伊藤詩織さんへツイッターで誹謗中傷の漫画家、リツイートした男性2人へも賠償命令下る

弁護士JP編集部

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伊藤詩織さんへツイッターで誹謗中傷の漫画家、リツイートした男性2人へも賠償命令下る
判決後、記者会見を開いた伊藤詩織さんと弁護団(11月30日 霞が関/弁護士JP編集部)

「枕営業」などイラストをツイッターに投稿

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、ツイッターに投稿されたイラストによって名誉を傷つけられたとして、漫画家はすみとしこさんら3人を相手取り、損害賠償、投稿削除、謝罪広告を求めた裁判で、11月30日、東京地裁ははすみさんに88万円、はすみさんの投稿をリツイートした男性2人にも、それぞれ11万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

訴状などによれば、2017年6月頃から、はすみさんは伊藤さんを思わせる女性と「枕営業」などを併せたイラスト漫画をツイッターに投稿。この際に、男性2人がこれらの投稿をリツイートした。伊藤さんはこれらのイラストが自分と酷似している点などを指摘、慰謝料など550万円、投稿の削除、謝罪の掲出を求めてはすみさん、男性2人を提訴していた。

はすみさん側はこれらに対し、自身のツイッターやYouTubeなどで「イラストの女性はアニメのキャラクターがモデルで伊藤さんとは無関係」と主張していた。

元ツイートの内容に賛同する行為の基準

この日会見を行った代理人の山口元一弁護士は、
「ツイートの特に枕営業などについては真実相当性がなく、端的にいってデマということが認められました。賠償額については、日本の名誉毀損全般に関わる問題なので、この件だけで判断はできませんが、もう少し多くてもいいのではないのかと個人的には思っています」と述べ、

謝罪文の掲出の請求が棄却された点についても、
「訴訟の最中にはすみさんのアカウントが停止になり、事実上見れなくなったので謝罪広告までは必要ないという判断の基礎になっています。全体としては主張がほぼ認められました」(山口弁護士)として判決を評価した。

裁判で注目を集めた「リツイート」に関しても、
「基本的にリツイートしつつ自分の意見を添えたり、前後のツイートの内容で投稿者の意図が読み取れるというような事情がない限り、元ツイートの内容に賛同する行為だと認定しています。意見を前後に付せば違った評価になり得ます」(山口弁護士)という裁判所の基本的な考え方を示した。

その上で、リツイートした被告2名については、
①まずリツイート時点でコメントを付していない。
②前後のツイートで、伊藤さんに対して必ずしも良い感情を持っておらず、むしろはすみさんに対して賛意を示している。
とのことから、「はすみさんの意見に賛成する行為を自分の意思として表現したものであるというのがこの判決の認定です。考え方としては妥当だと思います」(山口弁護士)と語った。

判決の妥当性へ評価を示した山口元一弁護士(11月30日 霞が関/弁護士JP)

「大きな一歩だと考えています」

会見の同席した伊藤詩織さんは判決について、
「他人の表現であっても、自分自身の表現行為であることが認められたというのは、今のSNSを使うこの環境下で、とても意義のある判決だと感じています」としながら、「リツイートは簡単にできますが、街中に誹謗中傷のポスターを貼られるより、メガフォンで叫ばれるよりも、当事者としては恐怖を感じる行為です」と被害当事者として、発言者への責任と認識も訴えた。

会見の最後に伊藤さんは、
「意見陳述書を再読した際にまだ苦しい部分がありました。現在の法律では救われることの少ない性犯罪、被害者の方々は本当に声を上げづらい。私はそれを変えたいと思っているのに、再生産しているんじゃないかという葛藤もありました。『こんな話をしたら、こんな目に合うんだよ』という悪い例になりたくありませんでした。どんな金額であっても、どんな言葉であっても、ひとつの大きな一歩だと考えています」とあらためて裁判を進める上での苦しさ、決意を述べた。

判決を受け、漫画家のはすみとしこさんは11月30日、ブログで「判決に関するコメントは、判決文全てを読んでいないのでできませんが、判決を重く受け止めたいと思います」と発信している。

「#伊藤詩織さんを支持します」のアクションへ感謝を述べる伊藤さん(霞が関 11月30日/弁護士JP)
はすみさんのブログに綴られたコメント(ブログ「はすみとしこの世界」より)
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