埼玉公園「水着グラビア撮影会」“突如中止”措置で物議…騒動に潜む“危うい”「法的問題点」とは?

中原 慶一

中原 慶一

埼玉公園「水着グラビア撮影会」“突如中止”措置で物議…騒動に潜む“危うい”「法的問題点」とは?
撮影会に参加予定だったファンも当惑(※写真はイメージです hashisatochan / PIXTA)

埼玉県の県営公園で開催予定だったグラビアアイドルの水着撮影会が、開催直前になって突如中止に追い込まれた騒動。

経緯をおさらいしておくと、日本共産党埼玉県議団が撮影会について「性の商品化」を目的としているとして、「都市公園法第1条に反するとして、貸し出しを禁止するよう県に申し入れました」とツイッターで報告。

これに対し「露出度の高い水着や過激な衣装で撮影が行われていた」として、公園を管理する埼玉県公園緑地協会が、各主催者に一律に中止を要請。10日に撮影会を予定していた主催者の元には、開催2日前の8日朝に連絡があったという。

もともと埼玉県下の「川越水上公園」「しらこばと水上公園」などの公園は、人気グラドルが多数参加する撮影会の会場として頻繁に使用されていた。

「公序良俗に反するものと判断」

中止要請を前に、10日に予定されていた「フレッシュプール撮影会」、「ミスヤングアニマルオーディション セミファイナルプール撮影会」、11日に予定されていた「はなまる2023大プール撮影会」、24日と25日に予定されていた「近代麻雀水着祭」は相次いで中止を発表。

ただし、共産党のツイートに掲載されていたのは、「近代麻雀水着祭」のリンクであり、公園緑地協会も6月9日配信の「デイリー新潮」の取材に対し、こう回答している。

「6月24、25日に行われる近代麻雀水着祭において、6月頭に県民からメールで指摘があり、主催者の告知やネット上の過去の開催の画像を確認したところ、18歳未満の女性を出演させたことが確認できたほか、成人女性であっても過激な衣装やポーズが見受けられた。公序良俗に反するものと判断し、施設の使用を許可しないとした。ルールを守っている水着撮影会もあったが、個々での判断ではなく、水着撮影は一律お断りするとなった」

主催者のうちのひとつが”ルール違反”をしたという理由だが、今まで問題なく貸し出し許可を受けていた他の主催者も、明確な法的根拠もないままに、いきなり十把ひとからげに開催直前になって中止を要請されたことに大困惑だ。

「どこに法的根拠があったのか曖昧」

当サイトの6月12日配信のコラムでも、杉山大介弁護士が、「公園の使用は、憲法21条を受けて、地方自治法244条などにおいても具体化されている通り、”原則自由”であり、それを許可した後に不許可にするのであれば、法的な正当性やプロセスが必要である」として、こう書いている。

「仮に今回のような中止という手段を取る場合、なぜそこまでの手段を取る必要があったか、現状、どこに法的根拠があったのか曖昧で、取材によれば、違反とされる行為があった団体となかった団体も混在する中、そのような区別もつけぬままに『違反があったようだ』と埼玉県知事までツイッターに投稿をしている。

これは非常に杜撰(ずさん)だ。統一見解すらろくに持てていないことが露呈してしまっている。原則自由であったはずのものに、法規制という網をかけていくなら、ちゃんとどこまでをどのようなルールに基づいて規制していくかという全体像を持って進める必要がある。そうして初めて、批判にも耐え得るような手段が取れる。本当に急いで対処が必要と考えたのなら、それくらいの準備を急ぎで整え、行動と同時に書面の一つもアナウンスすべきだった」

改めて杉山弁護士にその真意を問うと、強い口調でこう言った。

「行政の問題を扱うなら、何事にも法的根拠を細かく問うことになります。〈使わせる〉〈使わせない〉〈お金を使う〉〈お金を使わない〉これら全てルールに従って適切に処理しなければなりません。”公の施設は原則誰でも利用自由”といった行政特有の定式をまずおさえないと、話がよくわからなくなります。今回は、行政の作法をよくわかってない人たちが、素朴な日常感覚で行政に権力を行使させようとしており、今も非常に危うい状態が続いていると思います。公民教育の失敗だと思いますね」

「特定の政治団体等の意見に左右された事実はございません」

騒動を受け、公園緑地協会を管轄する埼玉県の大野元裕知事は6月11日深夜、公式ツイートに以下のように投稿したが、杉山弁護士が指摘する通り、県と公園緑地協会との間で、統一見解さえ持てていないことを露呈する格好となった。

〈県として水着撮影については
●明確な許可条件が定められていない施設において、他の施設の条件を当てはめイベントを中止させること
●条件策定後に違反が認められない者に対し中止させることは適切ではない旨伝えるとともに、しらこばと公園の1者と川越水上公園の3者の中止要請を撤回すべき旨を(公園緑地協会に対し※編集部追記)指導しました〉

〈今後の水着撮影会の開催の在り方等については意見も募りながら、専門家を交えた検討を協会に依頼しました〉

〈埼玉県、公園緑地協会として特定の政治団体等の意見に左右された事実はございません〉

中止による“賠償責任”誰が負う?

一方、グラつきまくりの運用で、迷惑を被ったのは、主催者と参加予定だったグラビアアイドルやコスプレイヤー本人、そして彼女たちを擁する所属事務所。イベントに自社のタレントを参加させる予定だったさる事務所関係者はこう話す。

「主催者側からは、中止になってしまい申し訳ないという話があっただけで特に補償などの話はないです。ウチからもするつもりはありません。ウチも仕事が急になくなったので、女の子に対しては特に何もしてやれないですね」

気の毒なのは、直前になって仕事を奪われた当のグラドルたちだ。

撮影会に出演予定だった人気グラドルの森咲智美(30)は自身のツイッターで〈本当に残念です。。。〉と胸中を吐露。

〈ファンの皆様には予定してもらっていたと思うので、撮影会を調整してもらってます! 決まったらまたお知らせしますねっ〉とファンをおもんぱかり、さらには、〈グラビアは性の商品化と言われるのが残念だな。捉え方は人それぞれだけど、誇りもってやってるし、グラビアって体だけで表現してて芸術じゃないかな?〉とつぶやいた。

「直前になって中止を余儀なくされた主催者にとっては、メイクやスタイリスト、公式カメラマンなどスタッフの人件費から、手配していた弁当など、相当な損害が出ているでしょう。また、地方から泊まりがけで上京して参加予定だったお客さんなども同様です」(グラビア関係者)

こうした損害はどうするのか。前出の杉山弁護士はこう話す。

「違法行為によって賠償責任を負うとすれば、まず第一に公園緑地協会の可能性が高いでしょうね。また経緯と関与の仕方によっては、埼玉県も共同で責任を負いうるといったところでしょうか。ただし、実際問題として、中止の要請(お願い)と主催者側の任意の中止のような形式をとっていることから、法的な賠償責任を問うのは容易ではなく、肝心の訴える当事者たちはビジネス上の制約を受けますので、誰も賠償責任を負わないでおしまいになる可能性も高いです」

一部の人たちの私見にすぎないクレームと、それを明確な法的根拠もないまま安易に受け入れた県と公園緑地協会の責任は重い。

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