“身代わり”犯を警察が誤認逮捕の混乱… 「自首した人」と「真犯人」それぞれの罪

弁護士JP編集部

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2022年11月25日 09:45

“身代わり”犯を警察が誤認逮捕の混乱…  「自首した人」と「真犯人」それぞれの罪 「誤認逮捕」に法律上の定義付けはなされていない(papa88/PIXTA)

先月8日の夜、青森県内でアパートの住人が窓越しに殴られるという傷害事件が発生、翌9日に青森県警は「誤認逮捕があった」と発表した。同時に「身代わり逮捕だった可能性」についても言及し、ネット上では「誤認逮捕」と「身代わり逮捕」それぞれの説明を求める声があがった。

事件当初、警察は40歳代男性Aが容疑を認めたことから傷害容疑で逮捕。しかし、目撃者の証言から、この男性は被害者を殴っていなかったことが判明し、約1時間後に釈放された。その後、男性と一緒にいたトラック運転手の男B(48)が、窓ガラスを割った器物損壊容疑で緊急逮捕された。男は容疑を認めているが、住人への暴行は否定しているという。

この事件は一見、関係性・状況が分かりにくいが、もし実際「身代わり逮捕」が行われたとすれば、Bに頼まれたAが自首し、警察が「誤って」逮捕したという構図だろう。このように、犯行を認める人を逮捕した場合も「誤認逮捕」にあたるのか。また「身代わり逮捕」とはどのような状況なのか。刑事弁護を多く対応する堀田和希弁護士に聞いた。

自首があっても警察の「誤認逮捕」?

身代わり逮捕と呼ばれるものは、軽微な犯罪などで、“真犯人”の代わりに自首するイメージがあります。今回のケースのようなことはよく起こるのでしょうか?

堀田弁護士:あまりない事例かと思います。犯人隠避(身代わり)に多いのはドライバー業務をしている方が免許停止の処分などを恐れて、家族や友人に身代わりを依頼するケースなど、自動車運転に関するものが多いかと思います。

今回の事件の報道に対して、SNSやネット掲示板では「身代わり」が本当だとすれば「誤認逮捕」とは言わないのではないか? という意見もあります。逮捕した人物が犯行を認めている場合や、身代わりとして自首・出頭してきた人を逮捕した場合でも、警察の「誤認逮捕」となるのでしょうか?

堀田弁護士:誤認逮捕という言葉は法律上の文言ではないため、法律上の定義付けがなされていません。そのため、今回のケースが「誤認逮捕」に当たるかどうかを法的に断言することはできないです。

ただ、私見として、誤認逮捕が「警察などの捜査機関がある人物を特に明確な根拠もなく被疑者だと誤って認識して逮捕したものの、実際にはその人物は無実であったことが判明した場合の逮捕行為」を意味するのであれば、本件のように逮捕された者が犯行現場で犯行を認めたために逮捕した事案(身代わり逮捕事案)であれば、逮捕された者が犯行を認めていることから、「捜査機関が特に明確な根拠もなく被疑者だと誤って認識して逮捕した」とはいえず、誤認逮捕という表現は不適当ではないかと考えます。

身代わりになった人も結局逮捕される可能性が…

今回の事件では、最初に捕まった人は誤認逮捕として釈放されましたが、もし「身代わり」を引き受けていた場合、「犯人隠避罪」で再逮捕されるケースはないのでしょうか。

堀田弁護士:今回のケースが仮に身代わりだった場合、犯人隠避罪が成立する可能性が高く、再逮捕されることも十分あり得ます。ただ、仮に犯人隠避罪が成立しても逮捕されずに捜査される(在宅事件)となる可能性も高いかと思います。

なお、もし身代わりを行った男性が、実際に殴った者(真犯人)の親族だった場合、犯人隠避罪について最終的に裁量免除(刑法105条)を受けて処罰されない可能性があります。

身代わりになって逮捕された人は、真相を隠している時間が長ければ長いほど「犯人隠避罪」として重い罪に問われるのでしょうか?

堀田弁護士:真相を隠している時間が長い場合、その時間の分だけ捜査機関による真犯人の発見や身柄の確保を妨げているといえます。そのため、真相を隠している時間が長ければ長くなるほど国の刑事司法作用(犯人隠避罪における保護法益)を害するといえ、法定刑(3年以下の懲役または30万円以下の罰金)の範囲内で量刑がより重くなる可能性があります。

真犯人は本罪に加えて「犯人隠避罪の教唆犯」も

身代わりを依頼した真犯人も、本来の罪に加えて、別の罪に問われるのでしょうか? 

堀田弁護士:仮に真犯人が身代わりを依頼していた場合は「犯人隠避罪の教唆犯」となり得ます。

今回のケースでは傷害罪ですが、飲酒運転なのか傷害なのかなど、本来の罪状によって「犯人隠避罪の教唆犯」よりも重く処罰されることもあるのでしょうか。

堀田弁護士:犯人隠避罪の教唆犯は、本罪(今回のケースであれば傷害罪)とはまったく別ですので、本罪の内容によって処罰の重さが変わるということはありません。最終的には本罪と併合罪(※)として処理されることになるかと思います。

ただし、本罪の内容および依頼の方法によっては悪質と評価され、法定刑の範囲内で重く処罰される可能性はあります。

(※)併合罪とは、二つ以上の行為について、それぞれ別の犯罪が成立すること。

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