産経新聞の誹謗中傷引用「殺すぞ」に声を上げた男の戦い

弁護士JP編集部

弁護士JP編集部

産経新聞の誹謗中傷引用「殺すぞ」に声を上げた男の戦い
記者会見後の大袈裟太郎さん。アーティスト活動をしていた頃とは雰囲気が大きく変わっている(12月7日 霞が関/弁護士JP編集部)

ジャーナリスト「大袈裟太郎」こと猪股東吾さん(39)が名誉棄損で産経新聞を訴えた裁判の第1回弁論が、12月7日に東京地裁で開かれた。

俳優としてIWGPなどにも出演。現在は沖縄在住のジャーナリスト

大袈裟太郎さんは、音楽家・アーティストとして活動し、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』や園子温監督映画『TOKYO TRIBE』などにも出演経験がある人物。2016年ごろから政治活動を開始し、現在は沖縄に在住しながらジャーナリストとして活動している。

訴状などによると、提訴の発端は、2017年11月10日に産経新聞が公開したインターネット記事。前日、大袈裟太郎さんは名護市辺野古で行われた基地反対運動の抗議行動中に逮捕されており、当時の産経新聞那覇支局長の署名入りで「辺野古で逮捕された『大袈裟太郎』容疑者、基地容認派も知る“有名人だった”」と題する記事が公開された。

記事では大袈裟太郎さんについて、「暴力の限りを尽くしている」「社会を荒らしている」などと報道。さらにはインターネットの引用として、逮捕を「朗報」と表現し、県民から「天誅が下った」「沖縄から追放、強制送還すべき」との声が上がっていると紹介した。

見知らぬ人から「殺すぞ」

報道後、大袈裟太郎さんはスーパーで買い物中に見知らぬ人から胸ぐらをつかまれて「殺すぞ」と言われたり、道を歩いているだけで罵声を浴びせられたり、私生活を脅かされ続けているという。

7日の裁判後に開かれた記者会見で、大袈裟太郎さんは「記事に記載された『暴力』という言葉にどんどん尾ひれがついて『子どもを誘拐した』『猫を虐待した』『薬物をやっている』など根も葉もない噂がささやかれるようになった。このままでは、自分が暴力を尽くした人間であるかのように記憶に残ってしまうと思い、裁判を起こす決意をしました」と胸中を語った。

記者会見をする大袈裟太郎さん(左)、代理人の神原元弁護士(右)
(12月7日 霞が関/弁護士JP編集部)

また代理人の神原元弁護士は「たとえインターネットの引用だとしても、拡散した人も責任を負うのは当然。記事に記載されていた発言が本当にあったのかも確証が持てず、全国紙ともあろう産経新聞がネットの声を拾って報じていることが問題なのではないか」と憤った。

なおインターネットの拡散については、11月30日に東京地裁がジャーナリスト・伊藤詩織さんに対する誹謗中傷をリツイートした人に11万円の賠償命令を下している。(伊藤詩織さんへツイッターで誹謗中傷の漫画家、リツイートした男性2人へも賠償命令下る

産経新聞は第1回弁論で当該の記事を配信したことは認めつつ、原告の請求棄却を求めている。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア