住民訴訟とは? 住民訴訟制度の概要や手続きの流れについて解説

住民訴訟とは? 住民訴訟制度の概要や手続きの流れについて解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

地方公共団体による違法・不当な行為については、最終的に住民訴訟で争うことができます。ただし、先に住民監査請求を行う必要があるなどの注意点が存在するので、手続きの流れを事前に理解しておきましょう。

この記事では、住民訴訟制度の概要・要件・内容・手続きの流れなどを解説します。

1. 住民訴訟とは?

住民訴訟とは、住民が普通地方公共団体の違法・不当な行為を糾弾・是正することを求めて提起する訴訟(裁判)です(地方自治法第242条の2第1項)。

住民訴訟は、住民自身の権利を守るための訴訟ではない点で、通常の訴訟とは異なるイレギュラーな訴訟形態です。住民による行政への監視を実効化する観点から、特別に住民訴訟が認められています。

2. 住民訴訟ができる場合・請求の内容について

(1)住民訴訟を提起するための要件

住民監査請求は、問題となる普通地方公共団体の住民のみが提起できます。

また、住民訴訟を提起するには、まず住民監査請求を提起する必要があります(地方自治法第242条の2第1項)。住民監査請求の対象は、普通地方公共団体による以下の行為です(同法242条第1項)。

①違法または不当な以下の行為(当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合を含む)

  • 公金の支出
  • 財産の取得、管理、処分
  • 契約の締結、履行
  • 債務その他の義務の負担

②違法または不当に以下の行為を怠った事実

  • 公金の賦課、徴収
  • 財産の管理

住民監査請求における監査・勧告・措置の内容に不服がある場合や、地方自治法の規定に違反して監査委員・執行機関・職員が監査・勧告・措置を行わない場合に、初めて住民訴訟を提起することができます。

(2)住民訴訟の請求内容

住民訴訟では、以下のいずれかの請求を行うことができます(地方自治法第242条の2第1項各号。複数同時に請求することも可)。

  1. 執行機関または職員に対する、行為の差止請求(1号請求)
  2. 行政処分たる行為の無効確認請求(2号請求)
  3. 執行機関または職員に対する、不作為(「怠る事実」)の違法確認請求(3号請求)
  4. 職員または行為・不作為の相手方に対して、損害賠償または不当利得返還請求をすることを、執行機関または職員に対して求める請求(賠償命令の対象者である場合は、賠償命令をすることを求める請求)(4号請求)

3. 住民訴訟の手続きの流れ

住民訴訟の大まかな流れは、以下のとおりです。住民訴訟の手続きの準備は、弁護士への依頼をおすすめいたします。

(1)住民監査請求を前置する

前述のとおり、まずは住民監査請求を行う必要があります。普通地方公共団体の窓口で、住民監査請求書を提出しましょう。

その後、監査委員などが審査を行い、審査結果が請求人に対して通知され、かつ公表されます。

(2)訴訟の提起

住民監査請求の審査結果などに不服がある場合は、裁判所に訴状を提出して、住民訴訟を提起します。訴状には、普通地方公共団体による行為(または不作為)の違法性・不当性を基礎づける主張・事実を、説得的に記載する必要があります。

住民訴訟の管轄裁判所は、当該普通地方公共団体の事務所の所在地を管轄する地方裁判所です(地方自治法第242条の2第5項)。なお住民訴訟は、監査結果・勧告の通知日から30日以内に提起しなければならないなどの出訴期間制限があるので(同条第2項)、早めに準備を進めることが大切です。

(3)口頭弁論期日での審理

住民訴訟の提起後、裁判所が指定する「口頭弁論期日」において、原告・被告双方が、請求の当否に関して主張・立証を行います。原告の主張を裁判所に認めてもらうには、行政の行為(または不作為)の違法性・不当性を、証拠を用いて立証する必要があります。

(4)判決の言い渡し・確定

行政の行為(または不作為)の違法性・不当性が立証された場合、原告の請求を認容する旨の判決が言い渡されます。逆に違法性・不当性が立証されなかったと判断された場合、原告の請求は棄却されます。

その後、異議申し立ての手続(控訴・上告)を経て、判決が確定します。

(5)損害賠償・不当利得返還請求・弁護士費用の請求

4号請求(前述)が認容された場合、住民訴訟の判決確定から60日以内を期限として、普通地方公共団体の長が損害賠償請求・不当利得返還請求を行わなければなりません(地方自治法第242条の3第1項)。その際、相手方が期限内に請求に応じない場合には、普通地方公共団体が相手方に対して訴訟を提起する必要があります(同条第2項)。

また、住民訴訟で原告(住民)側が勝訴した場合(一部勝訴を含む)弁護士費用の一部を普通地方公共団体に対して請求できます(同法第242条の2第12項)。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2022年03月17日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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