グローバルダイニング訴訟に新証言。京大・藤井聡教授「都の時短命令は統計学的に不正確」

弁護士JP編集部

弁護士JP編集部

グローバルダイニング訴訟に新証言。京大・藤井聡教授「都の時短命令は統計学的に不正確」
記者会見に臨むグローバルダイニング・長谷川耕造社長、弁護団長・倉持麟太郎弁護士(2月7日 霞が関/弁護士JP編集部)

飲食チェーンのグローバルダイニングが、東京都から受けた営業時間短縮命令が違憲だとして損害賠償を求めている裁判の証人尋問が、2月7日に東京地裁で開かれた。

東京都の時短命令は「違憲」?

「モンスーンカフェ」など人気飲食店を展開するグローバルダイニング。首都圏1都3県が二度目の緊急事態宣言下にあった昨年3月18日、営業時間短縮の「要請」に従わない店舗に対して、小池百合子東京都知事は新型インフルエンザ等特別措置法(以下、特措法)に基づき、営業時間を短縮するよう飲食店など27店舗を対象に「命令」を下した。このうち26店舗がグローバルダイニングが展開する飲食店。同社は命令に従ったものの、憲法で保障された「営業の自由」を侵害されたとして東京都を提訴した。

また同社は、都が命令を下す理由の一つを「(同社が)緊急事態措置に応じない旨を強く発信するなど、他の飲食店の20時以降の営業継続を誘発するおそれがある」としたことも指摘。いわば“見せしめ”の措置であり、表現の自由や法の下の平等も侵害されたとして、違憲性を争っている。

なお、この裁判でグローバルダイニングが都に請求している損害賠償額は、命令期間1日につき1店舗あたり1円(1円×26店舗×4日間=104円)。裁判の目的が損害賠償請求ではなく、特措法や、都による命令の違憲性、民主主義国家のあり方を問うこととしているからだ。

都は「違憲性・違法性なし」と反論

これまでの裁判で都は、“見せしめ”として同社へ命令を下したことを否定。時短命令そのものについても、特措法の要件を満たすことは明らかであり、違憲性・違法性がないことを主張している。

一方グローバルダイニングは、新型コロナウイルス感染症対策分科会による資料およびデータの不正確性を問題視。この資料およびデータは、都が感染対策として人流抑制や飲食店への時短要請などを実施する根拠としているものだ。7日の証人尋問では、京都大学・藤井聡教授(都市社会工学)が統計学の観点からその不正確性を指摘した。

証人尋問後、都が使用するデータの不正確性を記者らに説明する京都大学・藤井聡教授(2月7日 霞が関/弁護士JP編集部)

京大・藤井教授「時短による感染拡大防止は統計学的に否定された」

藤井教授によると、資料では、統計学上は使用されない「寄与率」「有益」といった単語が、21時以降の人出と感染拡大を関連付ける重要な箇所で使用されているという。そのことから、資料が統計学の専門家によって作成されたものでない可能性を指摘した。

また藤井教授は、当該の資料と同じデータを使い、大学の学部生レベルでも用いることができる一般的な方法で改めて分析。すると、21時以降の人流抑制をしたとして、感染拡大防止対策に特に効果のある結果は見い出せなかったという。

藤井教授は証人尋問後の記者会見で「多くの人が素朴に『飲食店が時短営業すると感染者が減る』と思い込んでいるが、統計学的に否定された。都が確たる証拠がないまま国民の自由を奪い続けてることは極めて悪質」と辛辣に述べた。

裁判は3月14日に結審する予定。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア