星野源さんネット上のうわさは「事実無根」 虚偽情報“拡散”した人に問われる責任とは?

弁護士JP編集部

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星野源さんネット上のうわさは「事実無根」 虚偽情報“拡散”した人に問われる責任とは?
星野源さんのXアカウント(@gen_senden)より

歌手で俳優の星野源さんの不倫をほのめかす投稿が22日深夜にかけてX上で拡散された。

星野さんの所属事務所「アミューズ」は法務部のXを更新。「当該投稿にある事実は一切ない」とし、虚偽の情報拡散および発信に対し「法的措置を検討する」と声明を発表した。

異例の早朝「声明」まで…

きっかけは270万人超のフォロワーを持つインフルエンサーによる、「情報募集」の体裁をとった投稿だった。

〈【ゆる募】超有名女優とドラマ共演して電撃結婚した男性歌手が、結婚後に今度は番組共演した某NHKアナとW不倫し、今年の元旦に某週刊紙が本件をすっぱ抜く予定だったものの男性歌手の所属事務所が10億円を支払って記事を揉み消した件(女優&歌手は事実上の離婚状態だが仕事への影響を考え離婚せず) (NHKアナは新婚で、旦那と新居に引っ越して幸せな生活を始めたばかりだったが、不倫バレによって新居を追い出され、現在はネカフェを転々とする生活を送る)に詳しい方をDMで募集しています!!〉

投稿で個人は特定されていないが、X上では、男性歌手はドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(2016年)の共演者である新垣結衣さんと結婚した星野源さんではないか、NHKアナウンサーは、星野さんと音楽番組で共演し、今月、週刊誌によって離婚とネットカフェに宿泊する様子が報道された林田理沙アナウンサーではないかとする臆測が猛スピードで広まった。

その結果、Xのトレンドワードを一時「星野源」「新垣結衣」「林田アナ」「不倫」などが埋め尽くした。事態を重く見たアミューズは、異例といえるだろう“午前3時台”に冒頭のように声明を公表した。

インフルエンサーの投稿は「名誉毀損」に当たるか

法的措置を示唆したアミューズだが、騒動の発端となった投稿をしたインフルエンサーは今後、星野さんらの名誉を毀損したとして訴えられる可能性があるのだろうか。

インターネット上の誹謗中傷・名誉毀損に詳しい杉山大介弁護士は、インフルエンサーの行為が名誉毀損になり得るかには「争いが生じる」と慎重だ。

「〈超有名女優〉〈ドラマ共演〉〈電撃結婚〉というキーワードや、多くの人が実際に星野源さんと新垣結衣さんだと認識した点から、この投稿が星野さんを示すものであるとして『同定可能性』が認められる余地は十分にあります。ただし、当然に認められるわけではなく、争点になるでしょう。

また、とりあえず名誉毀損の行為にはあたるとして、法律家はそこから違法性が消滅する可能性はないだろうかと検討していきます。名誉毀損だからすなわち違法であるという訳ではないので注意してください。

極端な話ですが、真実ではなかったとしても、真実だと誤信したのに根拠ある資料の提供を受けていれば、インフルエンサーは違法ではないという結論もあり得るのです」(杉山弁護士)

インフルエンサーの投稿が誹謗中傷に当たるかどうかは、「司法判断」を仰ぐことが必要になるようだ。

アミューズが「法的措置」取れば“発信者”はどうなる?

では、アミューズが司法判断を仰ぐため、実際に法的措置を取った場合、今後どのような手続きが行われるのだろうか。

杉山弁護士は「アミューズはインフルエンサーが“どこの誰か”をまだ特定できていない場合、『発信者情報開示請求』(※)などによって氏名や住所を特定するところから始まります」と説明する。

※インターネット上の投稿等によって権利を侵害された人が裁判所へ申し立てを行い、プロバイダに対し投稿者の氏名や住所等の開示を求めることができる制度。

その上で、インフルエンサーが“どこの誰か”特定できれば、「損害賠償請求、刑事告訴を検討することになるでしょう」(杉山弁護士)

“拡散”に問われる責任

また、今回アミューズから法的措置を取られる可能性があるのは、最初の投稿をしたインフルエンサーだけではない。

杉山弁護士によれば、「インフルエンサーの投稿をリポストした人」「不倫が事実かのように引用ポストなどを用いて投稿をさらに”拡散”させた人」「星野さんらに直接、誹謗中傷等のメッセージを送った人」等も、刑事的・民事的な責任を問われる可能性があるという。

「イメージで言えば、インフルエンサーの言葉を一言一句違わず大声でわめきたてたのと一緒ですから、当然責任は問われます。

ちなみに法的に言えば、周りに伝えて星野さんらの評価を低下させた人の方が責任は生じやすく、直接メッセージを送る行為の方が責任は問われにくいです。直接の言葉で感情を害させるのは『名誉感情侵害』という民法上の違法にはなり得ても、刑法にも規定される名誉毀損ではありませんので」(杉山弁護士)

なお、アミューズは「SNSなどを通じたアーティストに対する誹謗中傷などの違法な投稿、コメント、ダイレクトメッセージ等については、随時、証拠保全をおこなっています」としている。

弁護士がアミューズの動きに注目するワケ

今回の騒動について杉山弁護士は「アミューズの姿勢を肯定的にとらえている」として、その理由を次のように語った。

「残念ながら、日本の司法では、X等の“収益化システム”(※)を上回る経済的ダメージを投稿者に負わせることはできません。

※投稿の閲覧数に応じてXから金銭が支払われるシステムで、閲覧数を稼ぐための虚偽・扇情的な投稿が問題となっている。

一般人であろうが、情報に責任を持たない人間がきちんと責任を問われ、少しでも事実に対する畏怖感を抱いた方が、今のネット社会には望ましい効果をもたらすように思います。誤解を恐れずに言えば、言論の“萎縮”、大歓迎です。虚偽の事実に表現としての価値はない、真実をもとに話すのは最低限の前提であるという理解が共有されていない人達には、静かになってもらった方が良いです。また、公権力が刑事罰を掲げて介入するよりは、コストをかけられる私人が立証して責任を問う方が良いとも思っています。

その点、今回、法務部の名前まで掲げて強く出たアミューズの動きに注目しています」

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