「JR池袋駅立教大生殺人事件」被害者遺族が法務大臣に提言書を提出
4月16日、1996年に池袋駅構内で殺害された小林悟さんの父親である小林邦三郎さんは、犯罪被害者支援や犯罪防止に関する提言書を法務大臣に宛てて提出した。
「JR池袋駅立教大生殺人事件」の経緯
事件当時、悟さんは21歳、立教大学の4年生だった。
1996年4月11日午後11時半ごろ、帰宅途中に池袋駅山手線のホームで会社員風の男に絡まれ、あごを殴られ転倒した際に後頭部を強打。5日後の1996年4月16日、搬送された先の病院で死亡した。
1997年、医師の処置に落ち度があったとして、邦三郎さんは病院に対して損害賠償請求訴訟を提起。のちに病院側が約6500万円を支払うことで和解した。
当初はケンカの末に起こった「傷害致死事件」として扱われていたが、2002年に邦三郎さんが3万5000人分の署名と公訴時効延長を求める嘆願書を法務省に提出。
結果、傷害致死罪の公訴時効(当時7年)が成立する直前の2003年3月に、容疑が殺人罪(当時15年)に切り替えられた。
「法を守る」ために遺族が時効撤廃の適用を拒否
2006年、邦三郎さんは「犯罪被害者家族の会 Poena(ポエナ)」を設立。犯罪防止活動や犯罪被害者・被害者家族の支援活動のほか、殺人事件など凶悪事件の時効の延長を求める活動を行ってきた。
2010年に刑事訴訟法が改正され、殺人罪など人を死亡させた犯罪のなかでも死刑にあたるものについては公訴時効が撤廃された。
しかし、邦三郎さんは殺人罪の時効が撤廃されたこと自体については賛成しながらも、過去にさかのぼり時効撤廃が適用されるのは「法の原則に反する」と考えたことから、警察庁に捜査の打ち切りを求めた。2020年12月11日、悟さんの事件は容疑者不詳のまま書類送検されて事実上、捜査が終結。
「(時効の撤廃を)改正前の事件に適用することは違法である。法の存在意義と平等を侵すばかりか、法の制定する意味も無くすことになる。私が息子の事件に対して、捜査打切の要望をしたことは、国のために必要と思ったからです。法は制定し施行されてから効力を得るものである。」(提言書より)
提言書では、2022年に施行された改正少年法により18歳と19歳を「特定少年」として死刑を含む厳罰を科せる規定が、施行前である2021年に甲府市で起こった殺人放火事件に適用され、事件当時事件当時19歳であった被告が死刑判決を受けたことについても、法の精神に反するものであると批判されている。
ほかにも、提言書には「北朝鮮による拉致事件」や「サリン事件」、「死刑制度と終身刑について」や「精神障害者に対して」など、さまざまな項目に関する邦三郎さんの意見が記載されている。
提言書の提出と同日に行われた記者会見では、邦三郎さんは「考えさせる報道をお願いしたい」と、マスコミの報道についても提言した。
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