「思ってた宿と違う…」 ホテル・旅館“盛りすぎ”写真の見分け方とは?

弁護士JP編集部

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「思ってた宿と違う…」 ホテル・旅館“盛りすぎ”写真の見分け方とは?
旅情あふれる宿の写真に惹かれるが… ※写真はイメージです。本文内とは関係ありません。(写真:papa88/PIXTA)

今年のゴールデンウィークは、推定1600万人が「1泊以上の旅行」を計画していたことがJTBの調査でわかった。前年の同調査に比べ168.4%と大幅に増加、コロナ禍以前と比べても半数以上にまで回復している。

宿泊施設別で見ると、感染対策として人気を集めていたキャンプ場などのアウトドア施設や貸別荘への予約が減少し、ホテル・旅館への予約が増加した。

「写真」を基準に宿を選ぶ人も多いが・・・

宿を選ぶ際、何を基準にしているだろうか。

部屋、温泉、料理、アクセスなど、実際に決め手となるポイントは時や場合によるが、宿を予約する人が必ず見ると言っていいものが宿を紹介する「写真」だろう。

豪華な部屋の雰囲気やおいしそうな料理の写真によって、宿を選ぶ基準とする人も少なくない。しかし、宿側が用意した写真に「だまされた」と告発するユーザーもいる。

SNS上はもちろん口コミサイトでも、「写真と違う」というボヤきは枚挙にいとまがない。

カメラマンが教える“盛られた”写真の見抜き方

しかし、一般人が予約前に“盛られた”詐欺まがいの写真を見抜くことはできないのも現実だ。出張撮影などで自身も宿を利用することの多いプロカメラマンのM氏に怪しい宿紹介写真の見分け方について話を聞いた。

気を付けたい写真としてM氏がまずあげたのは、「ベッドや布団がやたらと大きく写っている部屋」。

海外の高級寝具などこだわりをうたう宿も多いが、カメラを「引く」ことができないほど狭い部屋である可能性があると言う。広い部屋でくつろぎたい場合には、写真のイメージに惑わされず平米数を確認すべきとM氏は続ける。

「間取りが書かれていれば、自分が見ている写真がどこの位置から撮影されたものか考えるといいと思います。場合によっては『この部屋の写真じゃないな』と気づくこともあります」(M氏)。

料理の写真については、「ひとつひとつの料理を単品で撮影したほうが、食材や色味に合わせて撮ることができるため、“盛り”やすいと言えます」と分析。そのため「料理単品の写真ではなく、さまざまな料理が並んでいる集合写真のほうが本来の料理のイメージと近いと思います」(M氏)。

たくさんの料理が並んでいる写真の方がイメージが掴みやすい(K.Yoshida / PIXTA)

また、部屋や料理の写真だけではなく「ホテルならフロントやロビー、旅館なら廊下など」の写真も見ることで宿全体の雰囲気をつかみやすいと写真による宿選びのコツを説明する。

“盛り”を見抜くべく、宿が用意した写真だけではなく、他の利用者が撮影した写真をSNSなどで探してみるのもいいだろう。

『やりすぎ』広告のボーダーラインは?

宿側はどこまで写真を‟盛って”もいいのか。

民事事件も多く手がける荒居聖弁護士は『やりすぎ』と判断されるボーダーラインについて、「消費者も広告・宣伝の写真や写真に添えられている文字に、ある程度の誇張があることは通常認識している」と前提を述べた上で、「広告・宣伝として許容される限度を超える程に、実物よりも優良と表示され、消費者の選択に影響を与えるような場合には、『やりすぎ』と判断される」と指摘。

具体的な『やりすぎ』のボーダーラインは、景品表示法と、景品表示法の規定によって定められた業界のルール(公正競争規約)上に問題があるかどうか。

荒居弁護士が『やりすぎ』として例をあげるのは、

  • 写真と実物が全く違う場合
  • 料理の写真に添えられている調理方法や材料についての表記が、実際の調理方法や材料と違う場合
  • 温泉の写真に「源泉100%」「天然温泉100%」等という表示が添えられているが、実際は、加水・加温・循環ろ過装置の使用等が行われている場合(※)

※加水・加温・循環ろ過装置を使用している場合であっても「天然温泉」と表示することは可能。ただし、加水・加温、装置を使用している旨も明瞭に表示することが義務付けられている。

の3点。

「これらを踏まえると、旅館の施設や料理の選択に影響を与えてしまうような“盛りすぎた”写真のほか、写真自体は実物と同じであっても添えられている文字によって消費者が誤認してしまうような場合にも『やりすぎ』と判断されると考えられる」(荒居弁護士)。

『やりすぎ』と判断されると、事業者は「消費者庁長官から、景品表示法に基づき、消費者に与えた誤認を排除すること、誤認を与える宣伝・広告の差し止め、再発防止のために必要な事項などを命じられる(措置命令)」(荒居弁護士)という事態になりかねない。もし故意に‟詐欺まがい”の写真で客寄せをする事業者がいるとすれば、本質的なサービス向上を目指さない限り、今の時代”炎上”は免れないかもしれない。

取材協力弁護士

荒居 聖 弁護士
荒居 聖 弁護士

所属: ベリーベスト法律事務所 八王子オフィス

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