【アスベスト工場で仕事をしていた方へ】アスベスト訴訟のポイントを解説
  • 2021年04月28日 (更新:2021年07月15日)
  • 行政事件

【アスベスト工場で仕事をしていた方へ】アスベスト訴訟のポイントを解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

過去にアスベスト(石綿)工場に従事していた方やそのご遺族の方々は、国に対して損害賠償金を請求できます。
弁護士に相談して適切に準備を進め、被害を回復していきましょう。

この記事では、アスベスト訴訟の流れやポイントについて解説します。

※なお、本コラムは主にアスベスト工場で働いていて、被害に遭われた方向けの記事です。建設現場で働いていた方でアスベスト被害に遭われた方も訴訟をすることができますが、工場勤務の方とは賠償の判断基準が異なりますので、お心当たりのある方は、弁護士へご相談されることをおすすめします。

1. アスベスト被害の概要と、国の賠償責任について解説

過去に建築物の断熱材などとして使用されてきたアスベストについて、吹き付け工事の従事者を中心として、多数の健康被害が報告されました。

まずはアスベスト被害の概要と、国の賠償責任が認められるに至った流れについて解説します。

工場などでの吸引により健康被害が発生

アスベストは、肉眼では確認できないほど細い繊維状の物質です。
そのため、飛散すると空気中に浮遊し、人が吸入すると肺胞に沈着しやすいという特徴があります。

この丈夫で変化しにくい性質が災いして、吸入されたアスベストが人の肺組織内に長く滞留し、石綿肺、肺がん、悪性中皮腫などの病気・健康被害を多数引き起こしました。

最高裁が国の規制権限不行使を違法と認定

被害に気が付いた、大阪のアスベスト工場の元労働者や遺族などが、アスベスト被害について国家賠償請求を行いました(大阪泉南アスベスト訴訟)。

最高裁は、アスベスト被害の実態を踏まえて、昭和 33 年 5 月 26 日から昭和 46 年 4 月 28 日までの間、国が規制権限を行使せず、罰則をもって石綿工場に局所排気装置を設置することを義務付けなかったことは、国家賠償法上違法であると判示しました(最高裁平成26年10月9日判決)。

原告と国の間で和解が成立

前述の、最高裁判決が大阪高等裁判所に差し戻された後、平成26年12月26日、アスベスト被害を訴える原告と国の間で和解が成立し、以降は国に対して訴訟を提起し、和解の要件を満たした人に対して、損害賠償金が支払われることとなりました。

2. 工場型アスベスト被害で受け取れる賠償金

アスベスト工場の従事者やそのご遺族の方々は、国に訴訟を提起し和解が成立すると、損害賠償金を受け取ることができます。
アスベスト訴訟によって被害者が受け取ることができる賠償金の額は、じん肺管理区分、合併症の有無、症状、死亡の有無により異なります。

「じん肺管理区分」は、じん肺健康診断によって判定されます。
「管理1」は無所見ですが、「管理2」以上はじん肺の所見があることを意味し、数字が大きくなるほどじん肺が進行していることを意味します。
じん肺健康診断は、医療機関で受けることが可能です。

症状と賠償金の対応表は以下のとおりです。

管理2で合併症がない場合 550万円
管理2で合併症がある場合 700万円
管理3で合併症がない場合 800万円
管理3で合併症がある場合 950万円
管理4で肺がん・中皮腫・びまん性胸膜肥厚である場合 1150万円
石綿肺(管理2・3で合併症なし)によって死亡した場合 1200万円
石綿肺(管理2・3で合併症ありまたは管理4)で肺がん・中皮腫・びまん性胸膜肥厚によって死亡した場合 1300万円

参考:厚生労働省のページより
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000075130.html

3. 国に賠償を求めるアスベスト訴訟(工場型)の流れ

本章では、アスベスト工場に従事していた方やそのご遺族で、アスベスト被害にお悩みの方が、実際に国に対して、賠償金を求める和解手続の流れを解説します。

(1)国家賠償請求訴訟を提起

アスベストの賠償金は、国家賠償請求訴訟を起こすことによって請求します。

アスベスト訴訟では、次の項目で解説する和解要件を満たすことを証拠により立証することが必要です。
和解要件が立証できると、国との和解が成立し、損害賠償金が国から被害者に支払われます。

(2)和解の要件を立証

アスベスト訴訟において、国が和解に応じるための要件は以下のとおりです。

①昭和 33 年 5 月 26 日から昭和 46 年 4 月 28 日の間に、局所排気装置を設置すべきだったアスベスト工場内において、アスベストの粉じんを受ける作業に従事したこと

上記の期間について、アスベスト工場での勤務歴の立証が必要になります。
日本年金機構が発行する「被保険者記録照会回答票」を確認すると、当時の勤務先がわかるので、これを証拠として用いることが可能です。

②その結果、アスベストによる一定の健康被害を受けたこと

前記2の項目で紹介した、症状と賠償金の対応表に従って、アスベストに関する健康被害の事実を立証する必要があります。

じん肺管理区分については、都道府県労働局長が発行する「じん肺管理区分決定通知書」により立証ができます。
さらに合併症や死亡については、労働基準監督署長が発行する「労災保険給付支給決定通知書」や、医師の発行する診断書によって立証します。

③提訴の時期が損害賠償請求権を行使できる期間内であること

アスベスト賠償金は国による不法行為に基づく損害賠償であるので、消滅時効が完成して請求ができない場合があります。
症状や時期によって期間の考え方が異なりますので、期間については弁護士に確認するのが確実です。

また、証拠の収集は弁護士に相談しながら進めるとスムーズです。
アスベスト被害にお悩みの方は、まずは弁護士にご相談することをおすすめします。

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