コロナ禍の持続化給付金「デリヘル店」の請求認められず 「差別を助長・拡大する判決」原告側は控訴

弁護士JP編集部

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コロナ禍の持続化給付金「デリヘル店」の請求認められず  「差別を助長・拡大する判決」原告側は控訴
判決後に会見を行った弁護団(6月30日 霞が関/弁護士JP編集部)

持続化給付の対象から性風俗事業者を除外したのは、憲法が保障する「法の下の平等」に反し違憲だとして、関西地方でデリバリーヘルス(デリヘル)を営む事業者が「持続化給付金と家賃支援給付金」(計約450万円)を支払うよう国を訴えた裁判の判決で6月30日、東京地裁(岡田幸人裁判長)は事業者側の請求を棄却した。

「特定の性風俗事業者」が給付金対象から外された理由

「持続化給付金」は新型コロナの影響を受け、時短や休業が死活問題となる事業者に向けた救済制度のひとつである。売り上げが前年同月比で50%以上減少した事業者などに対する制度(中小企業・小規模事業者上限200万円 フリーランスを含む個人事業主上限100万円)だが、風俗店を経営する原告は「特定の性風俗事業者」にあたり、「社会通念上、公的資金による支援対象とすることに国民の理解が得られにくい」とされ、「家賃支援給付金」とともに支給の対象から外されていた。

性風俗関連特殊営業が、新型コロナウイルスに伴う事業支援の給付金対象から外されたこと、その根拠である規定が、憲法14条第1項「法の下の平等」に違反する命の選別、職業差別にあたるとして、原告は国を相手に提訴していた。

判決では、性風俗業者を給付対象から除外した規定について、「政策的・政治的な給付基準の策定は行政の合理的な裁量(大多数の国民の理解を得られるかどうか、政府は考慮することができる)」に委ねられるとして、憲法14条に違反しない(合憲)と判断された。

「差別を助長・拡大する役割を果たしていることは大変問題」

この日会見を行った原告訴訟代理人の平裕介弁護士は、「『政治的判断』というのは新しいというか、やや意外。『政策的判断』であればまだ分かるが、政治的判断というのは行政法の観点からテクニカルなワード。しかし、これは非常に問題があり、この手の全事業者を除いては、社会保障に近い給付金のたぐいのものについても、極めて広い裁量を認めるという裁判所のメッセージに驚いている」と判決の印象を語った。

また、その内容についても、「『大多数の国民』とは誰なのか、(根拠となる)資料を提出していない。裁判長が被告(国)ですら言っていないことまで、理由付けの補強をしたのは極めて問題ではないか。裁判所(司法)が国の主張を補強して、差別を助長・拡大する役割を果たしていることは大変問題があり、残念」と批判した。

同じく代理人のひとりである亀石倫子弁護士は、「裁判所が国による職業差別を容認、性風俗事業者を差別しても構わないというメッセージを社会に与えた。今日の判決は、原告側が提示した、問題意識とまったく向き合っていない判決。

司法は権力から独立して、監視して、少数者の権利を守るという役割を果たしていない。このままでは、司法が国民の信頼を失うのではないか。そのような印象を抱く判決の内容でとうてい容認できない。本日控訴し、引き続き争っていきたい」と話した。

「この判決に心折れることなく闘っていきます」

記者会見では、原告のコメントも代読された。

「職業には貴賤(きせん)があるそうです。法律で認められている職業で、納税をしていても、他のあらゆる職業と性風俗業は違うのだそうです。まともな職業でないのだそうです。裁判所までもがそう言いました。裁判所によっておとしめられました。私たち性風俗業の人間は、世の中から後ろ指を指されても仕方ないような状況となってしまいます。

むしろ、今も現在も、世の中から後ろ指を指されている。だからあきらめろ、後ろ指を指されても仕方ないのだと裁判所から言われています。世の中にはさまざまな仕事があり、そこには働く人がいて、生活があって、仕事に誇りを持っている人もいる。まともな人間であれば、法律に違反しない限りは、すべてが大切な仕事なのだと説明をするのではないでしょうか。

そうでなければ、それは職業差別だからです。職業差別をしてはいけないけれど、『性風俗だけは別だ』という裁判所は、まともな仕事をしているとは思えません。ここに来る人を否定し、未来を閉ざし、この職業をおとしめ、危険に追いやる、心のない判決でした。とても危険な判決だと思います。非常に残念です。しかし、私はまだ、裁判所を信じたいです。この判決に心折れることなく闘っていきます」

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