海産物「送り付け商法」急増! 「コロナで厳しい…」泣き落としのワナ

弁護士JP編集部

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海産物「送り付け商法」急増! 「コロナで厳しい…」泣き落としのワナ
「断ったはず」が代引配送で商品が届いてしまった人も…(gontabunta / PIXTA)

新型コロナウイルスの混乱に乗じた「海産物の電話勧誘販売・送り付け」が急増している。

国民生活センターによると、全国の消費生活センター等に寄せられたトラブルの件数は2017〜2020年度に2000件前後だったのに対し、2021年度は2倍以上の5189件にも上ったという。

PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)にみる海産物の電話勧誘販売・送り付けに関する相談件数(国民生活センター 報道発表資料より)

「コロナで厳しい」泣き落としの勧誘

国民生活センターの担当者によれば、相談事例として目立つのは、電話口で「コロナで経営が厳しいので支援してほしい」「買ってもらわないと困る」など泣きつかれるような形で、事業者に無理やり契約を結ばされてしまったというもの。購入額に見合わないような質の悪い商品が届いた人、電話口で断ったつもりが代引配送で商品が届いてしまった人など、さまざまだ。被害者の約9割は50代以上の中高年〜高齢者で、最も多い年代は60代(26.4%)だという。

「電話勧誘のターゲットリストがどのように出回っているのか、またそのようなものが存在するのかは、相談情報から直接的に読み取ることはできません。しかし、電話口で事業者から『以前も注文してもらったことがある』『購入履歴を見て電話している』などと説明されたという声も聞かれます。

たとえ心当たりがなくても、事業者がご自身の名前や住所を知っていたことで『もしかしたら何年も前に購入したことがあるかも…』と、記憶が曖昧なまま契約を結んでしまう方もいるのが現状です」(国民生活センター・担当者)

送り付け商品は「直ちに処分、代金支払い不要」

万が一、海産物の電話勧誘販売・送り付けトラブルに巻き込まれてしまった場合は、どのように対処すればよいのだろうか。消費者被害に詳しい荒居聖弁護士は、手口別に以下の対応を呼びかける。

  • ①電話勧誘で契約を結んでしまった
    →契約書面を受け取った日から8日以内であれば「クーリング・オフ」で返品することができるので、消費者ホットライン「188」へすみやかに相談する
  • ②電話勧誘を断ったつもりが商品が届いてしまった
    →直ちに処分する(代金を請求されても支払う必要はない)
  • ③前触れなく突然商品が送り付けられた
    →直ちに処分する(代金を請求されても支払う必要はない)

②③のように「直ちに処分する」ことは、2021年7月6日に施行された「改正特定商取引法」によって可能になった。

「注文や契約をしていない商品が一方的に送付された場合、以前は商品の送付後、14日が経過するまで処分ができませんでしたが、特定商取引法の改正によって、消費者側は直ちに処分をすることができるようになりました。

②③のケースで万が一代金を支払ってしまった場合にも、返還請求することは可能なので、すみやかに消費者ホットライン「188」へ相談するようにしてください」(荒居弁護士)

改正法で「送り付け商法」は撲滅できる?

特定商取引法の改正によって、事業者が一方的に商品を送り付けて代金を支払わせる「送り付け商法」は撲滅されるのだろうか。荒居弁護士は「消費者が改正法について広く熟知しない限り難しい」と指摘する。

「法律によって送り付け商法に関するルールは変わりましたが、それを知らない消費者は、まだまだ多いものと思われます。今後はルールを広く浸透させることで、事業者側に『商品を送っても消費者が処分をし、代金を支払ってくれない』と考えさせるようにしなければいけません。

また、改正法がカバーしきれていない問題としては、『事業主が売買契約に基づかないで一方的に商品を送付すること自体を制限していない』点が挙げられると思います。

事業主が売買契約に基づかないで商品を送り、消費者に対して『商品を送ったので、代金をお支払いください』などと言った場合に、無視する消費者もいると思いますが、他方で、怖くなって代金を支払ってしまう消費者も多いのではないでしょうか。

ただ、現実問題として、商品自体は郵便や宅配便などで送る都合上、事業主が売買契約に基づかないで一方的に商品を送付すること自体を制限することは困難だと思われます。

したがって、身に覚えのない商品が送られてくる可能性があることを前提に

  • 注文や契約をしていないにもかかわらず、金銭を得ようとして一方的に送り付けられた商品については、直ちに処分をすることができること
  • 自分宛の身に覚えのない商品の代金を支払う必要がないこと
  • 身に覚えのない商品を処分したことを理由に事業主から代金の支払いを請求され、誤って代金を支払った場合には、その誤って支払った金銭の返還の請求が可能であること

を覚えておくとよいでしょう」(荒居弁護士)

消費者一人ひとりの行動が、送り付け商法の根絶に繋がる。自分や周りの人の元に突然、身に覚えのない商品が届いた場合は、適切に対処してほしい。

取材協力弁護士

荒居 聖 弁護士
荒居 聖 弁護士

所属: ベリーベスト法律事務所 八王子オフィス

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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