千鳥・大悟の“デニムイジリ”は「名誉棄損」? 弁護士「批判表現としての性質を持っている」

弁護士JP編集部

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千鳥・大悟の“デニムイジリ”は「名誉棄損」? 弁護士「批判表現としての性質を持っている」
「テレビ千鳥」公式ホームページより(https://www.tv-asahi.co.jp/tvchidori/)

お笑いコンビ・千鳥の大悟さんが5月4日放送のテレビ朝日「テレビ千鳥」の企画「春服を買いたいんじゃ」で人気ブランド「ジョン ローレンス サリバン」のデニムをはいて“ボケた”ところ、同ブランドのデザイナーが15日にインスタグラムを更新し「ブランドイメージを、自分達の笑いの為に一瞬にして踏み躙られた」と怒りをあらわにした(投稿は現在削除)。

これを受け「テレビ千鳥」は19日に公式サイトを更新し「お詫び」を掲載した。

「テレビ千鳥」公式サイト(https://www.tv-asahi.co.jp/tvchidori/)より

“賛否両論”コメント1800件以上

デザイナーのインスタグラム投稿には5月19日現在、1800件以上のコメントがついており、デザイナーに同情する意見とともに、「世に出した以上、商品に対する価値観の違い、賛否があるのは当然」「この投稿、逆効果だと思います」「投稿のせいで、毎回楽しみにしていたこの企画がなくなりそうでガッカリ」など、デザイナーを批判する声も多く見られた。

また、もともとブランドのファンだという人や、“イジられた”デニムの愛用者からも「この投稿を見てブランドイメージが下がりました」「マジでショックです。何でキレちゃうんですか?何でSNSで拡散しちゃうんですか?」といった“苦言”が寄せられていた。

一方、お笑いタレントのふかわりょうさんは、17日放送のTOKYO MX「バラいろダンディ」で「どんな感想を思うか自由」とした上で「電波に乗せたらそうとは言えなくなるんですよ」と持論を展開した。

“デニムイジリ”は「名誉棄損」?

今回の一件、弁護士はどう見ているのだろうか。エンタメに詳しい杉山大介弁護士は「デザイナーは怒って当然ですし、でもこういうイジリもまた、批判表現としての性質を持っています」と指摘する。

「表現は、その相互作用によって生み出される価値があるからこそ保護するのであって、『心を込めて作った人がいて傷つくから批判してはいけない』みたいな考え方はまったく当てはまりません。

たとえば、作られた曲をふざけた歌詞に変えて、もとの曲の陳腐さを批判するというのも、原曲を侮辱はしていますが『批判表現』です。

今回の件に関しては、まず『法律』に触れるものがあるかという話なので、“デニムイジリ”によって売上が大きく下がったとしても、だから違法とはならないでしょう」(杉山弁護士)

また杉山弁護士は「人種を揶揄するとか、一部の憲法的価値に反するものを除いて、言葉や表現での殴り合いが“表現の自由”の本来の姿であるという観点は、特に法という権力が介入するかという場面では、忘れてはならない視点です」と見解を述べる。

SNSで瞬く間に情報が拡散されてしまう昨今、発信された情報が「誰にどのような形で届くか」には敏感にならざるを得ないのが現状だ。今回の騒動は、大悟さんとデザイナーのどちらの立場からも、現代における“表現”の難しさを考えさせられる一件だったように感じられてならない。

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