グローバルダイニング判決、都の時短命令は「違法」 小池都知事の注意義務違反は認められず

弁護士JP編集部

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グローバルダイニング判決、都の時短命令は「違法」 小池都知事の注意義務違反は認められず
判決後、裁判所前で撮影に応じる弁護団・倉持麟太郎弁護士とグローバルダイニング・長谷川耕造社長(5月16日 霞が関/弁護士JP編集部)

新型コロナ対策の時短命令を巡り、「モンスーンカフェ」などを展開する飲食チェーンのグローバルダイニングと東京都が争っていた裁判の判決で、16日東京地裁は「都の時短命令は違法」と判断した。

一連の裁判では、当該の命令が「新型インフルエンザ等特別措置法(以下、特措法)」第45条第3項の定める「特に必要があると認められるとき」に当てはまるかが争点となったが、判決では「特に必要があったとは認められない」とされた。行政による新型コロナ対策の時短命令について、唯一かつ初めての司法判断が下されたことになる(※1)。

なお、時短命令を下した小池百合子都知事の注意義務違反は認められず、グローバルダイニングが都に対し請求していた損害賠償104円(命令期間1日につき1店舗あたり1円〈1円×26店舗×4日間〉)は棄却された。

(※1)特措法第45条第3項では、都道府県知事が施設管理者等に対し、措置を講ずべきことを「指示する」ことができるとされていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い2021年2月3日に同法が改正され、「命ずる」ことができるとされた。

赤線部分が特措法第45条第3項(e-Gov法令検索より。一部加工)

裁判の発端は小池百合子都知事による「命令」

裁判のきっかけとなる出来事は、2021年3月18日に起こった。

当時、首都圏1都3県は二度目の緊急事態宣言下にあり、都は飲食店などに対し時短営業の「要請」をしていた。しかし、グローバルダイニングは「行政からの協力金やサポートでは時短要請に耐えられない」ことなどを理由に平常営業を継続。そんな中、小池百合子都知事は要請に従わない店舗に対し、特措法第45条第3項に基づき時短営業するよう「命令」を下した。

グローバルダイニングは命令に従ったが、命令発出から4日後の2021年3月22日、憲法で保障された「営業の自由」が侵害されたとして東京都を提訴した。また同社は、同日に時短命令の対象となった27店舗のうち、26店舗が自社の展開する飲食店だったことから、命令が「見せしめ」「狙い撃ち」の措置であることを主張。都が命令理由として「(同社・長谷川耕造社長が)緊急事態措置に応じない旨を強く発信するなど、他の飲食店の20時以降の営業継続を誘発するおそれがある」としたことも問題視し、「表現の自由」や「法の下の平等」も侵害されたとして、違憲性を争っていた。

法廷で否定された「時短根拠の不正確性」

一連の裁判で、東京都は時短命令について「特措法の要件を満たしており、違憲性がない」と主張してきた。一方グローバルダイニングは、京都大学・藤井聡教授(都市社会工学)の証言などにより、都が時短命令の根拠としてきたデータや資料の不正確性を指摘。飲食店の時短営業による感染拡大防止の効果を否定し、都による権利侵害を主張してきた。

グローバルダイニング弁護団の倉持麟太郎弁護士は、今回の判決について「裁判で、都側は命令を下した理由について政府発表の資料を用いて説明していたが、今回の判決によって、それでは(専門家による一般論では)命令を適法化できないことが分かった。自治体は今後命令を下す際、店舗ごとに個別の状況を見て、その理由を合理的に説明できなければならない」と語った。

また、グローバルダイニング・長谷川耕造社長は判決後の記者会見で、「裁判に至った一番の理由は、都の命令によって表現の自由、法の下の平等がないがしろにされたと感じたから。裁判長もこの気持ちを75%くらいは分かってくれたと思うが、判決の主文が『棄却』だったため、都が勝った形になったのが残念」と吐露した。

グローバルダイニング側は、判決後すぐに控訴したという。争いの舞台は高裁へ移る。

判決後、記者会見に臨む長谷川耕造社長と弁護団(5月16日 霞が関/弁護士JP編集部)
判決が言い渡された東京地裁(5月16日 霞が関/弁護士JP編集部)
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