- (更新:2021年07月15日)
- 企業法務
従業員が負傷! 労働災害(労災)発生時に会社がとるべき対応とは?
業務上の事故などによって従業員が負傷してしまった場合や、疾病にかかってしまった場合には、労働災害(労災)の問題が発生します。従業員との間で紛争を生じさせないためにも、会社としては、労災の問題には誠実に対応することが大切です。
この記事では、労災発生時に会社がとるべき対応について解説します。
1. 労災発生時に企業が問われる法的責任とは?
労災事故によって負傷した、または疾病にかかった労働者に対する補償は、労災保険給付によって行われます。
しかし同時に、労災保険給付によって補塡(ほてん)しきれなかった損害については、以下の2通りの法律構成により、労働者から会社に対して損害賠償を請求される可能性があります。
(1)使用者責任
労働者が同僚の故意・過失による行為によって負傷し、または疾病にかかった場合、会社についての「使用者責任」が問題になりえます(民法第715条第1項)。
会社が労働者の選任・監督について相当の注意をしたこと、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったことを立証できれば、会社は使用者責任を免れます(同項ただし書き)が、これらの立証のハードルはかなり高いものとされています。
(2)安全配慮義務違反
労働者が会社のために労働を提供するに当たって、会社は労働者が生命・身体などの安全を確保しつつ労働できるように、必要な配慮をする義務を負っています(安全配慮義務。労働契約法第5条)。
労災のケースでも、会社の安全配慮義務違反が認定され、損害賠償義務が認められる可能性があります。
2. 会社が労災の手続きについて留意すべきこと
従業員について労災による負傷・疾病が発生した場合、法令上の手続きとの関係で、会社は以下の点に留意して対応に当たりましょう。
(1)労働者死傷病報告を適時に提出する
労働者が労働災害により死亡または休業した場合には、会社は遅滞なく、「労働者死傷病報告」を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません(労働安全衛生規則第97条第1項)。
この労働者死傷病報告を怠った場合、担当者と法人に刑事罰が科される可能性があるので、十分に注意が必要です(労働安全衛生法第120条第5号、第100条第1項、第122条)。
(2)労働者の労災保険給付申請に最大限協力する
労働者が労災保険給付の申請を行おうとしている場合は、会社は申請のための資料作成などについて、最大限協力しましょう。
そもそも労災保険給付は、本来会社が損害賠償として補填すべきものを肩代わりしてくれる意味合いを有するので、会社としても申請に協力するメリットがあります。
また、会社が労災保険給付の申請に協力的である態度を見せれば、労働者側としても会社に対する被害感情が抑えられ、労働者との紛争が深刻化する可能性が低くなります。
3. 労災により従業員が負傷した場合の対処法は?
労災により従業員が負傷した場合、会社としては、従業員との紛争をできるだけ発生させないこと、仮に紛争に発展したとしても円満・穏便に解決することが大切です。 そのためには、以下の点に留意しつつ、労働者に向けた誠実な対応を心がけましょう。
(1)従業員のケアと話し合いを重ねる
労災に遭った従業員との紛争を防止するには、何よりも感情面のケアが優先されます。
休業や補償に関する相談には真摯(しんし)に応じつつ、タイミングを見て復帰の環境を万全に整えるなど、会社として従業員のことを大切に思っていることを行動で表現すべきでしょう。そうすれば、労働者としても会社を徹底的に糾弾しようという気持ちが薄れ、問題の早期解決へとつながります。
(2)弁護士に相談しながら対応する
しかし、労働者側の被害感情が強い場合は、損害賠償に関する交渉が難航し、労働審判や訴訟などの法的手続きに発展してしまう場合も少なくありません。労働審判や訴訟になった場合、会社側でも準備に膨大な手間がかかるほか、多角的な観点からの法的な検討が必要不可欠です。
労働審判や訴訟に備えて万全の準備を整えるという観点では、労災対応の早い段階から弁護士への相談がおすすめです。
弁護士は、労災問題を早期に解決するため、まずはできるだけ法的手続きに発展しにくい対応方針についてのアドバイスを行います。それでも実際に法的手続きに発展してしまった場合には、法的な検討から手続きの準備まで、会社を全面的にサポートします。
- こちらに掲載されている情報は、2021年07月15日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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