「ジャニーズ問題」東山紀之氏BBCインタビューで再び炎上  「誹謗中傷」と「言論の自由」の境目は?

中原 慶一

中原 慶一

「ジャニーズ問題」東山紀之氏BBCインタビューで再び炎上   「誹謗中傷」と「言論の自由」の境目は?
昨年、東山紀之社長(中央)は記者会見を開きジャニーズから「SMILE-UP.」への社名を変更などを発表した(2023年10月2日都内/中原慶一)

旧ジャニーズ事務所が「STARTO ENTERTAINMENT(スタートエンターテイメント)」社として解体的出直しを図る中、英BBCが30日、ジャニー喜多川氏の性加害問題を取り上げたドキュメンタリーの続編「捕食者の影 ジャニーズ解体のその後」を放送した。

内容は、BBCの記者であるモビーン・アザー氏が、スマイルアップ社長の東山紀之氏(57)に、今年2月に単独インタビューしたもの。

「あの時は信じていたんでしょうね」

番組の中で東山氏は、故ジャニー喜多川氏の未成年への性加害問題に関して、「僕自身は全く聞いたことがなかった」、1999年に疑惑が報道された際も「そういうスキャンダルが多々あったので、それは実際にはないことがほとんどだったので(中略)そのひとつだと思っていました」、その後、2004年にいわゆる文春裁判で性加害の存在が認められた際も、「スキャンダルのひとつだと思っていました」と知らぬ存ぜぬを繰り返した。

何度も「その時、なぜ事務所でそれを問題視しなかったのか」と詰め寄るモビーン氏に対し、「あの時は信じていたんでしょうね、やっぱり、喜多川氏を」などと、憮然とした表情で語った。

「東山社長の回答は昨年9月の会見の時と内容はほぼ同じ。知らないはずはなかった喜多川氏の性加害に関しては、『知らなかった』の一点張り。救済の仕組み自体がブラックボックス化していると批判の声があがっている中で、『被害者の救済が最優先』『丁寧に声を聞く』などと、またもや抽象的な回答に終始していました」(夕刊紙芸能担当記者)

また番組では、喜多川氏のほかに、事務所スタッフ2人が性加害を行なっていたことにも触れ、東山氏もこれを認めた。

しかし、記者の質問に対して論点をズラしつつ、仏頂面で通り一遍の内容を繰り返す東山氏に対し、このニュースを伝えたコメント欄は、〈若い頃から事務所に育てられた東山に、普通の社会の仕組みを理解できるはずもない〉、〈元の木阿弥〉〈酷いの一言〉などと否定的なコメントが相次いだ。

一方、被害者に対する誹謗中傷の問題に関して、誹謗中傷を苦にした自殺者が出たり、事務所側が虚偽の申請への問題視を表明したことが、さらなる誹謗中傷の増加に影響した可能性について問いただすモビーン氏に対して、東山氏は、「まず何をもって誹謗中傷とするのか」と逆質問。モビーン氏が「虐待のサバイバーを中傷し、うそつき呼ばわりすること」と答えると、「言論の自由もあると思うんですね。僕は別に誹謗中傷を推奨しているわけでもなく、多分その人にとってはそれが正義の意見なんだろうなと思う時もあります。なので誹謗中傷をどういうところでライン引きするかは大変難しいと思っています」と言ってのけた。

「誹謗中傷」にあたる行為とは

人生を破壊され、家族や周囲にも打ち明けられず、長年、悩みを心の奥底にしまってきた被害者が、意を決してカミングアウトしたにも関わらず、それがデマだと罵られる苦悩に想像は及ばないのか。そして「誹謗中傷」と「表現(言論)の自由」の境目はどこにあるのか。さる弁護士事務所関係者はこう話す。

「まず民事で名誉毀損されたことに対する損害賠償請求とは別に、刑事としては、『誹謗中傷罪』という罪状は存在しません。誹謗中傷が犯罪になるのは、『名誉毀損罪』『脅迫罪』『侮辱罪』などですね。特に、インターネットの掲示板で誹謗中傷に関連してくることが多いのは、『名誉毀損罪』です。憲法では〝名誉〟の規定もありませんが、その根拠となっているものは、憲法13条『すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。』、いわゆる幸福追求権です」

名誉毀損について、刑法230条の第1項には以下のようにある。

「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損(きそん)した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」

一方、刑法230条の2第2項には、①公共の利害に関する事実に関係し、②その目的が専ら公益を図ることにあったと認められる場合で、③摘示した事実が真実であることの証明があったときには、免責される場合があるとされている。さらに名誉毀損罪は、「親告罪」であり、相手から処罰を求める届出がない場合には成立しない。

それゆえ、性加害の被害者に対して、「ウソだ」「作り話だ」「どうせ金目当てだろう」などとネット上で書き込むことは、名誉毀損罪に該当する可能性がある。一方で、「表現の自由」については、憲法第21条第一項により、以下のように規定されている。

「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」

〝悪口〟や〝誹謗中傷〟は表現の自由?

前出の関係者はこう続ける。

「しかし、表現の自由が守られるべき権利である一方、『名誉』もまた守られるべき権利であるため、ここが難しいのです。〝悪口〟や〝誹謗中傷〟が表現の自由の保護の対象になるのかについて、今でも法学者たちによる議論が行われています。しかし、そうした表現が、取り返しのつかない事態を招いていることもまた事実。そうだとすれば、公共的立場にない人々に対するそうした表現が制約されたとしても、表現の自由を侵害するとはいえないのではないでしょうか」

つまり被害者に対する誹謗中傷を「絶対にやめて欲しい」と公式には言っておきながら、〝その人にとってはそれが正義の意見となんだろうなと思う時もあります〟などと、暗に認めている東山氏のスタンスが、性被害者を悩ませる誹謗中傷を増殖させている可能性があるのではないか。

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