否定せず、強要せず… 2024年“躍動”企業になるために意識すべき「キーワード」

弁護士JP編集部

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否定せず、強要せず… 2024年“躍動”企業になるために意識すべき「キーワード」
企業の中の問題が “完全に”なくなることはないが…(まちゃー / PIXTA)

激動の2023年が終わり、2024年は晴れてコロナ明けの”正常モード”からスタートする。年始から全力で事業を加速できるこの1年、どんな企業が躍進するのか。あるいはどうすれば躍進できるのか。組織運営や人事のプロフェッショナルの目線から、具体的な策を授かった。(後編/全2回)
前編:2024年に「飛躍する企業」人事のプロがあげる “7つ”の必要条件

「王道」を行くことが躍進のカギに

小賢しいことはもはや愚策と新井氏はズバリ

2024年は、具体的にどうすれば企業は一層の飛躍を、あるいは本年こそ躍動できるのでしょうか。

新井:すごく単純な話なんですけど、基本に忠実になることが大事だと思うんです。逆にいうと、策略を巡らしたり、誰かを騙したり、相手企業に先んじてとかそういう小賢しいことをやるのは、もはや愚策とさえいえます。 なぜなら、相手を疑ってかかる手間やコストって、もうとてつもなく大きなものになるんです。そういう手間とコストをかけないためになにがベストか。それはやっぱり王道を行くことだと思うんです。

実直に、目の前のことに全力で取り組んで顧客に満足してもらう。純粋にそれを繰り返していくとういうスタンスが結果的に、利益も生産性も最大化すると。

新井:マネジメントにおいても同様です。部下を搾取してとか、 1円でも利益をこそげとるような、そういう姿勢は、結局は不正につながるんです。

さらにいえば、そういう管理者は結局、お客さんもそういう目で見るんです。部下はさぼるものだとか、性悪説でマネジメントすることでかかる手間やコストを一度試算してみるといいとでしょうね。

その意味でも基本的な心構えというか、われわれ日本人が守ってきた真っ当な企業活動の道徳心や、基本行動だったりとか。新しい仕事に取り組んでいくにしても、その進め方について、もう一度、そこに立ち返り、忠実になることが、企業の成長を支えていくと思います。

これまで見てきた不祥事を起こした企業に、本当に道徳心はあったんでしょうか。いまこそ、精神性みたいな部分もキチンと見つめ直す必要があると思います。

二野瀬様お願いします。

二野瀬:精神論ではないですけど、倫理観や、道徳心といったものが、今後益々重要な要素になっていくと感じています。業務の中に AI 等も入っていく状況で、より人間固有の感性がフォーカスされそれに伴って、そうした側面がより重要視されていくように思います。

一松様はどうでしょうか。

一松:みなさんがこれまでおっしゃったことと重りますが、会社とか組織自体が、市場に対してなにを提供しようとしているのか。そうした部分を突き詰めて考える必要があるかと。

われわれもいろんな研修の現場、企業の中に入らせていただくときに、そこに本当にいろいろな部門の方が集まってきて、今後の対策について考えようといったセッションをやるんです。そうすると、どうしても自分のいる部署とか組織のところの最大化に話が集中し、その部門の論理で語られるんです。

「でもそれって、部分最適になっていませんか」「全体最適で考えましょうよ」と感じることが結構あります。気づいたときには改めて釘を刺して方向修正します。

個人が全体最適を意識して、組織として向かっていく方向がどこなのかをキチンと共有できているか否かがすごく重要ですし、そうした時に「これはできていない」というところを、いかにタイムリーに軌道修正できるかが肝要かと思います。

決して人間性を否定しない

では角渕様、お願いします。

角渕氏は決して人間性を否定しないことが大切と説いた

角渕:「どうすれば」の前に、企業の中の問題が完全になくなるかというと、そこまで楽観的なことは私も考えてません。おそらくはなくならないんだと思いますが、ただ今年よりもよくはしていかなければいけませんよね。

今年やった失敗は繰り返さない。そのためにはやはり、組織改革を目指して身を進めていくことが肝要だと思います。

その際に大事なことは、「決して人間性を否定してはいけない」ということです。 立川談志がむかし書いた本に、「落語とは業の肯定だ」という言葉があります。これは「人間、本当に眠い時は寝ちまうもんなんだ」ということだと談志は説明しています。だから、寝てはいけない時に寝てしまっても、そのことを怒っても仕方がないということです。人間なんだから眠くなったら寝ちまうものなんだと。

ですから、マネジメントをする側も、「自分も寝ちまう存在なんだ」と意識をしながら、気長に進めていくんです。なにか問題が起これば、そのたびに、「次は同じことは起こさない」と…。そうやって 1 個 1 個潰していく。地道な話ですが、これをコツコツと続けていくしかないんじゃないかなと思います。

ありがとうございます。最後に2024年躍進する企業についてなにかキーワードで表現できないでしょうか。

新井:良くも悪くも、「誠実」なんじゃないですか? 前にお話ししたように、日本人ってネガティブな思考する人が多いでしょ。一方で誠実であれる資質もある。

そう考えた時に、自分たちを否定せず、肯定しながら、引き続き誠実であればいいんじゃないかなと。誠実で親切な態度で、一つひとつの事にあたる。それが結局は日本企業のポテンシャル最大化につながっていくんじゃないでしょうか。

一松:私も「誠実」に 1 票です。誠実の意味は「私利私欲をまじえず、真心をもって人や物事に対すること」とあります。まさに2023年にあった多くの出来事を反面教師としつつも、誰もが前向きにとらえられるワードであると感じます。

2024年、「誠実」に事業に取り組む企業が躍動する。そんな状況になれば、なんだか気持ちよく生きていける気がしてきます。みなさま、ありがとうございました!


【プロフィール】

新井健一
経営コンサルタント、アジア・ひと・しくみ研究所代表取締役 早稲田大学卒業後、大手重機械メーカー人事部、アーサーアンダーセン(現KPMG)、ビジネススクールの責任者・専任講師を経て独立。人事分野において、経営戦略から経営管理、人事制度から社員の能力開発/行動変容に至るまでを一貫してデザインすることのできる専門家。著書は『働かない技術』『いらない課長、すごい課長』(日経BP 日本経済新聞出版)など多数。

一松亮太
経営コンサルタント、株式会社KakeruHR代表取締役。大手生命保険会社、銀行系シンクタンク、教育系スタートアップを経て独立。現在は、業務プロセス構築、人事制度構築等のコンサルティングに従事。その他、企業向けの研修講師として多数登壇。

角渕渉
経営コンサルタント・産業カウンセラー/アクアナレッジファクトリ株式会社代表 ソフトウェアハウス、国内系コンサル会社を経て、大手監査法人グループのKPMG あずさビジネススクールで講師をつとめる。2007 年にアクアナレッジファクトリを設立。「確かな基礎力に裏打ちされた『変化に柔軟に適応できる人材』の育成」をテーマに、各種ビジネススキル教育、マネジメント教育の研修講師として活躍中。

二野瀬修司
経営コンサルタント、株式会社ウィズインテグリティ代表。大手都市銀行、人材育成・組織開発を専門とする企業を経て独立。現在は、ファイナンスや人事制度構築等のコンサルティングに従事する他、企業向けの研修講師として多数登壇。

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