新発足の「特殊詐欺連合捜査班」が早くも初立件…事件特性に合わせた“発生地主義”撤廃に透ける警察の本気度

弁護士JP編集部

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新発足の「特殊詐欺連合捜査班」が早くも初立件…事件特性に合わせた“発生地主義”撤廃に透ける警察の本気度
4月発足の「特殊詐欺連合捜査班」で早くも結果を出した警視庁(kash* / PIXTA)

4月23日。警視庁は何者かと共謀し医療費の還付金を受け取れると惑わせ、埼玉県内の70代女性から現金約50万円をだまし取ったとして東京・足立区の職業不詳、小辻秀昇容疑者(53)を窃盗容疑等で逮捕した。小辻の逮捕にあたり、警察が投入したのは4月1日に警視庁に発足したばかりの『特殊詐欺連合捜査班』だったという。

社会部記者が言う。

「今年1月、大阪府内で起きた別の特殊詐欺事件に関連して大阪府警から依頼を受け、『特殊詐欺連合捜査班』が捜査を進めていたところ小辻の存在が浮上。小辻は今年1~4月に埼玉や愛知などで起きた特殊詐欺事件約20件に関与したと見られています」

増加の一途辿る特殊詐欺事案への対抗策

今回の事件で投入された『特殊詐欺連合捜査班』は近年、増加の一途をたどる特殊詐欺事案に対抗すべく警察庁主導のもとで発足が進められてきた。

「特殊詐欺の電話は全国からかけられていますが、かけ子や出し子のリクルートおよび現金自動預払機(ATM)からの現金の引き出しは首都圏に集中しています。これまで警察は事件が起きた都道府県の警察が捜査権限を持つ〝発生地主義〟が原則であり、容疑者の拠点が都道府県にまたがっていた場合、そのたびに出張などが伴い、物理的にも時間的にもロスが生じていました。そうしたロスを解消するために連合捜査班は発足されました」(同前)

全国の精鋭集めた専従部隊約500人で特殊詐欺Gへダメージ

特殊詐欺連合捜査班は東京、大阪などの大都市圏の7都府県に計約500人の専従部隊を設置。そのうち警視庁には、警視庁と各都道府県警から集められた約200人からなる専従班を配備し、愛知、大阪、福岡にはそれぞれ2~40人の専従捜査員を配置しているという。

「これまでも公安警察では都道府県にまたがった情報の共有や捜査は行われてきましたが、特殊詐欺などを捜査する刑事警察ではそのような捜査はやや垣根がありました。ですが、今回『特殊詐欺連合捜査班』が発足したことによって、ATMからの引き出し画像の取得をはじめ、発生地から依頼を受けた都道府県警が権限を持って捜査を行えるようになり、捜査の迅速化によって特殊詐欺グループには打撃を与えることになると思います」(同前)

昨年一年間に全国で確認された特殊詐欺の認知件数は1万9033件と過去最多で、被害額も441億2000万円となっている。

そうした中、初の特殊詐欺連合捜査班の摘発事例となった今回の事件――。犯行グループの手口も年々巧妙化しており、特殊詐欺連合捜査班の今後の捜査に注目したい。

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