。ドラマでも小日向文世演じる国交省事務次官が、大手建設会社4社を集めて、大型プロジェクトにおいて仕事の割り振りをすることを話していましたね。これが「基本合意」と言われる、談合の基礎になるものです。

続いて、建設案件ごとに入札手続きが行われます。各社が「この金額で仕事を請け負いますよ」という入札価格を入れ、発注側も一定のクオリティーを保ちたいため「これくらいはお金をかけてほしい」と設定し、それを満たす中で一番安い価格を示した企業が仕事を請け負えます。

この際、その最低価格は談合に協力する発注側から教えられており、そこに一番近い価格を談合に参加する企業のひとつが書くことになります。この具体的な入札時の流れと各企業の入札価格などの調整を行うのが、「個別調整」です。

今回のドラマの物語でも、ひとつの基本合意に基づいて、4つの建物について個別調整が行われそうな流れにあるわけですね。

独占禁止法の不当な取引制限の定義からすれば、基本合意も個別調整も、「相互にその事業活動を拘束」する行為になり、その結果、特定の個別案件で競争が実質的に制限されることになるため、不当な取引制限にあたり違法とできるように見えます。ただ、公正取引委員会のお作法として、不当な取引制限として挙げる場合は、「基本合意」を立証する。そして、いくらの制裁金を科すかという場面で、各「個別調整」の立証により競争が失われた取引額を算定していくという思考法を取っているようです。

そのため、この第8回の会議室で起きていたことを立証するのが、最終的なゴールになるわけです。もちろん、その意思連絡を録音していたり、文書でかわしていたりするような、直接立証できるケースはまれですので、実際には会合がもたれていること、後の入札において不自然な価格入札があったことなど、「状況証拠」(法律界隈では、間接事実や間接証拠といった言葉の方が通常です)を固めて立証していくことになります。

しばしばドラマで、犯人が「状況証拠」しかないと言い訳をすることが多いですが、刑事事件や公正取引委員会(公取委)の扱う経済事件などでは、「状況証拠」で立証する方が圧倒的に多いですし、それできっちり認定されています。

3. 刑事事件的な目線での談合 ~次回への先出し~

一方で談合は、公正取引委員会(公取委)ではなく、検察庁の関心事であることも多いです。その場合には、上記と少し異なる思考法を取ることもあるようです。

また、刑事罰は独禁法外でも設けられており、そちらを主眼点として検討されることもあります。

このような次回の話題への先出しをしつつ、まずは今回、談合がなぜ問題であるかと、そのスキーム、立証構造などの基本を解説しました。

杉山 大介
杉山 大介 弁護士

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